三千世界の鴉を殺し (5)




サラディン・アラムートが、『HELL(ヘル)』にやってきた翌日の朝。

「アヤメ、マーガリンとって」


  ドカーン!!!

   「よっしゃ命中!!」

  ガゥンガゥンガゥンガゥン...

   「わらわらわらわら、うざいのよおっ!!!」


「はーい。あ、お父さん、牛乳もう少しちょうだい」


  ドゴーンッ!!!!!

  ガラガラガラガラ...

   「よわっ!?パンチ一発で吹っ飛ぶなよな!?」

   『エリー、それって無理だと思うよー』


「はい、どうぞ。あ、シン、ご飯中に寝ないでください」


  ガッシャーン!!

   「あーっ!やばっ!!」

   「何やってんだよ、バカ!ウチは壊すなって言っただろ!」


「ん〜...起きてるよ〜.........ぐ〜...」


   「しょうがないじゃん!手元が狂ったんだからっ!」

   「しょうがないじゃないだろ!?」

   「お前ら!手ェ休めてんじゃねえよっ!!」

   『エリーもね!』


「もう、ちゃんと起きなさい。サラ、食が進んでないようですが、嫌いなものでもありましたか?」

「...え?いや、大丈夫です」

そう言いながらも、サラは聞こえてくる音が気になって、チラチラと外に目を向けている。

「ん〜?サラ(にい)は外が気になるの〜?」

「ええ、まあ...」

寝ぼけた声で聞いてくる年下の少年、シンに、サラは相変わらず外を気にしながら頷いた。

「いったい何をしてるんですか?」

物騒な音や会話が聞こえてきますけれどという言葉は呑み込んだ。

「「ああ、あれ?朝の恒例行事」」

「恒例行事って...」

「ほら、ここって狙われてる子が何人もいますから、やっぱり、襲ってくる人がいるじゃない?」

「で、いつもはお父さんが入ってこれないようにしてるんだけど、そうすると外に溜まってきちゃうでしょ」

「だから、外に溜まったのを、毎朝こうやって大掃除してるの」

「お父さんは家事があるから、掃除するのは年長者3人、エリー兄とフラン兄とエマ(ねえ)、あ、あとチモがやってるけどね」

昨日のうちに紹介された義兄(あに)義姉(あね)の顔を思い出しながら、サラは何とも言えない顔をした。

「では、聞こえてくる音は一体...」

「まあ、ここでは銃火器、他いろいろ揃ってますからね。サラも使ってみたいなら、地下に射撃場がありますよ。あ、使うのが初めてなら、フランかエマに習ってくださいね。エリーが得意なのは体術ですから」

「......はぁ...」

「お()さ〜、僕も学校から帰ってきたら撃つ〜」

「はいはい。肩を痛めないように、経口の小さいのを使うんですよ」

「は〜い」

「......これって、もしかして日常会話なんですか?」

「「そうだよ」」

サラの言葉に、そろって頷いたアヤメとアイリスは、ポンと肩をたたいた。

「大丈夫、私たちも最初は驚いたから」

「エリー兄たちも驚いたって言ってたし、驚かなかったのは、小さいシンくらいだから」

「「習うより慣れろよ!!」」

「それは、少し使い方が間違っていませんか?」

ぐっと拳を握って言う2人に、微妙な顔をしながらサラはため息をついた。











ありがとうございました!


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