迷子の旅 in ハリーポッター(17)
がグラスに注がれた水を半分ほど飲みほすと、グリフィンドールの席の一角で歓声が上がった。
他の寮の生徒たちと、歓声をあげた4人以外のグリフィンドール生が何事かと顔を向ける。
そして歓声をあげたのが悪戯仕掛け人だと分かると、半数以上が慌ててを見た。
周りの様子を気にせず、は残りの水を飲み干しにっこりと笑って仕掛け人たちに空のグラスを見せた。
そんなの様子に悪戯が成功したと喜んでいた4人の顔が困惑に変わる。
「ねぇ、あの4人何か仕掛けてたみたいだけど」
「大丈夫なのか?」
途中で自分の言葉を取られたマリアは少々むっとしたが、今はそれより優先することがあると口を噤んだ。
そんな様子を微笑ましく眺めながら言う。
「水に薬が入っていたようですね。こちらの薬の種類は知っていても味までは知らないのですが...」
ちらりとが4人を見るとつられた他の生徒たちの眼も向く。
視線を向けられると、ジェームズは様子の変わらないに不思議そうな顔を向けて考え込み、シリウスは集まった視線に不愉快そうに顔を歪める。
リーマスは苦笑を返し、ピーターはおろおろと視線を動かす。
はそんな様子の4人の様子を一通り確認した後、話を聞けそうなリーマスだけに視線を向ける。
その視線の意味を正確に理解したリーマスは苦笑とともに口を開いた。
「入れたのは老け薬だよ」
「いったいどれ位入れたのさ」
量に気をつけなければならない薬なだけに、それを知っている生徒たちは心配そうにを見たり、顔を歪めたりしている。
「あいにく僕は魔法薬学は苦手だから分からないよ。ジェームズは20歳くらい老けるって言ってたけど」
「20歳...」
リーマスの言葉を聞いた生徒がへと視線を向ける。
相変わらず変化のないの様子を見て遅効性か、はたまた失敗作かと考えだした頃、にっこりと笑みを浮かべたまま口を開いた。
「この程度の薬じゃ私には全く効果はありませんよ」
「この程度?」
「ええ、残念ながら1日も老けこんでないと思いますよ」
それを聞いた悪戯仕掛け人が困惑気味に眉根を寄せ、他の生徒たちは訝しげな顔をする。
「何で1日も歳とって無いって分かるの?」
「ありえねーだろ。そんなの」
「別にありえなくはないでしょう」
ジェームズとシリウスの言葉に、は妙に響く声で言った。
「単に前例を知らないことは、ありえない理由になりえません」
「でも...」
「今まで一度も転んでケガをしたことがない人がいたとします。周りにいた人たちも同様でした」
「え?」
「その人たちに転ぶとケガをするかもしれないと知っている人がそのことを話しました。それを聞いた人たちは何と言うでしょうか?」
答えは『ありえない』。
その答えを全員が導き出し、中でもありえないと口に出したシリウスは顔を思いっきり歪めた。
「まあ、これはちょっと滅多にないような例ですけどね。『人の想像出来る事象は実現可能なものである(意訳)』きちんと本にも載ってる言葉ですよ」
「...で、結局何で1日も変わってないって言えるんだ」
ぶすくれた顔で言ったシリウスに、ほんの少し質の違う笑みを向ける。
ほんの少しだけ笑みに混じった誇らしさと寂しさに気づいた者はいない。
「言ったでしょう?自分から手の内を晒したりしませんよ」
「え〜、教えてよ」
思わず叫ぼうとしたシリウスを遮ったジェームズの声に、は目を細めた。
それだけで人の良さそう笑みが挑発的な意味合いを持つ。
「それはあなた方が調べて予測を付けるべきでしょう?」
「そんなこと言わないでさぁ」
「当てたら、あなた方の1勝にしてもいいですよ」
その言葉に4人が乗らないわけがなかった。
ありがとうございました!
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