「おい!早くしろ!置いていくぞ!!」

「出来もしないことを言うな」

「マスター、お父さんが一緒じゃないと学園から出られませんが...」

「ケケッ!機嫌イイナ御主人」

「やかましい!」

そわそわとしながら文句を言うエヴァンジェリンに、チモと茶々丸、チャチャゼロがツッコミを入れる。

「お、お待たせしました〜」

「お待たせしました。ほら、さよさんの髪をまとめてみたんですよ。可愛いでしょう?」

は腕に抱いていたチャチャゼロと同じくらいの大きさの人形の向きを少し変えて4人に見せる。

頭の上の方に髪をまとめてもらっていた人形は、おずおずと恥ずかしそうに4人を見る。

その人形の容姿を知る人が見れば気付いただろうが、彼女はネギのクラスの座らずの席にいる幽霊『相坂 さよ』にそっくりである。

もっとも、その幽霊少女が実際に人形の中に入っているので、そっくりなのは当たり前なのだが。

「...まあまあだな」

「よく似合っていると思います」

「ああ、可愛いぞ」

「オレモ()メロ」

「ふふっ、チャチャゼロも可愛いですよ」

「んんっ!」

わざとらしい咳払いにチモは呆れたような顔を向ける。

「いっそゼロのように素直になったらどうだ」

「なっ!?」

「マスターは今日の服を選ぶのに3時間かけられましたから」

「言うんじゃない!この...」

「別に3時間もかけなくても貴女に似合わない服なんてないでしょうに」

「え!?なっ?うぅっ...」

「もちろん茶々丸の服も良く似合いますよ」

「ありがとうございます」

顔を真っ赤にして固まるエヴァンジェリンを軽く流して、は茶々丸を褒める。

チモの肩に座っていらチャチャゼロは、小さな声でチモに話しかける。

「オ前ノ主人アイカワラズダナ」

「当り前だろう。今更100年や200年で変わらん」

「ソウイウコトジャ ネエンダガナ」

「分かっている。相変わらず(たら)している自覚がないと言いたいのだろう。だが、最初から誑しこむつもりで甘い言葉を言うは想像つかん」

「ソレモソウカ」

苦笑しながら話すチモに、チャチャゼロは大きく頷いて答えた。

「エヴァ、そろそろ駅に行きましょう...おや?顔が赤いですけど」

「何でもない!(どうせ風邪かとボケるのが落ちだ!落ちつけ私!)...いい加減行くぞ!」

「そうですね。行きましょうか」

「「はい」」

「「ああ(アア)」」

6人は駅から上りの電車に乗って原宿へとやってきた。

「あ、ここの服エヴァの好みと似てませんか?」

「ふむ...悪くないな」

「子供服も扱っているようですし、チャチャゼロとさよさんのも見てみましょうね」

「え?私この服で十分ですけど...」

「遠慮ハ イラネーゼ」

「お前は遠慮を覚えろ、ゼロ」

チャチャゼロの言葉に困ったように5人を見回すさよを微笑ましく思いながらが言った。

「どうせエヴァ達の分も私持ちですから、今更一人や二人増えても大して変りはありませんよ」

「えっと、でも...」

「それとも、こういう服は嫌いですか?」

「いいえ!可愛いと思います...」

「買ってもらうだけというのが気が引けるなら後でお手伝いしてくれませんか?」

でもと続きそうな言葉を遮って言う。

「お手伝いですか?」

「ええ」

「さよさん、そうされては如何でしょうか?私もお父さんに何か買っていただいたときは、後日に食事の支度や掃除などを手伝っていますし」

「あ、それなら私にも何とか出来そうです」

「それじゃあ決まりですね。エヴァ達が先に中へ入っていますし、私たちも行きましょうか」

「「はい」」

いつの間にかさっさと中に入っていたエヴァンジェリン達3人をショーウィンドウ越しに見ながら、達は中に入って行った。






「あとは靴とアクセサリーですかね?」

「えっと...先生、大丈夫ですか?」

「ふん!こいつはこの位でつぶれたりはせん」

「お前が答えるな」

「事実ダケドナ」

「お父さん、手伝いましょうか?」

「大丈夫ですよこれ位...おや?」

右手に大量の荷物をタワーのように積み上げながら持ち、左腕にさよを乗せて歩いていたは、視線の端に見知った人影を見つけて振り向く。

向こうも大量の荷物を崩さずに歩くとその横を歩くエヴァ達の姿が見えたらしく、驚きながらも駆け寄ってきた。

先生こんにちは!」

「はい。こんにちは、ネギ君」

「あ、保険のせんせー。こんにちはー」

「こんにちは近衛さん」

「うっ!?あっ...チ、チモさん、コ、コンニチハデス!」

「ああ、筋肉痛は...と聞くのは愚問か。よく利いただろうあの薬は」

「うぅぅ...」

荷物の影になっていたチモに気づいたネギが緊張しながら挨拶をすると、チモはにやにやと笑いながらネギをからかう。

「そういえば、昨日までアスナもネギ君も筋肉痛で妙に体の動きがギクシャクしとったけど、今朝は普通やったな。お兄さんが2人に薬くれたん?」

に頼まれたからな。それと俺のことは千百で良い」

「うちもこのかでええよ〜」

「ああ。それと、俺の肩に乗ってるのがチャチャゼロ。の腕にいるのがさよだ。エヴァと茶々丸は知ってるだろ?」

「チャチャゼロちゃんとさよちゃんか〜、はじめまして、仲良くしてな。エヴァちゃん達はおんなじクラスやし知っとるよ」

「ケケッ」

「は、はじめましてっ」

このかの挨拶に笑って答えるだけのチャチャゼロと違い、さよは慌ててお辞儀をしての腕から落ちかける。

「ほら、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ところで、お二人も修学旅行のための買い物ですか?」

「あ、いえ僕たちは...」

「今日はアスナの誕生日プレゼント買いに来たんよ〜」

チモへの緊張のためかもごもごと口籠るネギの代わりに、このかがあっさりと答える。

「そういえば明日でしたね」

「あれ?先生アスナの誕生日知ってるん?」

「神楽坂さんのと言うよりは、学園に通う生徒全員の簡単なプロフィールと病気やケガの有無は記憶してますよ」

「ええっ!全員ですか!?」

「じゃあ、うちのも?」

「ええ。最も医者には守秘義務がありますがら言いふらしたりしてませんよ。特に体重は女の子の最重要機密でしょう?」

少し悪戯っぽく言うに、少し緊張が取れたネギがこのかと一緒に笑う。

「そやな。確かに最重要機密や」

「おい、いつまでも喋ってないで行くぞ」

「だからお前が言うな。金を出してるのも、荷物を持ってるのもだろうが...まあ、いつまでもここにいるのもなんだな。、どうせならあそこのカフェで話したらどうだ?」

「そうですね...2人とも時間は大丈夫ですか」

「は、はい。大丈夫です」

「ええよ〜」

大人数+大量の荷物で目立っていたが、カフェの中に入って注文したものがそれぞれの前に届くころにはだいぶ周りの視線もなくなっていた。

「そういえば、さっきチモさんが先生がお金出してるって言ってたけど、その荷物全部先生のおごりなん?」

「おごりと言うのは正しくありませんね。私はこの子達の保護者ですし、近衛さんも家族と買い物に行く時はお金を払うのは大人でしょう?」

「ああ、そやね。でも普通は、そないに沢山は強請れへんよ」

ガイイッテ言ッテンダカラ気ニスンナヨ」

「え、えっと、私もちょっと多すぎたと思うので、後でたくさんお手伝いします!ねっ茶々丸さん!」

「はい」

ちらっと自分の身長よりはるかに高く積み上げられた荷物を見上げて決意を新たにするさよに、茶々丸も頷いて答える。

それを間近で聞いたは苦笑しながら言った。

「まあ流石に、普段はこんなに沢山は買いませんよ。今日は修学旅行の準備とお祝いを兼ねてますからちょっと荷物が多くなってしまいましたけれど」

「「お祝い(ですか)?」」

「少し過ぎてしまいましたが茶々丸の誕生日と、さよさんが家族になったお祝いですよ」

「えっ!?わ、私のですか?」

「きちんとお祝いの言葉は頂いていますが?」

驚きの声を上げるさよとあまり表情和変えない茶々丸に、は笑みを浮かべながら答えた。

「血の繋がりだけが家族じゃないでしょう?さよさんが嫌だと言うのならしょうがありませんが」

「い、嫌じゃ、嫌じゃないです!嬉しいです!」

「ふふっ、それじゃあ今度からは呼び名は先生じゃなくてお父さんが良いですね」

「え、えっと...」

「慣れるまでは名前呼びでもかまいませんよ」

「えっと...お、おと...う...う、、さん」

途中までお父さんと呼ぼうと頑張ったが、恥ずかしくなって名前呼びに変わってしまった。

申し訳なさそうにおずおずとを見上げるさよに、は穏やかな笑みを向ける。

「焦らなくても良いんですよ、さよ(・・)

「は、はい!」

「茶々丸も、確かに誕生日にお祝いの言葉は伝えましたが、やっぱり何か形に残るものを贈りたいものなんですよ」

「形に、ですか?」

「ええ。特に茶々丸は女の子ですから、可愛らしい姿を見せてくれると男親はそれだけで嬉しいんですよ。もちろんエヴァとチャチャゼロもね」

「ふんっ」

「普通そこは顔を背けるんじゃなく、頷くところだろうが」

「御主人ニ素直ナ反応ヲ期待シテモナ」

「やかましいわっ」

「「お前(御主人)がな」」

妙なところでそっくりな使い魔もどきコンビにからかわれたエヴァンジェリンは額に青筋を浮かべている。

「と、ネギ君と近衛さんの前で話すことではありませんでしたね。すいません、話の流れが分からなくて退屈だったでしょう?」

「そないなことないよ。先生がみんなのこと大切に思っとるのが、よく分かったし。なあ?」

「はい!僕たちもアスナさんに何か送りたいと思っていたので...」

「最初はその話でしたね。いつの間にか脱線していましたが」

クスリと笑ったにつられてネギ達が笑う中、買い物を中断されたエヴァンジェリンは少々不機嫌そうに通りを眺めていた。















あとがき

『『ネギま』とのクロス』第6話です。
京言葉は難しいです...調べるのに時間がかかりますね。
調べてもなんだか変な使い方をしてる気がして不安です(汗)
おいおい様、気に入っていただけると、嬉しいです。

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