少年陰陽師 (4)
「おかえりなさい、昌浩、および『騰蛇』改め『物の怪のもっくん』。お湯を沸かしてありますから、ひと眠りする前に湯殿に行ってくださいね」
『おかえりー』
ひらひらと手を振りながら出迎えたと、その足元にいる白い生き物に、初めての妖怪退治から帰ってきた昌浩と白い物の怪は硬直した。
先に我に返ったのは、白い物の怪だ。
「!何が『騰蛇』改めだっ!?それ以前に、俺は物の怪じゃないっ!!」
「いいじゃないですか。可愛くて」
『かわいくてー』
「えーと......叔父上...?」
「何ですか?」
やっと我に返った昌浩に、はいつもの様に笑顔を向ける。
だが、昌浩の視線はの足元にくぎづけである。
「あの......その小さいもっくんは何ですか?」
の足元にいる白い生き物は、目や首周りの飾りが橙色であることと、大きさを除けば、物の怪の姿にそっくりである。
「もっくん言うな!晴明の孫!!」
「孫言うな!」
が説明をする前に、2人は反射的に牙を剥いた。
その様子をはにこにこと、小さい物の怪はほにゃほにゃと笑いながら見ている。
「もっくんが口を挟むと話が進まないから、ちょっと黙ってて!」
「んな!?」
「それで、叔父上。その小さいもっくんは...」
『はーい!チモがお話しするー』
「「チモ?」」
「『小さい物の怪だから『チモ(くん)』』です」
声をそろえて言う2人の言葉に、白い物の怪はカパッと口をあけ、昌浩も呆気にとられている。
『ほんとはね、はチモをもっくんそっくりにするつもりだったの』
「最初は等身大もっくん人形を作って、騰蛇の時に渡すつもりだったんですけれど、吉昌に止められたんですよねぇ」
『だから、は半分の大きさで、ちょっと色を変えて作ったの』
「それで、せっかくだから中に新しくできた式神を入れて見たんですよ」
『だから、チモは、もっくん人形をからの姿に作ってもらった式神なの』
「名残惜しかったですけれど、吉昌に等身大もっくん人形は作らないと約束しましたしねぇ」
「...叔父上、父上はそういう意味で止めたのではないと思うのですが(あれ?何で父上を呼び捨てにしてるんだろう?)」
「まあ、そうでしょうね」
あっさりと頷いたに、昌浩は絶句した。
そんな昌浩の足を、慰めるように物の怪がぽんとたたいた。
「諦めろ。は晴明の性格の基を作ったやつだからな。人の悪さは晴明の上をいくぞ」
「はあ!?何でそこにじい様が出てくるの!?」
昌浩の言葉に、は首を傾げた。
「昌浩、着袴の時のこと思い出したんじゃないんですか?」
「え?...じい様が力を封じた時のことですよね?」
「あ、そのことしか思い出してなかったんですか」
「.........どういうことでしょうか?」
納得したと頷くに、昌浩が尋ねる。
「一応、私、晴明の式神なんですよ」
「..............................ええっ!!?」
「しかも、晴明の一番最初の式神だぞ」
「えええええ!!?」
『だから、昌浩の兄上たちと見た目の歳があまり変わらないけど、出世しないで雑用してるの』
「そういう話が来ると、まだ上へ行く覚悟も実力もありませんと言ってるんですよ」
「に心底申し訳なさそうな顔して言われりゃ、引くしかないよなー」
『チモ、まだそれ見たことない。どんな感じ?』
「そのうち機会があれば見れますよ」
絶句したまま固まった昌浩をよそに、思ってもみなかったことをさらに暴露されていく。
それはもうしばらく、昌浩と物の怪が風呂に放り込まれるまで続いた。
ありがとうございました!
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