D.Gray−man (5)




「...何これ?」

「何?」

長い黒髪をツインテールにし、ミニスカートをはいたアジア系の少女がドアを開けたままの姿で呟いた。

その呟きに疑問を持ったのか、長い黒髪を後ろでひとつに結わえ、腰に刀をさしている、少女と同様にアジア系の顔立ちの、少女の後ろにいた少年が中を覗き込んだ。

中を覗き込んだ少年の鋭い目が、鋭さを増した。

誰も手を触れていないのに、次々に(ちゅう)をただよい積み上げられていく書類。

書類の山がひとつではないのは、おそらく、種類ごとに分かれているためだろう。

また、机に積み上げられた資料は、まるで自分がいるべき場所を知っているかのように、書類と同様に本棚まで飛んでいく。

「...一体どうなってんだ?」

「さあ?」

「ん?あ、2人ともおかえり」

「ただいまリーバーさん。兄さんは?」

「室長なら...あの書類の山の真ん中だな」

ひょいとリーバーが指さすと、確かに書類の山の中央にわずかだがスペースがある。

「リナリー!戻ったのかい!?神田くんも?」

「ええ、そうよ。ただいま、兄さん」

「おかえり!!というわけで、チモくん!この書類をちょっとどけてくれないかな?」

『このひと山が終わったらねー』

「そんなーっ!!?...こうなったら、くんに筆跡をまねしてもらってっ!!」

もお勉強中でーす』

「そんなーっ!!!」

悲壮な声で叫ぶコムイを無視して、チモはひょいっと山になっている書類を飛び越えて床に着地した。

『なあなあ、リーバー』

「ん?何だ?」

『その女の子がコムイの言ってた可愛い妹?』

「そうそう。この子がリナリー。んで、こっちが神田だ」

『へー...こっちの女の子仏頂面だねー』

「...何だと?」

チモの言葉を理解した少年が、唸るような声で言うと、慌ててリーバーが言った。

「違う違う!神田は男だ」

『えー?』

首を傾げると、ひょこひょこと神田に近寄って行き、まじまじと眺めた。

そんなチモをリナリーが興味深そうに、神田が睨みつけるように見やる。

『あ、ホントだー。男の人だー』

納得したように頷きながら、ひょんひょんとしっぽを振る姿に、こっそり見ていた科学班の人たちの顔がゆるむ。

「えーと、それであなたは?」

の式神のチモー』

「チモちゃん?私はリナリーよ」

『うん。コムイから話聞いたよー。よろしくねー...そっちの人は?』

「..................神田だ」

『よろしくねー、神田。さっきは間違えちゃってごめんなさい』

じろりと睨みつける神田を気にすることなく、チモがマイペースに挨拶と謝罪を口にすると、神田の口から小さく舌打ちが漏れた。

「...さっき式神とか言ってたが、何なんだこいつは?」

「2人がいないときに新しく入ったエクソシストの式神っていう...本人が言うには、人じゃない友達みたいなもんらしいな」

「エクソシストが新しく入ったの?」

「ああ。ここからだとちょっと死角になって見えないんだが......ああ、ここなら見えるな。あそこにいる奴だ」

リーバーが奥の方を覗きながら後ろに下がっていき、見えるところに来ると2人を呼んだ。

「ほら、あそこでものすごい速さで本を読んでるやつがいるだろ?」

「...あの浮いてる奴が?」

神田が言ったように、は3mほどの高さで浮いたまま、次々に飛んでくる本を、非常に速いスピードで読破している。

「もしかして、あの飛んでる本やそこらを飛び回ってる書類は、あの人がやってるの?」

「ああ。イノセンスの使い方がまだ分かっていなくて仕事が出来ない以上、ただ飯ぐらいにならないように仕事をしますっつって手伝ってくれてるんだ」

「...浮いてるのや飛ばしてるのがイノセンスじゃないのか?」

「何でもあれは...」

『リーバーぁ!リナリーぃ!神田ーぁ!コムイの仕事が一段落したよー!!』

「リナリー!!僕に君の可愛い顔を見せておくれーっ!!!」

『コムイ、その言い方ちょっとキモイよー』

「ええっ!?ひどいよチモくん!!」

嬉々として叫ぶコムイにチモが可愛らしく突っ込むと、コムイがショックを受けた顔をした。

「あー...その話は報告が終わってからでいいか?」

「.........」

「もう!兄さんったら!」

リーバーが何とも言えない顔で言うと、神田は無言で、リナリーは少し顔を赤くして呆れた。











ありがとうございました!



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