少年陰陽師 (5)
「そう言えば、叔父上もチモも『式』じゃなくて『式神』なんですよね?」
はじめての化け物退治を終え、風呂に放り込まれて眠った後、昌浩は朝餉を口にしながら言った。
『そうだよ〜』
「そうですよ」
「今更それを聞くのか?」
「だって、俺ももっくんも、聞く前に湯殿に放り込まれて、すぐに寝ちゃったじゃないか」
「もっくん言うな孫!」
「孫言うな!」
売り言葉に買い言葉で、2人が大きな声を上げると、チモが耳をふさいで言った。
『いきなり大きい声出されると耳痛いよー』
「ご飯の時に喧嘩は止めてくださいね」
「あ、すみません!チモもごめんな」
「うっ、悪かった」
口を可愛らしくへの字に曲げて言うチモと、笑ってはいるが微妙にオーラが漂っているに、2人は急いで謝った。
『謝ってくれたからもういいよー!』
「うん...あれ?何の話だったっけ?」
「私とチモが『式神』だって言う話でしょう?」
「あ、そうでした」
頷く昌浩に笑みを向けると、は今の日本では貴重なはずのお茶を当たり前のように用意しながら言う。
「昌浩は『式』と『式神』がどう違うか知っていますか?」
「えーと...『式』は陰陽師に使役される妖や霊で、『式神』が式に下った神様だったような」
「正解です。では、神とはなんでしょう?」
「え?えーと...」
「、その問いは漠然としすぎてないか?神って言ったて、それこそ道教、仏教、神道いろいろだぞ」
「んー...それもそうですね。それでは、物の怪でも妖でも怨霊でもないごく普通の人、もしくは、物の怪でも妖でも怨霊でも人でも神でもないものが、神と同列に扱われるのはどういう条件がいると思いますか?」
「.........え?」
ぽかんと口を開けて固まる昌浩の横で、物の怪が呆れたような視線をに向けてくる。
は物の怪の視線に苦笑しながら言った。
「思いつきませんか?」
「あ...えっと...人だったら、菅原公みたいに怨霊になるような話ではないんなんですよね?」
「ええ」
「あと、物の怪でも妖でも怨霊でも人でも神でもないもの?ですか?」
「そうです」
「うーん.................?」
「まあ、思いつかないのも無理はない。そんなのは、例外中の例外だ」
「例外中の例外って...どういうことか知ってるの?」
昌浩の言葉に、物の怪はちらりとを見た。
昌浩もつられてを見る。
「神を力尽くでどうこう出来るくらいの腕力、精神力、その他いろいろ、を持てばいいんですよ(さすがに神を殺せるくらいとは言えません)」
「.....................はい?」
「だから言っただろ。例外中の例外って」
「え、いや、でも、それってさすがに無理があるんじゃ」
「その無理の集大成が目の前にいるぞ」
「へ?」
「ええ。ほら、ここに」
ひょいと自分を指さして笑うがそれだと知って、屋敷に昌浩の驚愕の声が響き渡るのはこの5秒後。
余談だが、チモ(の本性)も白面銀毛十尾の善狐(実年齢8歳、稲荷歴5年、住んでいた社が壊れて失業(?)中)と言うありえないもの集大成その2と知って、物の怪ともども昌浩が頭を抱えたのは、この10分後。
ありがとうございました!
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