「どっちが妖怪か、確かめようじゃねえか!!」
「外へ...!! ここじゃ危ない」
「ゲッ!また濡れんの!?」
札を投げようとする六道から逃れるため、3人は激しい雨の降る外へと飛び出した。
「!!なんて雨だよ...!!」
「く...?」
雨で遮られる視界に八戒が顔を歪めていると、後ろから気配を感じ、素早く右手で殴りつけようとした。
だが、右手は当たる前に六道につかまれ、それだけではなく、つかまれた場所は焼けるような音ともに八戒に痛みを与える。
「!?なっ...!?ぐッ...!!」
「俺の体は全身が呪符と同化してるんだよ。貴様らは素手で触れることもできんぜ」
「 放せよてめェ!!」
悟空が振り下ろした如意棒も、錫杖で止められた。
「!だぁッ...!!?足場サイアクっ!」
滑りながら後ろへ下がった悟空がふと横を見ると、そこには屋根の下で見物をしている三蔵と、三蔵に襟首をつかまれ困ったような顔で見物しているの姿があった。
「三蔵......ズリー」
「...三蔵」
「......」
は悟空にそう言われて三蔵を見上げるが、放す気はないようだ。
「どうした、玄奘三蔵!やはり妖怪には手を貸せんか?」
「...違ーよ。俺が手ェ貸さなかろーがどうせ、死なねーもんそいつら」
「...ま、そりゃそーだ」
「死んでもお経上げてくれなさそーですしねえ」
「死ななくても、疲れはすると思うんですけれど」
ごく当たり前のように交わされる会話に、六道がギリッと歯をかみしめる。
「くっ...ほざけ...!!」
再び六道の手から札が放たれた。
第十五話 血と雨と...
「茶番はこの辺で終わりにしようか」
しばらく3人との攻防が続いたあと、六道はそう言った。
「近付けねーわ、術はハネ返すわ...どーしろってんだよ」
「 おい」
傍観していた三蔵が、屋根の下から出てきて3人に声をかける。
襟を放されたは一瞬どうしようか迷ったが、三蔵の後を追うように雨の中へと足を踏み出した。
「下手な義理立てはやめろよ。奴を呪符から解放する術は、たったひとつだ」
そう言って銃を取り出す三蔵を、八戒は無言で、はわずかに瞳を揺らして見た。
「だめだ!!」
三蔵の銃を持つ手を押さえ、悟空が大きい声で、はっきりと言う。
「今はあんなだけど、あいつ、お前の仲間だったんだろ!?」
「「...悟空」」
「マジでやめろ!!」
「バカ!後ろだ!!」
真剣な顔で言う悟空の言葉に、三蔵もも聞き入っていたせいで、悟浄が言うまで気付けなかった。
気づいた時には、悟空の後ろにいた六道が、錫杖の下にあるわずかな刃で、悟空の背中を貫こうと振り下ろすところだった。
ガッ...
バシュ...ッ
「てッ...!!」
水音とともに悟空が地面に倒れた。
「あたたたた...アタマ打ったァ!!.........あれ?」
気づいたのは雨とは違う、手についた赤いもの。
雷が照らし出したのは、脇腹に錫所を突き立てられ、おびただしい血とともに倒れ伏した三蔵の姿。
そして、立ったままの姿で錫杖に喉を貫かれたと、錫杖をつたってゆっくりと流れてくる赤いもの。
「さんぞ...?...?」
一体何を見ているのか分からないとでもいうかのように、悟空の口から無意識に声がこぼれ落ちた。
「「 三蔵!!!!」」
「が...かはっ!」
「三蔵!!」
「.........ッ...」
「!!」
ゆっくりと引き抜かれる錫杖の痛みで、三蔵は口から血を吐きだした。
はまるで三蔵が錫杖を抜き終わったのを見計らったようなタイミングで、力が抜けたように膝をついた。
その様子を六道は声も出さずに、ただ呆然と見つめている。
「三蔵 目ェ開けろよ!三蔵!!?」
「!大丈夫ですか!!?!!!」
「お前ら何ガラでもねェことしてんだよ!!」
「三蔵...!!」
「...!!」
血を流す2人を、雨は容赦なく叩きつけていた。
あとがき
最遊記第十五話終了です。
今回はかなり短かったのです。
場面的には区切りがいいので、ここで切りました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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