彩雲国物語 第4話
「おじいちゃま〜」
とてとてと近づいてくる孫娘のために、は持っていた包丁を置き目線を合わせるためにしゃがんだ。
「おはよう、秀麗。どうしました?」
「おはようございます。あのね、お話してほしいの」
「もうちょっと待ってくれますか?もうすぐお弁当が出来上がりますから」
「おべんとう?」
興味津々の顔で調理台の上を覗き込もうとしている孫娘に、はまな板の上に載っていたものを目の前にかざした。
「さくら!」
「当たりです」
わざわざ桜の形になるように作った巻き寿司を見て歓声を上げる。
「他にもいろいろ作ってるんですよ。今日はお花見ですから」
「お花見?お庭でするの?」
「ええ、満開ですからね。もう少しで出来ますから、薔華と邵と静蘭と一緒にお庭でお茶の準備をお願いしても良いですか?」
「はい!」
元気よく返事をして走っていく様子に顔をほころばせると、今まで以上の速度で弁当を詰めた。
3段の重箱と花見団子を持って庭に向かっていると、何かが落ちる音と数人の叫び声が聞こえた。
がやや急ぎ足で庭へと向かうと、見知った人物が見たことの無い2人とともに倒れていた。
「大丈夫?」
「秀麗、静蘭、いったい何があったんですか?」
「あ、おじいちゃま」
「こちらの方々が松の木から落ちたようです、大旦那様」
「そうですか。お怪我はありませんでしたか?」
「あ、はい。大丈夫です。この2人がかばってくれましたから」
「それは何よりです。黎、起きないのですか?どこか怪我をしましたか?」
「だ、大丈夫です!!」
勢いよく起き上がった黎深にその隣にいた2人は呆気にとられた。
「よろしければ3人とも一緒にお花見をしませんか?」
「はい!喜んで!!」
「私たちもよろしいのですか?」
「ええ、構いませんよ。おや、足を痛められましたか?」
「いえ、これは...」
「おじいちゃま、私がごあんないします」
「それじゃあ、お願いしますね」
「はい!足が痛いの?私の肩につかまって」
おぼつかない足取りで歩いていく2人に、黎深が嫉妬の視線を向ける。
「大旦那様、荷物をお持ちいたします」
「ありがとう、静蘭」
「いえ...黎深様とそちらの方もどうぞ...」
黎深の隣にいた超絶美形の男の顔を平然と見やって、とともに歩いていく様子を見て、男は感心したような口調で言った。
「...なかなか見所のある青年だ。先に行くぞ」
「待て!鳳珠、わ、私はまだ心の準備が...」
「黎深?ぐずぐずしないで早くいらっしゃい」
「っ!!はい♥兄上!!」
邵可の言葉に、黎深はすばやく反応し鳳珠を突き飛ばして走っていった。
邵可のもとにたどり着いた黎深は顔を真っ赤にしながら、崩れきった笑みを浮かべている。
「...ものすごい光景だ」
「兄上のご家族だったのですね...とりあえず『幼女趣味』じゃなかったと分かって安心しました」
「黎は秀麗をとても気に掛けてくれていますから」
2人は横から声を掛けたに眼を向けた。
ありがとうございました!
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