迷子の旅  in  NARUTO(32)





「はっはっは、いやぁ、すまんの。兄のことを話してなかったのを思い出して、つい悪戯を仕掛けてみたくなってな!」

「俺は別に悪戯のつもりはなかったぜ。こいつと俺の区別が出来ねえような奴だったら見込みがねえと放り出す予定だったがな」

「兄さんや、それはちいっと可哀相じゃないかのう?」

「はっ!甘党のお前が言いそうなことだな!これくらい見分けがつかねえような奴なら、一緒に店を出したって先が見えてんぞ」

「そのときはそのときで、やんわりと分からないように手を切ったほうが後腐れがなく済むじゃろうに。兄さんのやり方は素直すぎじゃぞ」

「てめえが腹黒なだけだろうが」

『左乃よろず商店』の奥にある一室で、たち3人の前にはきちんとした格好で正座をしているダイジロウとやや服を着崩して胡座(あぐら)をかいたダイタロウがいる。

見た目は穏やかで中身は真っ黒なダイジロウと、普段から口が悪く率直な性格のダイタロウは見た目は正反対だが、根本的なものの考え方はよく似ているらしい。

目の前で繰り広げられている会話に護衛2人はやや呆気に取られ、は『仲が良いな』と思いながら出された茶に手をつけている。

本人を目の前にして『放り出す』やら『手を切る』などと物騒なことを言われているのは気にならないらしい。

「おい、チビ助」

「何ですか?」

「この話を聞いて平然としていられる根性、承認として及第点をくれてやる」

「ありがとうございます」

((これも試験(テスト)だったのか...))

上忍2人の内心が図らずしも一致した。

「一目で違うと分かったあとで、俺に分からないように確認を取ったのもまずまずだ。ジロウが煙草を医者に止められるのを言ってたのは予想外だったがな」

「兄さん、名前を略すのは止めてくれと言っておるじゃろう。しかし、煙草を止められていることは...言ったかのう?」

「お聞きしていませんよ。多少の推測はありましたけど、あの時はそう言うのが一番かと思ったので」

「「!!?」」

「「ほう?」」

護衛たちが驚いたような顔で、老人たちは興味深そうな顔でを見た。

「ちなみに、どういった推測だったのですかな?」

「以前お会いしたときに、ほんの少しですけれどダイジロウさんの服から煙草の匂いがしていました。でも一般的に煙草を吸っている人とは違って歯が黄色くなっていませんでしたから。もっともだいぶ前に煙草をお止めになったか、もともと吸わないかは分かりませんでしたけれど。おそらく近くにいる人がよく吸っていらっしゃるんだろうと思ったんです」

「なるほど。よく見ておられる」

「ああ、観察力は合格だな」

「ありがとうございます」

にっこりと笑って言うに老人たちもそれぞれ口元に笑みを浮かべる。

後の2人はの観察力に驚きながらも、それが一般人の物なのか判断に困っている。

「あ、そういえばお土産を持ってきたんですよ」

「土産を?わざわざ気をつけることもなかったんじゃぞ?」

「ダイタロウさんもダイジロウさん振りをしているときにそうおっしゃっていましたよ」

「フッ、こいつの言いそうなことぐらい分かって当然だろ」

「まあ、兄弟ですからの。しかし本当に気を使わなくてもよかったんじゃぞ?」

「いえいえ、ちょっと町を歩いたときに目に止まって何となく買ったものなのでたいした物ではありませんから」

「そうか。それではありがたく頂くとしよう」

ダイジロウの言葉を受けては懐から2つの包みを取り出しテーブルの上に置くと、そのうちの1つの布をめくった。

「おや、ずいぶんとかわいらしい招き猫ですな」

手のひらに載るくらいの陶器で出来た小さな招き猫がふたつ、老人たちのほうを向いている。

「右手を上げたのは金を、左手は人を呼ぶんだったか?」

「はい。どちらにしようか迷ったんですけど、両方あったほうがご利益がありそうでしたから」

「確かに、我々商人にとってはありがたいことですな。して、もう1つの包みは何ですかな?」

「ダイタロウさんにはもうお話しましたけれど、キセルと刻み煙草です」

「何?あれは口から出まかせじゃなかったのか?大体、お前こいつが煙草吸わねえの分かってたんじゃねえのかよ?」

「ええ。分かってましたけど、たぶん匂いが移る程度には煙草を吸う方が近くにいらっしゃるんだろうと思って。使わなくてもキセルを飾っておく方もいらっしゃるようですし。刻み煙草は吸う方にあげられてもいいだろうと何となく買っただけだんったんですけど、どちらも無駄にならなくて済んだようですね」

「はっはっは、そうでしたか。兄さん、どうですかな?」

「金をかけすぎず、気を使わな過ぎないあたりを心得てるな。しかもさりげない心遣いまでしやがる。商人として合格だ......何より、俺が気に入ったぜ『』」

「ありがとうございます」

「兄さんに名前で呼ばれるとは、さすが殿ですな」

にやりと笑いダイタロウと感心したように頷くダイジロウ、2人に向かっては社交辞令ではない笑みを向けた。











ありがとうございました!

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