迷子の旅  in  NARUTO(8)






薄暗く、血の匂いがこびりついている部屋では、一人の男が身を拘束され暗部の者達に監視されているにも関わらず、ニヤニヤと楽しげな笑みを浮かべて座っていた。

男の近くにいる2人の暗部はそれに対して何も感じていないように振舞っているが、内心はイライラとしながら部屋を出て行った男の帰りを待っていた。

それからしばらくして、部屋を出て行った男が後ろに2人の暗部を引き連れ部屋に戻ってきた。

その2人のうち片方は里のNo.2とも噂される鹿角であったが、もう片方は体つきから女であることは分かるが、2人の暗部が見たことの無い者だった。

普通木の葉の暗部は動物を模した仮面を着けているにもかかわらず、女の仮面は凹凸の無いのっぺりとした面に目の部分に穴が開いているだけという物だった。

さらに言えば、長い髪を深紅の紐で一つに結び、黒い何の変哲も無いグローブをつけている以外は、その腰や腕、足にも全く武器を身につけていない。

2人の暗部が内心首を傾げていると、先程まで部屋を出ていた男−イビキ−が二人に道を譲るように避けると、女は部屋の中央にいた忍の元へと歩み寄る。

その後を鹿角がついていき、イビキが2人の暗部に男を押さえているように言った。

男は2人の暗部がイビキの指示によって男の腕を押さえたことを特に気にするでもなく、近づいてくる女の体を舐めるように見た。

その様子を不愉快に感じながらも、暗部たちはそれを表に出すことなく男を押さえつけている。

女は男との距離が30cmと離れていないところで立ち止まると、男の口をしゃべれないように手で押さえつけると、ガッと音がしそうなほど強く男のあごを持ち上げた。

その動作に男はわずかに驚きの感情を見せたが、痛みを感じていないためうめき声を上げることはなかった。

女はそれを気にすることなく男の顔を見下ろすと、女性にしては低い声で男に話し掛けた。

「お前の里の忍がお前以外にもこの里に入り込んでいるな?......そうか、では人数は3人、4人、5人、6人、7人...7人か」

まるで独り言のように話し出した女に2人の暗部が内心首を傾げたが、男を押さえ込んでいる手から男の動揺をはっきりと感じと、2人は驚いたように女を見た。

男の顔が見えない2人とは反対に、女の後ろにいた鹿角とイビキは男の顔が驚きと動揺、恐怖に支配されていく様子がしっかりと見て取れた。

女は男の感情も暗部2人の驚きも、後ろからの視線も感じていないかのように淡々と質問を投げかける。

「お前の目的は斥候、オトリ...オトリか。お前以外の物の目的は暗殺、諜報、誘拐...誘拐か。名家狙いか?...秋道、油女、犬塚、うちは、奈良、日向...日向の子供は2人、宗家のヒナタ...なるほど宗家か...」

男がひと言もしゃべっていないにもかかわらず、女はまるで男の心を呼んだかのように言葉をつむいでいく。

「宗家の子の誘拐が本当の目的か?...人質か?...宗家の子の父親...受け渡しを要求するのは生きたまま、死体で...日向ヒアシの死体が条件か...誘拐の実行は今日、明日、明後日...時刻は子、牛、寅...なるほど、人がわずかに警戒を緩ませる明け方前を狙うか」

そこまで言うと、女は手を離し鹿角とイビキを振り返る。

「他に質問することは無いか?」

「充分だ」

「ああ、助かった」

「気にするな。私と鹿角は火影様へ報告に行く」

そう言って女が鹿角と共に部屋を出て行くと、その場にはイビキと2人の暗部、呆然と顔を青ざめさせている男が残された。











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