迷子の旅  in  NARUTO(31)





「着きましたね」

ほっとしたため息とともに呟かれた言葉に、両脇にいたカカシとアスマがをちらりと見た。

この目的地に着くまでに受けた襲撃は7回。

そのどれもが殺気もなく必ず1度きりクナイや手裏剣を投げつけてくるという愉快犯的な襲撃の中で、よくここまで無傷でこれたものだと2人も思う。

だが、この2人は気づいていないが襲撃があったのは実は7回ではなく21回。

気づかれていない14回はの影分身がこっそりと処理していた。

付け加えれば完全に無傷ともいえない。

もっともの髪の毛の先が1cmほど切れただけなので、ほとんどの者は気づかないだろう。

帰ったときに留守番組に気づかれたら2人とも悲惨な目に遭いそうだが...

ほこりで汚れたまま会うわけにもいかないので、3人はとりあえず宿をとり、風呂に入り身奇麗にする。

が旅装束よりゆったりした服に着替えると老商人の経営する『左乃よろず商店』へと行くために宿を出た。

風の国の中でも代表的な大きな町なだけあり、通りは活気に満ちている。

殿!」

当たり目を向けながら通りをゆっくりとした足取りで進んでいると、少し離れたところからを呼び止める声がかかった。

は知っている人物とよく似た声に、きょとんとした顔で声のしたほうに眼を向ける。

殿、良くぞ来られた!そろそろ着くと思って待ちきれずに出てきてしまったわい!」

「そうなんですか?すれ違いにならないでよかったですね」

「うむそうじゃの。わしの店に行く前に、ちっと寄り道していかんか?この町にわしの贔屓にしてる茶屋があってな」

「ええ、構いませんよ」

にこにこと笑いかけながらに話しかけてくる老人に、も笑顔で頷き返す。

老人がの肩に手を置こうとしたとき、は何かを思い出したように両手をぽんと合わせた。

「あ、忘れてました!お土産を持ってきてたんですよ」

「土産を?わざわざ気をつけることもなかったんじゃぞ?」

「いえいえ、ちょっと町を歩いたときに目に止まって何となく買ったものですから。ちょっと変わったキセルなんですよ。刻み煙草の香りも珍しいものなんだそうですよ」

「ほう。それは楽しみじゃ」

そう相槌を打った老人ににっこりと笑みを向けると、は老人から1歩離れ、後ろでやりとりを見ていた2人のところに並んだ。

その様子を訝しげに見やる2人と、呆気にとられている老人を気にすることなく、はややこわばった声で言った。

「あなたは誰ですか?」

「ん?何じゃいきなり。わしの名前を忘れたのか?」

「知りませんでしたか?私は料理以外にも『会った人は絶対に忘れない、間違わない』という特技があるんですよ。たとえ双子だろうと、忍術を使っているのだろうとね」

「「なっ!?」」

「はっはっは、それじゃあ、わしがまるで違う人物のようではないか。なかなかしゃれた冗談を言うのう!」

「ダイジロウさんは煙草を吸わないとおっしゃってましたよ」

の言葉を笑い飛ばしていた老人の笑い声がぴたりと止んだ。

隣にいる2人はその瞬間それぞれ武器に手をかけている。

緊張が高まる中、老人は口元を吊り上げにやりと笑った。

「ふっ!話に聞いたとおり食えないやつだ。俺は確かにダイジロウじゃねえ。忍びでもねえけどな」

「まあ、確かに忍びじゃなさそうですけどね」

「返答によっちゃあ...」

「うっせえぞガキども!俺はこのチビ助のと話してんだよ!!」

「「いや!ガキって!?」」

「私が小さいんじゃなくて両脇にいる2人が大きいんだと思いますよ」

「俺よりちいせえんだからチビ助ので良いんだよ!」

「これでもずいぶんと伸びたほうなんですけど」

どこか緊張感の欠けるやりとりに忍び達は呆気にとられる。

「おいおい...」

「とりあえず、あんたが誰だか教えてもらえますか?」

「あ?ああ、俺は左乃ダイタロウ、ダイジロウの兄貴だ。よろしく頼むぜチビ助」

にやりと笑いながら言うその顔は、穏やかなダイジロウとは正反対の笑みだった。











ありがとうございました!

30話 戻る 32話