彩雲国物語 第5話
「はじめまして。あそこにいる黎深の兄、邵可の義理の父にあたると申します」
「黄鳳珠と申します」
「鄭悠舜と申します」
「ご丁寧にありがとうございます。黎がいつもご迷惑をおかけしているようで」
「「.........いえ」」
その長い間が間違いなく黎深に迷惑を掛けられていることを現していた。
はそれに苦笑すると、小皿と箸を2人の前に置く。
その横から、秀麗が悠舜におまんじゅうを差し出した。
「おまんじゅうはいかがですか?」
「ありがとう。いただきます」
そのとき、悠舜の背筋がぞくりとあわ立った。
後ろを振り返ると黎深がじっと悠舜を睨みつけていた。
「お嬢ちゃん、あそこのおじちゃんもおまんじゅうが食べたいみたいですよ」
秀麗の注意が自分に向いたことで、黎深のはどきりとした。
におまんじゅうをとってもらった秀麗が黎深の前に来ると、持っていたおまんじゅうを差し出した。
「はい、どうぞ。おじちゃん」
「秀麗!おぢちゃんのお嫁に来るかい?来たいよね!?」
がばりと秀麗の肩をつかんだ黎深に、2人の口からため息が漏れる。
「.........」
「やはりただの変質者だ」
「...(しょうがないですね)......黎」
「はい!!」
少し強めに呼ばれた名前に、黎深は背筋を伸ばしてを見た。
その様子を2人は興味深そうに眺めている。
「秀麗はそんなに近くに(他)人の顔があるのに慣れていませんから、とりあえずここに座りなさい。私が作った菜の感想を聞かせてくれませんか?」
「もちろんです!義父上!!」
「ありがとう、黎」
極上の柔らかな笑みを浮かべると、真っ赤になって黎深が固まった。
そうしているうちに、静蘭に秀麗を避難させるあたり流石である。
黎深がとの話に夢中になっている間に、邵可がお茶の用意をする。
「実は友達を連れてきたら家に入れてあげるよと言っておいたのですよ」
『友達』という言葉に、2人は驚いたような顔をした。
「あの弟が最近ずいぶんと変わりました。あなたたちのおかげだと思っているんです。これからもあの子をよろしくお願いしますね」
そう言って差し出されたお茶を客人たちが口元に運んでいることにと静蘭が気づいたときは、遅かった。
将来、孫娘が『父茶』と名づける邵可の入れたお茶は、殺人的な苦さである。
は止められなかったせめてものお詫びにと、2人の皿そっと団子を置いたのであった。
ありがとうございました!
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