迷子の旅 in NARUTO(26)
火影の執務室へと来ていたはきょとんとした顔で火影を見た。
「Aランクになっているんですか?」
「先日殿の従兄弟、ヒザシ殿からそのように言われておったが、お聞きになっていませんでしたかな?」
「はい。今はじめて知りました」
今日はいつもと異なりまわりに人払いをかけていないため、2人の様子は火影と依頼人である。
「何でも、風の国にいるダイジロウ殿から気をつけたほうが良いと言う手紙が届いた言っておったが」
「それも初耳なんですけれど」
「まあ、単に伝え忘れただけかもしれん」
「確かに最近慌しかったせいで言い忘れたのかもしれませんね」
そう言いながらも2人とも現暗部所属の忍びが情報を伝え忘れるわけがないと思っていた。
言わなかった理由がどこにあるのか考えながらも、2人は話を進めていく。
「このままAランクの依頼として受けてもかまいませんかな?」
「ええ、そのようにお願いします」
「ふむ、この期間で任務が入っていない上忍を2人つけますので、出発日にまたここへおいでください」
「分かりました。それではお願いいたします」
一礼して火影の執務室を出ていったは、普段どおりの表情の裏でヒザシがAランクに変更せざるを得なかった理由を考えている。
しかもそれをに知らせなかったということは、理由を知らない一般人として振舞っているほうがよいということなのだろう。
もともと街道では山賊などもいたりするが、それでも忍びにはかなわないわけだからCランクやBランクでも充分なはずである。
それにあの老商人がわざわざ『気をつけろ』と手紙をよこしたということは、よほどのことだと考えざるを得ない。
商人にとって情報とは武器である。たとえそれが噂話程度のことであったとしても。
はまだ火の国程度の情報しか把握していないが、それと同じようなうわさが他の国でも言われている可能性は非常に高い。
『いれぶんに提携を断られた店は、客が入らなくなり、つぶれてしまう』
別にこれはが流した噂でもなければ、が圧力をかけたわけでもない。
客たちが金の亡者のところに買いに行きたくないと思ったり、暴力で言うこと聞かせるよう人の店は信用できないと思ったためだ。
の店は確かに客たちの評価を決める指針となってはいるが、店がつぶれたのはいわば経営者の自業自得である。
もっとも、無駄に権力や金がある人物たちはそうは思わない。
いわゆる逆怨みである。
怨まれるほうにとってはたまったものではないが、それはあくまで怨まれるほうが普通だった場合に限る。
要するに、普通ではない『いれぶん』のオーナーたちにとっては、些細なトラブル程度ということだ。
それなのになぜ今回はランクを上げて依頼をしなければならなくなったのか。
はそこまで考えて思考を中断せざるをえなかった。
『いれぶん』のオーナーは目立つのである。
周りから注目され、声を掛けられている間に考えにふけって不審に思われるわけにはいかない。
すっかり商売人だと思いながら、は声を掛けてきたお客様たちににこやかに言葉を返すのである。
ありがとうございました!
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