昨日はありがとうございました」

「全くよ。世話の掛かる先生なんだから」

大停電の翌日、その日の授業も無事に終わりネギとオコジョ妖精を肩に乗せた明日奈は、麻帆良の中を歩きながら話している。

「コーヒーでも奢ってもらおうかな   先生?」

「兄貴!俺っちもエスプレッソ!」

「は、は〜い」

ふと横に見えた『STARBOOKS COFFEE』の文字に、明日奈は悪戯を思いついたような顔で言う。

それに便乗したカモの物も一緒に註文するためにネギは店のカウンターに向かった。

「あ、そーだ兄貴。昨日仮契約(パクティオー)の時にさ   

「え?...あ」

「ぬ...」

「おや?こんにちはネギ先生、神楽坂さん」

コーヒーを受取り席に向かう途中、同じように席を探している達と鉢合わせた。

「こ...こんにちは先生。こ、こんにちはエヴァンジェリンさん」

「フン!気安く挨拶を交わす仲になったつもりはないぞ」

「今日はネギ先生、アスナさん」

「はい、マクダウェルさんはラテでしたね」

「...ああ」

「......マクダウェル、さん?」

「休憩時間とはいえ仕事中ですからね。教師が特定の生徒と仲良くするのはあまり良いように見られませんしね」

エヴァンジェリンの呼び名に首を傾げた明日菜に、が苦笑しながら言う。

「ぼーやには耳が痛いだろう」

「うっ」

不機嫌な顔から一転しニヤリと笑って言うエヴァンジェリンに、ネギが言葉に詰まる。

2人の様子を眺めていた明日菜がふとアゴに手を当て訳知り顔でエヴァンジェリンを見る。

「ふ   ん」

「?」

「聞いたわよ   !エヴァンジェリン、あんたネギのお父さんと先生のこと好きだったんだってね   ♥」

「ぶ     っ!!?」

「ア、アスナさ...」

「コラ、そんな勿体ないことしちゃダメですよ」

明日菜の突然の言葉にエヴァンジェリンは飲んでいたラテを噴き出し、ネギは教えた本人のため思わず明日菜の名前を呼び、はそんな周りの雰囲気をさらりと流してエヴァンジェリンを(いさ)める。

「き、き、貴様!やっぱり私の夢を   !?」

「い、いえ、あの...」

顔を真っ赤にしてネギを締め上げて詰問するエヴァンジェリンの様子に、明日菜が少々話題を間違えたということをやっと悟った。

「そうなのですかマスター?」

「ふふ、あなたはよくあの子の後を付いて回っていましたよねぇ」

「ええい!うるさいっ!!貴様はその一部難聴の耳を何とかしろ!!!」

「難聴?」

エヴァンジェリンが自分も好きと言うことを素で流していたは、何か聞き洩らしただろうかと本気で首を傾げた。

そんなから顔を背け、エヴァンジェリンはふと表情を暗くする。

「...だが、奴は死んだ。10年前にな」

「え?」

「私の呪いもいつか解いてくれるという約束だったのだが...まあ、くたばってしまったのなら仕方なかろう。おかげで強大な魔力によってなされた私の呪いを解くことの出来る者はいなくなり、10数年退屈な学園生活だ」

ほとんど中身を噴き出してしまった自分のラテの代わりに、隣にあったのモカを手に取り口をつける。

はいつの間にコーヒーが入れ替わったのだろうと首を傾げた...訳ではなく、なんだかエヴァンジェリンと自分の認識に違いがあるような気がして首を捻る。

「あ、あれー?でもさぁ...あんたってばその何とかゆーお父さんを追ってるんじゃなかった?」

「ハ、ハイ。あの...
でも、エヴァンジェリンさん。僕、父さんと   サウザンドマスターと会ったことあるんです!」

「...何だと?」

ネギはこそこそと話していた明日菜に頷くと、勢いをつけるように拳を作りエヴァンジェリンを見てはっきりと言う。

「何を言っている?奴は確かに10年前に死んだ!!お前は奴の死に様を知りたかったのではないのか?」

「違うんです!大人はみんな僕が生まれる前に父さんは死んだって言うんですけど...6年前のあの雪の夜...僕は確かにあの人に会ったんです!」

ネギは布に包まれた杖を両手で握りしめる。

「その時にこの杖をもらって...だからきっと父さんは生きてます!僕は父さんを探し出すために父さんと同じ立派な魔法使い(マギステル・マギ)になりたいんですよ」

「そんな...奴が...サウザンドマスターが生きているだと?」

エヴァンジェリンはしばし呆然としていたが、ネギの言った内容が浸透してくると口が緩みだす。

「フ...フフ、ハハハハ!そーか!奴が生きているか!!そいつはユカイだ!ハ...殺しても死なんよ―な奴だとは思っていたが!ハハハ!そーかあのバカ!フフハハ!まあまだ生きてると決まったわけじゃないがな」

「うれしそーね」

「ハイ」

「...そういえば、なぜマクダウェルさんはあの子が死んだと思っていたんですか?私は行方不明としか言ってませんよね?」

「......ハ?」

の言葉にピタリと笑いを止めると、勢い良く振り返りの襟を掴んでガクガクと揺さ振る。

「地球の裏側だろーが地面の中だろーが相手の居場所が分かる奴がそれを言うか!?お前に行方が分からないなら死んだと考えるのが普通だろうが!!」

「あはは、嫌ですねぇ。自分の生徒に気配やその他もろもろの消し方を教えておくのは普通でしょう?」

「んなワケあるかーっ!!って!?お前のせいで余計ややこしくなってるんじゃないか!?」

「あわわ...!?」

「ちょ、ちょっと!先生死んじゃうわよ!?」

残像が見えるくらい揺さ振るエヴァンジェリンにネギ達が震え上がる。

「これ位でこいつが死ぬわけないだろう!」

「いくらそれが事実でも、揺さぶられるのが好きな訳じゃないのでそろそろ止めて下さいね」

「...ちっ」

全く答えた様子のないにエヴァンジェリンは舌打ちしながら手を離す。

「それで奴の手掛かりはあるのか?」

「え?え、え〜と、手掛かりはこの杖のほかには何一つ無いんですけど...」

   京都だな」

困ったように言うネギにエヴァンジェリンが言う。

「京都に行ってみるがいい。どこかに奴が一時期住んでいた家があるはずだ。奴の死が嘘だと言うのならそこに何か手掛かりがあるかもしれん」

「き、京都!?あの有名な、ええーと日本(にっぽん)のどの辺でしたっけ...困ったな。休みも旅費もないし...服の弁償代とかで...」

「へー京都かー!ちょうどよかったじゃんネギ。ねえ?」

「ハイ」

「え?」

「そういえば来週は修学旅行でしたね。3−Aは京都だったはずですが」

「え!?ホ、ホントですか!?」

「ええ」

身を乗り出して聞いて来たネギに苦笑しながら頷いて答える。

「そういえば、マクダウェルさんと絡繰さんは今年も欠席ですか?」

「貴様は...毎年毎年嫌味か!?私が麻帆良(ここ)から出られないのを知ってて...」

「...どうやらその辺りも認識の違いがあるようですが、出られますよ。保護者同伴なら」

「............ナニィイイイイっ!?

「「「え?」」」

「そうなのですか?」

認識疎外を掛けてなかったら間違いなく注目を浴びるほどの大声で叫んで固まったエヴァンジェリンの横でネギ達がぽかんと口を開けて首を傾げ、茶々丸はあまり変わらない表情でに尋ねる。

「解呪に関してはあの子に一任しましたけど、一緒に掛けた呪いなんですから一時的な緩和くらいできますよ」

「一時的!緩和!どれ位だ!?」

「私だから良いですが、単語のみで話すと意味が通じませんよ」

「そんなことはどうでも良い!どれ位なんだ!?」

「魔力が半分ほど戻した状態なら2週間くらいは余裕ですね。魔力全開状態だと4、5日...」

「2週間!?2週間だなっ!?」

「ええ」

詰め寄ってくるエヴァンジェリンに、一応間違いではないので頷きながら答える。

「フ...フハハハハハッ!茶々丸京都に行くぞ!」

「ハイ、マスター」

「わあ!よかったですねエヴァンジェリンさん!」

「保護者同伴って...先生も修学旅行に行くの?」

「まあ、普段と違う環境になると体調の悪くなる人が誰かしら出ますしね。これでも養護教諭ですから」

テンションの高いエヴァンジェリン達と違い割と落ち着いている明日菜の疑問に、は苦笑しながら答えた。















あとがき

『『ネギま』とのクロス』第5話です。
おいおい様、気に入っていただけると、嬉しいです。

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