迷子の旅 in NARUTO(27)
が木の葉の里を出発する数日前、火影の執務室には火影と上忍が2人、そしてヒザシが集まっていた。
火影の手元には風の国の商人から届いた手紙が置かれている。
「なるほど。確かにこれならAランクを依頼された理由も分かります。しかし、何故これを本人に伝えずに?」
「その手紙にもあるように確証はないのです。それを伝え、旅の間中ずっと従兄に不安にさいなまれて欲しくはありません」
「しかしですね、伝えておいたほうが安全性は高まるでしょう?」
「失礼だが、俺もカカシの言う通りだと思います」
「カカシ!アスマ!」
「いえ、実際にはその通りです」
も護衛としてついていく予定の上忍たち、はたけカカシと猿飛アスマは静かに肯定するヒザシに視線を向ける。
2人とも暗部にも所属しており、ナルトたちとも面識はある。
しかし、がナルトたちと暮らしていること、ヒザシが暗部に所属していることまでは知らない。
つまり、もヒザシもこの2人にとっては一般の依頼人という認識しかない。
少々どころかかなり厄介な状況では、本人が危険を認識しているかどうかで護衛のやりやすさは大きく変わる。
それにも関わらずヒザシはにこのことを告げていない。
いや、もAランクに上げた理由をヒザシに尋ねてさえいない。
ヒザシにとってがより危険にさらされる状況というのは、が普通の人間ではないと知られ、そのせいで狙われることである。
だからこそ、今回の旅では一般人として行動してもらいたいと思っている。
そのことを直接聞きはしないながらも感じ取ったは、疑問も不満も全て飲み込んだ。
正確に言うならば、疑問も不満も浮かぶひまさえ与えずにヒザシを信頼したのである。
「従兄は私と同様に『いれぶん』の顔でもあります。旅の間に通る町や出会う商人を前にして不安な表情を出すわけにはいきません。その場で取り繕うことは出来るでしょうが、経験の多い商人たちは誤魔化せないでしょう」
「しかしですな」
「身の安全を望むならとおっしゃることは分かります。しかし、提携を断った相手から受けてきた嫌がらせに屈したことは今まで1度もありません」
「嫌がらせと暗殺ではかなり違いますよ」
「分かっております。だからこそ、Aランクで依頼したのです」
「「はぁ」」
あくまで頑固な商人として対峙するヒザシに2人は呆れと疲れの混ざった相槌を打つ。
そのやりとりを聞いていた火影はため息とともにパイプの煙を吐き出した。
「先日殿がここにいらしたときに話したのですが、この手紙についてなんと言っておられますかな?」
「何も言ってはいませんでしたが」
「何も?」
「ええ、今回の件に関しては何も。ただ私が納得できるように任せると」
「そうか...では、カカシ、アスマ両名にこの依頼を任せる」
「「分かりました」」
火影に言われたことに2人は多少の不満を飲んで頷く以外なかった。
ありがとうございました!
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