「......」

「......」

「...おい三蔵、まだ着かねーの?腹減って動けねーよッ!!」

森の中を黙々と歩いているとき、耐え切れなくなった悟空が文句を言う。

「なーっばあ!」

  パン!

「やかましいわっ!!」

「いてっ!」

「......はぁー」

騒ぐ悟空に三蔵はすかさずハリセンで叩く。

も立ち止まって、またかと思いながらため息をつく。

「ったく...普段は殺しても死なねークセに」

「俺、充電式なんだもん」

「イバんなッ!!」

「やっぱ八戒のジープで迎えに来てもらえばよかったじゃんかよーーー!!」

「うるせーなッ!もう少しで着くだろ!歩けバカ猿!!」

三蔵が悟空をゲシゲシと蹴りながら起こるのを、は自分に被害が来ないように少し離れて眺めた。

「大体お前より小さいだって文句ひとつ言ってねーだろうが!!」

「...私ですか?」

自分にとばっちりが来るとは思わなかったが少し驚く。

は俺より体力あるじゃんか!チビだけど!!」

「そのチビに負けてるんじゃねーよ!文句ばっか言ってねーで歩きやがれ!」

「...(エド君も身長のことを言われたときは、こんな気持ちだったんでしょうか...)」

は実際の身長ではないとは言え、2人にチビと言われると非常に複雑な気分になった。

「大体、何で悟浄と八戒に会いに来たんだよ?」

「......確かめたいことがあるんだ......」

三蔵は旅の目的を話しはじめた。

(まだ教えてなかったんですね...)

内容を知っているは、今更悟空に説明している三蔵に呆れるべきか、旅の目的を聞こうとしなかった悟空に驚くべきか少し悩んだ。








  第三話    西へ








「えーと、つーまーりー、俺達でそこへ行って実験止めさせりゃあイイんだろ?楽勝じゃん!!」

「突き詰めれば、そうですね」

「お前らね...いー性格...」

悟空の言葉とそれを肯定したの言葉に、三蔵は呆れて大きなため息をついた。

そのとき、のセンサーが複数の生体反応を感知した。

は反応のあった方をちらりと見ると、二人に目を移し話しかけようとした。

「で、悟浄と八戒に確かめたいことって?」

「...!それは...」

「あの『ガサッ』

の言葉を遮るように、木の葉がこすれる音がした。

3人が音のしたほうに目を向けた瞬間、2つの人影が飛び出してきた。

一人は悟空に、もう一人は三蔵へと躍りかかる。

  ガッ!

「うらあぁあ!!」

 キィン!!

悟空は如意棒で相手の振り下ろしてきた武器を受け止めると、相手を武器ごと弾き飛ばす。

  ザッ!

「遅いな」

「なッ...?『ゴキィ!!』うがッ!!」

三蔵も相手の攻撃を避けると、背後へとまわり殴り飛ばした。

は元いた場所から跳び離れると、すばやく黒いグローブをつけた。

「2人とも!まだいます!!」

「「!!」」

が叫ぶのと同時に、周りから多くの妖怪が出てきて3人を取り囲んだ。

「ま...まさかこいつら全部...!?」

「チッ!牛魔王に寝返った妖怪どもだ(油断したな...)」

「...妖怪との初接触がこれですか...」

「...お前、結構余裕あるな」

「ありがとうございます」

「うげ、こいつら目がイっちゃてるぜ」

悟空の言ったように、妖怪たちは目をギラギラとさせて3人を見つめている。

    「...人間だ」

 「人間だ!」
          「喰え」

  「喰ってしまえ!!」

「喰...
『ゾパン!!』

「「「!!?」」」

3人を取り囲んでいた数人の妖怪たちの体が、突然切り刻まれた。

   ヒュン

三人は、妖怪を切り刻んだ三日月型の刃がつながれた鎖の先にいる人物たちを振り返った。

「...やっと見えてきたぜ。この世界になにが起こってンのかも、なぜ俺達でなきゃ駄目なのかもな」

三人と妖怪を見渡せる場所にいた2人の青年は三蔵と悟空のよく知った人物だった。

「よっ!生臭ボーズにバカ猿ッ」

「お久しぶりですv」

「悟浄!八戒!!」

「『生臭坊主』戒律を守らず、行いの悪い僧、『馬鹿』頭の悪い人、『』哺乳類サル科の人間によく似たケモノ」

「...おい」

が悟浄の言った言葉の意味を口に出して言うと、三蔵は呆れたように声をかけた。

「バカ猿って呼ぶなよ!このエロ河童!が余計な言葉覚えるだろ!!」

「じゃ、チビ猿か?ああ!?」

の方がチビじゃんか!!」

「「......」」

「あははは、まあまあ」

2人の言い合いに三蔵とが呆れ、八戒が取り成す。

「何故ここが判った?」

「悪質な妖気を大量に感じたもので...どうやら、今この桃源郷で自我を保っている妖怪は、僕と悟浄と悟空だけのようですね...」

八戒の言葉にはおやっと首を傾げた。

「3人が妖怪なら、妖怪との初接触は悟空になるんでしょうか?」

「あ、そっか」

の言葉に悟空が今気付いたという感じで返事をすると、2人は他の3人から呆れた目で見られた。

「三蔵、ところでこの子はいった「ふい打ちィイ!!」

八戒の言葉を遮って、取り囲んでいた妖怪の一人が攻撃を仕掛けてきた。

「へぇ」

  ゴッ!  ビチャ

「ぶわーか、二億年早ェよ。あ、もう聞こえないか」

悟浄が向かって来た妖怪の頭を握りつぶす。

「その前に声を出している時点で、不意打ちではないような気がするんですけど」

「あははは、そうですねぇ」

首を傾げながらた言うに、八戒も笑いながら同意する。

「弱そうな奴と子どもから狙え!!」

向かってくる妖怪を背に八戒は危ないですよと白竜とを遠ざけた。

は白竜を抱いて、言われたとおり少し離れる。

八戒は地面を軽く蹴ると、宙へ跳び背後へとまわる。

「哈ッ!!」

  ドン!!

「おおー『パチパチパチパチ』

「いやあ、見よう見マネで出来るもんですねー波動拳」

「出ねーよ、フツー」

「え?出ないんですか?」

八戒の気孔に拍手をしていたが悟空に尋ねると、悟空は出ねーよと否定した。

2人がほのぼのと会話をしていると、妖怪の一人が叫び声を上げた。

「貴様ら三人は妖怪だな?何故...何故我々に背くのだ!?」

「教えてあげようか?」

そう言うと悟空と悟浄、八戒は妖怪たちに躍りかかった。

「生きてたらなッv」

「!!」
   
    ゴッ!!

「うぎゃあぁあ!!」

闘っている3人をと三蔵は並んで眺めている。

「ピィー」

すると白竜がの顔を覗き込んで鳴き声を上げた。

「ん?...どうかしましたか?」

「ピィ?」

「私はですよ」

「ピー?」

「ええ、一応いっしょに旅をすることになってるんですけど、嫌ですか?」

「ピィイー」

「そうですか。ありがとうございます」

普通に会話をしているたちに三蔵が言葉を掛ける。

「...おい」

「?、何か?」

「ジープに言葉が分かるのか?」

「まあ、大まかなことでしたら」

それが当然のことのように返すに、三蔵はため息をついて黙り込んだ。

そうこうしている内に、周りの妖怪たちを3人は一掃していた。

「最強最強ー!!」

悟空と悟浄が手を叩きあっていると、かろうじて生きていた妖怪が悟浄の足を掴んだ。

「!!」

「まて...我らが同胞...無力で傲慢な人間の肩を持つ裏切り者どもよ。貴様らの居場所はそこではないはずだ...今一度考え直すがいい。我らとともにとなえようではないか」

悟空たち3人はその妖怪を見下ろし、と三蔵はそれを眺めている。

「妖怪国家万歳ィィ!!ぎゃはははは『グシャ』はぐうっ」

「...つまんねェことほざきやがるぜ」

「『人間の味方』だ?ハ!俺は生まれて死ぬまで、俺だけの味方なんだよ」

三蔵はその言葉を聞くと振り返って言った。



「−−−−行こう、西だ」






あとがき

最遊記第三話終了です。
さんがジープと話せるのは慣れのようなものです(H×Hとかレイアース世界での)。
ちょっと無理がありますが、あまり突っ込まないで下さい。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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