「『西だ』の前に、結局この子誰なんですか?」

「そういや、普通に受け入れてたけど初対面だよな?」

怪訝そうにを見る2人に悟空が疑問の声を上げる。

「あれ?2人とも聞いてねーの?は一緒似行くんだぜ」

「...説明されてなかったんですね」

4人はいっせいに三蔵を見る。

「...実際に一緒に行くか、まだ判らなかったからな」

「それは、そうかもしれませんが...」

「こんな小さいの一緒に来て大丈夫なのかよ?野宿とかもあるんだろ?」

「大丈夫だって!、強いんだぜ!寺で手合わさせしたとき、俺放り投げられたんだぜ」

をまじまじと見ながら言う悟浄に、悟空が自信たっぷりに反論する。

「はあ!?ありえねえだろ!」

「三蔵、この子も妖怪なんですか?」

「え?って妖怪なのか?」

「「違(う)(いますよ)」」

3人の反応に三蔵はため息をつきながら、は首を振りながら否定した。

「妖気があれば判るだろうが。それにこいつは妖力制御装置を付けてねぇだろうが」

「えーじゃあ、何なんだよ」

「坊主って感じでもないしなー」

「でも、悟空を投げ飛ばすなんて普通出来ませんよ」

3人の反応に三蔵はため息をつくと、に自分で説明しろといった。

「それは別にかまいませんけど...面倒臭かったんですね」

「ふん、大体本人がいるんだ。俺が説明することもないだろう」

「(否定はしないんですか)まあ、そうですね」

見た目が不機嫌そうな三蔵に、平然と話しかけるを見て悟浄と八戒は驚いた。

三蔵と話し終わると、二人のほうを振り返り話しかけた。

「自己紹介と事情説明、どちらを先にしますか?」

「あ、じゃあ自己紹介からにしましょうか。悟浄もそれでいいですよね」

「ん、いいんじゃねーの」

「では、まずは僕から言いますね。僕は猪 八戒と言います。この子はペットのジープです」

「ピィー」

八戒の肩に止まっていたジープはを見て嬉しそうに鳴いた。

「はい、ジープとはさっき一緒にいたので少し話をしました」

「ピー」

がジープに笑いかけると、ジープ首を縦に振った。

「次は俺ね。俺は沙 悟浄、よろしくな」

「よろしくお願いします。私は です」

「で、ちゃんて何者なわけ?」

「私は「悟浄!男に『ちゃん』なんてつけるなよな!」

悟浄の質問に答えるのを遮って、悟空が悟浄に文句を言った。

「はあ?どこを見たら男に見えるんだよ?」

「全部に決まってんじゃねーか、このエロ河童!!」

「あ?お前、目まで馬鹿になったんじゃねーの!?バカ猿!!」

「バカ猿って言うな!!」

2人の言い合いになりかけたとき、八戒が笑いながら二人を止めた。

「あはははは、2人ともいい加減にしないと三蔵がきれますよ」

「だってさ、八戒!」

「まあまあ、に聞けばはっきりするんですから。2人とも落ち着いて下さい」

「あ、そっか!なあ、は男だよな!」

身を乗り出して聞いてくる悟空を見上げながら、は少し困ったように返事をした。

「えーと、私、性別はないんですけど...」

「え?じゃあ、ってオカマなのか?」

「いえ、元々性別がないのでオカマではないです」

「......結局男と女どっちなんだ?」

「ええと、ですから...」

「悟空、は男でも女でも無いということですよ。それにが困ってすよ」

延々と続きそうな二人のやり取りを、八戒は悟空に簡単に伝えることで終わらせた。

「ありがとうございます、八戒さん」

「八戒でいいですよ。これから一緒に旅をするんですから」

「さん付けでなんて呼ばれることなんかねーから逆に照れるしな」

「そうそう、堅苦しくすることねーって」

が八戒にお礼を言うと、3人はそれぞれに話しかけた。

はそれにはいと言って頷くと話の続きを始めた。








   第四話   ジープ









「事情説明のほうもこれで終わりですけど、何か質問はありますか?」

「なあなあ、ってロボットなんだよな!」

「はい」

「じゃあさ、目とか口からビーム出せるのか!?」

「...戦闘用の機能はついていませんよ」

「エー、だったら合体は?」

「私一人でどうやってするんですか」

「あ、そっか。じゃあ、腕がバズーカになるとか?」

目をきらきらと輝かせて悟空が次々と質問する。

八戒はそれに苦笑し、悟浄は肩をすくめた。

八戒は話をしている2人から三蔵へと目を移した。

「三蔵は知っていたんですよね?」

「...大まかなことは三仏神から聞いてはいたな」

「それにしては、随分驚いてたみてーだけど?」

「ふん、人伝に聞いたことをそのまま鵜呑みには出来んからな」

ニヤニヤと笑いながら言う悟浄に、三蔵は鼻で笑って返した。

それに悟浄は口元をひきつらせ、八戒は苦笑した。

「それにしても悟空とジープがすっかり懐きましたね」

八戒はまだに話しかけている悟空と、の肩に止まっているジープを見ながら言った。

「やっぱり、お子様同士は仲良くなるのが早いねー」

「...餌付けもされていたようだがな」

「なに?悟空の奴、あんなちっさいのからも飯奪ってんの?」

「さすがに、子どもから取るのはよくないですねぇ」

「どうするかはが判断することだろ」

三蔵がわずかに柔らかい口調で言ったことに2人はおやっと思ったが、2人が口を開く前に三蔵はそろそろ行くぞと言った。

「おい、いつまでしゃべってやがる!いい加減に出発するぞ!!」

「あ、今行く!行こうぜ!」

「はい」

悟空がの手をひいて連れてくると、すかさず悟浄がからかい始めた。

「小猿ちゃんてば、すっかりお兄さん気分?」

「猿じゃねえ!」

「はいはい、二人ともそれ位にして...ジープお願いしますね」

「ピィー」

「?」

は自分の肩から離れて飛んでいくジープを目で追った。

それに気付いた悟空がに話しかける。

は初めてだったよな。西へはジープに乗って移動するんだぜ」

「...え?」

悟空とジープの大きさを何度も見比べているに、八戒が苦笑しながら助け舟を出した。

「悟空それではわかりませんよ。も実際に見てみた方が早いですよ」

八戒が話し終わると、ジープは淡い光を出して変身した。

その様子をきょとんとした顔で見ていたは、数度まばたきをするとジープへと近づいていった。

そしてじっとジープを見つめると、そっとボンネットを撫でた。

「ピィーー」

が撫でるとジープは嬉しそうな声で鳴いた。

しばらく撫でていたが、八戒がそろそろ行きましょうかと言うとこくんと頷いた。

は俺の隣な!」

「はい」

全員が乗り込むと、八戒はジープを発進させた。





ジープは森を抜け、荒野を西へと走っている。

「あ、それ喰いたい」

「はい、どうぞ。悟浄も何かいりますか?」

「あ、俺はそのつまみくれ」

「はい」

「...おい...」

「あっ!よっちゃんイカ当たった!」

「よかったですね」

「おっスゲェ!!悟空ビールとって、ビール」

「遠足じゃねーんだぞ貴様らぁ!!」

ジープの後部座席で騒いでいる3人に三蔵が怒鳴った。

「あれ?そうでしたっけ」

笑顔で尋ねる八戒に、三蔵はあきらめたかのように呟いた。

「...ま、似たようなものか」








あとがき

最遊記第四話終了です。
これで原作の序章がやっと終わりました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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