迷子の旅  in  NARUTO(29)





盛大のお見送りを受けながら木の葉のを里を出発して1時間。

3人は非常に速いペースで足を進めている。

さん、疲れてませんか?」

「はい。荷物も少ないのでそれほど疲れてはいません」

「そうですか。しかし、そんな少ない荷物でよかったんですか?」

「ええ、荷物といっても着替えとちょっとしたものだけですし、野宿も少ない道ですから」

「ずいぶんと旅に慣れてるんですね」

声や表情には出していないが、カカシは内心(いぶか)しんでいた。

それも仕方ないだろう。

たかだか1年足らず前に里へと移住してきたは里とのつながりも薄い上に、この2人はとナルトたちとの関係を知らない。

それに歩くペースが速いにもかかわらず息を切らした様子もなければ、旅慣れているとあっては他の里の忍びと疑われる可能性は大いにある。

もそれは理解しているから、特に動揺することもない。

「ええ、木の葉の里に来る前は行商をしていましたから。自分と同じくらいの重さの品物を背負って旅をしていたせいか、ちょっと背中が軽すぎて変な感じですけど」

「へぇー、すごいですね」

「いえいえ。父に言わせるとまだまだ半人前だそうです」

「ん?確か従兄弟と二人暮しでは?」

「はい。今は従兄弟と2人で商売をしていますが、つい数年前までは4家族ほどが一緒に暮らしていたんですよ」

「それじゃあ、何でまた木の葉の里へ?」

「新たな分野への参入と顧客の確保のためです。私たちが1人前に独立するためでもあるんですよ。半人前同士が合わさったら1人前になれるだろうとよく言われていましたから」

懐かしそうな顔をしながら作り話をして笑うの様子を2人は悟られないように観察している。

もっとも2人が観察している様子など、にとっては分かり安すぎるくらいであったが。

2人の様子をのらりくらりと当たり障りのない調子でかわしながら、は気づかれない程度に歩く速度を徐々に落としていく。

はじめのうちは速度が落ちていることが分からなかった2人も昼ごろになると、だいぶ速度がゆっくりになったことに気づいた。

「少しペースが落ちたようですが、疲れましたか?」

「...はい。情けないのですが...どうやら以前よりだいぶ体力が落ちていたようです」

少し疲れのにじんだ声と情けなさそうな苦笑で答える。

その様子はどこからどう見ても一般人である。

それが演技かどうか頭の中で考えながらも、ごく自然な様子に2人はわずかだが疑いを取り去った。

「それじゃあ少しここで休憩を取りましょうか」

「そうだな。そろそろ昼になるしな」

「すみません、助かります」

ほっとしたように息をつくと、近くにあった木に背を預ける形で座りこみ疲れた足をもみほぐす。

その動作を意識しなさ過ぎないように、自然過ぎないように行なう。

疲れた体では自然すぎる動きはかえっておかしく見えるということをだけではなく、両脇に立つ2人もおそらく分かっているだろう。

は地面に座り込んでいるが、2人は両脇に立ったままあたりに気を配っている。

そのことを分かっていながらも、はあえて不思議そうな顔で2人を見上げた。

「はたけさん、猿飛さん、休まないんですか?」

「一応護衛なんで」

「気にしなくて良いですよ。これも仕事ですから」

「はぁ...えーと、それじゃあ、うちの従業員たちがくれたのを一緒に食べませんか?多分お菓子だと思うんですけど」

あいまいに頷いた後、持っていた包みを軽く持ち上げながら控えめなお誘いをする。

「あー...俺は甘いものは苦手なんで」

「そうですか...はたけさんはいかがですか?」

「じゃあ1ついただきます」

「はい。多分うちの従業員たちの得意なものが入っていると...あれ?」

「どうしました?」

「ええと、どうやら従業員たちがそれぞれ考えた新作を入れてくれたみたいです」

「へぇ、見事なもんだな」

「うちの商品は見た目にも気をつけてますから、そう言っていただけるのはとても嬉しいですよ。従業員たちも喜ぶと思います。」

「あれ?さっき甘いもの苦手って言わなかったっけ?」

「見てるだけで口に入れてねえだろうが」

「甘さ控えめのもあるとは思うんですけど...すみません。はじめてみるものばかりなのでどれがどんな味なのか分からなくて」

「いや。お気になさらず」

「あ、これもらってもいいですか?」

「はい。感想はぜひお聞かせください」

包みの隅に入れてあった懐紙(かいし)を皿代わりにして手渡してくるからカカシが受け取ろうとした瞬間、乗っていたお菓子がぐらりと傾いた。

「「あっ!!?」」

あわてて落ちるのを防ごうとしたの体が前のめりになったとき、の頭があった場所に『たんっ』と音を立ててクナイが刺さった。

殺気がまったく感じられずにぎょっとする上忍たちとは裏腹に、はお菓子に意識を集中している振りをする。

これからどう行動しようかと考えながら、顔を上げたはたった今クナイに気づいたように体をこわばらせ、今度こそお菓子が転がり落ちるのを重力に任せていた。











ありがとうございました!

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