迷子の旅 in NARUTO(24)
店に着くと、とヒザシは従業員総出(接客中の従業員以外)で迎えられた。
従業員たちの瞳は尊敬と憧れであふれている。
が作った店は、外見からして独特だった。
もともと使われなくなった倉庫を壊した場所に建てた建物なので、広さが充分にある上に、木の葉では見ない建築様式で建てられていたからだ。
見る人が見れば、これは2階建てのビルなのだと一目で分かるだろうが、建物の前やテラス、屋上にさまざまな植物が植えられているため無機質さはない。
中に入ると、床・壁・天井ともに黒大理石がはめ込まれ、中央にはピアノの鍵盤をデザインしたようならせん階段が鎮座している。
普通はここまで黒一色だと圧迫感があるものだが、通りの壁一面がガラスなのと、ケーキや生菓子を入れておくディスプレイ用の冷蔵庫と従業員の服が白いこと、さらに奥の厨房がガラス張りで見えるようになっていることで、圧迫感はそれほどない。
かえって白いディスプレイに視線が集中しやすい造りだ。
そして1階とは対称的に、2階は真っ白な壁にパステルカラーのテーブルとイスが並べられ、そこでお菓子を食べられるようになっている。
それだけなら単に物珍しいだけだろうが、ここの目玉は何と言ってもの考えたお菓子なのだ。
たった2ヶ月で、見た目も味も『超1級品』と評価されたそのお菓子は、和菓子、洋菓子の区別なく、お菓子の宝石または芸術品と呼ばれる。
さらにカロリーを抑え、代謝を促進する飲み物まで置いてあるのだから、女性客がひっきりなしに訪れ、毎日売れ残りが出たことがない。
最後に、ここの従業員、特に調理をしている従業員は、が一からお菓子作りを叩き込んだのだから、尊敬の瞳で見られるのも当然といえば当然なのである。
もっとも、はその状態がすごいことなのだとはあまり実感していないが。
超人気店でももちろんメニューを工夫して新しいものに変えたりしているわけで...そのメニューを決めるのが、今日のオーナー直々のお菓子が並ぶ日なのである。
もちろんそれは従業員達の中での呼び名で、正式には新作ケーキの試食会となっている。
が考えた新しいケーキや和菓子を2階のカフェスペースでバイキング形式で振る舞い、感想を聞くのである。
しかも試作品ということもあり、普段の半額で食べられるということで、店の前には1時間待ちの行列が出来るほどであった。
これだけのなら別に護衛なんかいらないだろうと誰しも思うだろうが、以前乱闘事件がおきたことがあるのだ。
といっても、相手は店のお客さんではなく、オーナーへのお客さんだったが。
店の評判が高まると、それに乗ろうとする商人もいるわけで、提携を持ちかけてきた者がいた。
もっと儲かるだの、これを機会にうちと取引をだのと、下心見え見えでやってきた人々の申し出を断ったら、逆上されて殴りかかられたのだ。
もヒザシも表向きは一般人ということになっているので、公衆の目前で反撃するわけにもいかず、殴られた。
2人にとっては体のなまりきった人のこぶしなど痛くもないのだが、周りの反応が凄まじかったのである。
それはもう、ナルトや、シカマル、ヒナタ、ネジはもとより、火影やヒアシ、特別上忍たちも切れかかって、なだめるのが大変だった。
予想外だったのが従業員と店の客達からの懇願であった。
頼むからもうこんなことが無いようにああいう訪問者とは会わないでくれ、それが駄目ならせめて護衛をということだった。
それで半ば折れる形で護衛を付けることになったのである。
そして、下心もなくただ『いれぶん』のお菓子に惚れ込んで提携を持ちかけたのが、風の国の老商人『左乃 ダイジロウ』であった。
そして、その老商人をも子供たちも気に入ってしまったために、子供たちも風の国に行くこと自体を反対できなかったのである。
ありがとうございました!
23話
戻る
25話