D.Gray−man (4)
「どちらさまでしょうか?」
「う〜ん、予想に反して冷静だね」
背後から伸びてきた枝分かれした腕に、宙づりにされながら、は初めて顔を合わせた相手に尋ねた。
大きさは軽くの5倍はあり、口と鼻は見えているが、体全体が鱗のようなもので覆われている相手は、途切れがちに言葉を返した。
「わ...私と初対面で...そのように尋ねられたのは...初めてだ...」
「ああ、確かにいきなり宙づりにされたら驚くかもしれませんねぇ」
「そういう意味じゃないって」
「?、それでは、どういう意味なんですか?」
「ヘブラスカを見て驚いて固まっちゃうんだよ」
「ヘブラスカ?」
「私の名前だ...」
はその言葉に1度目を瞬いたあと、にっこりとした笑みでヘブラスカを見上げた。
「はじめまして。私は といいます」
「ああ...」
ゆっくりと頷くと、ヘブラスカは自分の腕の1本を、の手にそっと重ねた。
「何ですか?」
「少し...我慢してほしい...」
「分かりました」
が言ったか言わないかで、ヘブラスカの腕が細く枝分かれし、の手の中へと入り込んだ。
「...皮膚を割いて入ってきているのではありませんね...違和感はありますが、痛みはありませんし」
「そう...だ...これは...を害するためのものでは...ない」
「ええ、それは分かりますよ。敵意がありませんし」
ヘブラスカの言葉に頷きながらも、は少し困ったように頬を掻いた。
「でも、皮膚の下を何かが動いている感じがして、何というか......むずがゆい?」
「「「何で(なぜ)そこで疑問形になるの(なる)」」」
「...あなたの体は...何かに守られているのか?」
「ヘブラスカ、どういうことだい?」
コムイの問いに、ヘブラスカはを見たまま言った。
「体の表面は調べられるのに...体の中が調べられない...おそらくイノセンスは体の中にあると思うのだが...」
「ん〜、多分プロテクトがかかってるからだと思います。ちょっと待ってくださいね。少しゆるめますから.........今度はどうですか?」
「...大丈夫だ...」
ヘブラスカがそう言ってしばらくすると、の手からヘブラスカの細く分かれた手が離れていった。
「もういいんですか?」
「ああ...」
ヘブラスカはの体をゆっくりっと、この世界のエレベーターらしい、逆ピラミットの形をした物の上に戻した。
「 ...あなたのイノセンスは、その体のすべてと溶け合って調和をなし、あなたと関わるすべての者たちの記録をその中に取り込み、受け止める、『記録者』となるだろう...私にはそう感じられた...それが私の能力...」
「『記録者』?歴史を記録するのは、ブックマン達のお仕事じゃないんですか?」
「おそらく、歴史を客観的に記録するのではなく、お前が関わった人々のことを記録するということではないか?」
「ああ、だから『あなたに関わるすべての者たち』って言ってたわけか」
何度も頷くラビをよそに、はもう1つ気になることをヘブラスカに尋ねた。
「『その体と溶け合って調和をなし』っていうのは、どういうことでしょうか?」
「おそらく、今のシンクロ率より上げるということだと思うよ。ヘブラスカ、今の君のシンクロ率はいくらだい?」
「シンクロ率は...2%だ...」
「うわっ!思ったよりずっと低いね」
「シンクロ率は高い方がいいんですか?」
「シンクロ率が低いほど発動は困難となり、適合者も危険となる...」
「なるほど」
頷いたを見て、コムイが言った。
「とりあえず、君はシンクロ率を上げる方法を考えないとね」
「それ以前に、私の体の中に入ったイノセンスが、どんな働きをしているのか分かりませんけどね」
その言葉に、しばしその場が沈黙に包まれた。
ありがとうございました!
3話
戻る
5話