『危なかったなー、ガキ』

     『......』

     右手に崖から落ちた私を、左手にロープを掴みながら言う青年。

     『あ、やべぇ』

     『だから手元にある道具の強度ぐらい覚えておきなさいと言ったでしょう?』

     『ナイスキャッチ!今度もが助けてくれるからヘーキだろ?』

     『そういうこと言ってると手を離しますよ』

     『あ、ウソ!ウソだって!ちゃんと気をつけるってセンセ!』

     『よろしい。ほらあなたもチャンと掴まりなさい。もう一度落ちたくはないでしょ?』

     『......』

     ロープが切れて2人とも落ちかけた時、垂直な崖を歩いて降りてきた真黒な男にそれぞれの手を捕まえられた。

     『お前たちは誰だ?なぜ助けた?」

     『さあな。まあ、食えよ。うまいぜ』

     『いくら火の傍でも冷えますよ。ほらちゃんと掛けて』

     私は勧められるままに焼いた魚を手に取り、真黒な男の外套に包まって魚を口に運んだ。

    




     『おい貴様。私のモノにならんか?』

     『オイオイ』

     『......何なら、貴様でもいいぞ』

     『おやおや、ナギったらモテモテですね』

     『今の言葉はスルーかよセンセ...つーか、もう1カ月になるぜ。俺らに着いて来たってなにもイイこたねーぞ。どっか行けって』

     『やだ。お前らがうんと言うまで地の果てまで追ってやるぞ』

     『生憎しばらくは地の果てに行く予定はありませんよ?』

     『いや流石に俺でも例えだって分かるぞ...てか、地の果てに行ったことあるのか?』

     傍らにいたチャチャゼロは、いつの間にか黒い男の肩から降りと白い生き物と一緒に蝶を追いかけていた。







     『『登校地獄(インフェルヌス・スコラスティクス)』』

     『いや   ん!好きなのにー!!







     『〜〜〜〜〜〜っ』

     『あっはっはっは!似合う!すばらしく似合ってるぜエヴァンジェリン』

     『ええ、よく似合ってて可愛いですよ』

     『くっくっくひーっひーっ、「不死の魔法使い」、「闇の福音」が、ぷっ、くっ

     『ホントじゃのう。600万ドルの賞金首にはとても見えんわい』

     『殺す!何も残さず...』

     馬鹿笑いしながら言う青年と本気で褒めている男、妙に後頭部の長い老人の言葉に怒りと羞恥で体が震える。

     『まあまあ、学校生活も楽しいもんだって。経験無いんだろう?』

     『まあ、ここなら普通の所と違って多少融通が効きますから心配いりませんよ』

     『そうじゃな。小学生ではちと可哀そうじゃし...中等部に編入してみるかの?』

     『まあ心配すんなって』
     
     青年が私の頭を撫でながら言う。
     
     
     『お前が卒業する頃にはまた帰って来てやるからさ。



光に生きてみろ。

そしたらその時、お前の呪いも解いてやる』


     『...本当だな?』
  
     『じゃあ、解呪に必要な手続きはあなたがやるように呪いを組み換えますよ。あ、でも授業参観とかあったら近衛さんを通じて連絡してくださいね。見に来ますから』

     『それはイヤだっ!』

     『ぶっくくっくっ...』

     男の一言で私の頭を撫でていた青年の笑いの発作が復活してしまった。



















































(......うそつき)


 
















































湖へ体が叩きつけられようとしたとき、自分と大して大きさの変わらない手がエヴァンジェリンの腕を掴んだ。

「くっ...!エヴァンジェリンさん!!」

「...!」

下に引かれる肩の痛みをこらえながらネギはエヴァンジェリンを引き寄せ横抱きにし、湖の底から呼び出された杖が2人の体を空へと運ぶ。

「...なぜ助けた?」

「え...?だ、だって、エヴァンジェリンさんは僕の生徒じゃないですか」

「......バカ...がっ!?

2人を支えて飛んでいた杖がいきなり落ちて行く。

「え!?ああ!!魔力が切れたあぁあッ!!!

「このバカっ!こんなところまで似るんじゃないぃっ!!

マスター!!ネギ先生!?

ネギー!!

橋とほとんど変わらない高さから再び落ちることになった2人に茶々丸と明日奈が叫ぶ。

「本当にこんなところまで似るなんてすごいですねぇ。あの子の遺伝子は」

「「「「えっ!?」」」」

突如何もないところから現れた黒い影は、エヴァンジェリンを横抱きにしたネギを左手で、もう一度湖の底に行きかけた杖を右手に受け止めた。

「「(先生)!?」」

「ふふっ、こんばんは。2人とも」

にっこりっと笑って言う黒い影――にネギは慌てるあまりパニックになる。

「あわわわわわ!き記憶を...」

「落ち着けこのバカ!こいつも魔法使いだ!!」

「え?ええっ!?」

「大体魔法使い以外がこんなところで浮いていられると思うかっ!それに私の夢を覗いたとき見たんだろうが!!」

「うっ!いや、だって、それは...」

「はいはい。こんなところで2人そろって叫ばないでください。まずは橋の上に戻ってからですよー」

2人が言い争っている間にも、何もない所をすたすたと歩いて橋に向かっていたが声をかけると、流石にバツが悪かったのかそろって口を閉じた。

「はい、到着」

「あ、ありがとうございます」

「おいさっさと降ろせ!」

「あ!は、はい」

「ネギ!」

「マスター!ネギ先生!」

「兄貴!」

ずっと横抱きだったエヴァンジェリンをネギが降ろすと、明日奈たちが駆け寄ってきた。

「あ、明日奈さん!カモ君!」

「まったく!無茶ばっかりして!」

「ふぅ...俺っちも冷や冷やしたぜ!」

「ご、ごめんなさい...」

「マスターおケガは?」

「...ない」

「よかった...先生、ありがとうございました」

「どういたしまして。それと仕事中でありませんから、いつものように呼んで下さいね」

「ハイ。お父さん」

「「「.........ええっ!?」」」

一瞬何を聞いたか分からなかったネギ達がその内容を理解して思わず叫ぶ。

「エヴァもお父さんってっ呼んでくれたら嬉しいんですけどねぇ」

「ふん!誰が呼ぶかっ!」

「残念ですねぇ」

顔を背けながら言ったエヴァンジェリンに笑いながら外套を羽織らせる。

「まあ、今回のケンカはネギ君の勝ちですかね?」

「なっ!?」

「えっ!?」

急な話題の変更とその内容に茶々丸以外が驚いた顔をに向ける。

「だってエヴァ助けられちゃったでしょう?」

「ぐっ!」

「と言うことで、ネギ君の勝ちですね」

「え、良いんですか!?」

「まあ、最後の魔力切れはちょっと及第点と言ったところですが、そこまでのことを考えればケンカしてた相手に助けられちゃったわけですから」

ぐぐぐっ...」

唸るエヴァンジェリンを気にすることなく、はにっこりとネギに笑いかける。

「一応ネギ君が勝ったわけですから、してほしいことがあったら今のうちに言っておいた方がいいですよ」

「あ、はい。それじゃあ、もう悪いこともやめて、授業にもしっかり出てほしいです!」

「だそうですよ」

「ちっ...分かったよ。確かに今日のは1つ借りだな...」

「ホントですか!」

エヴァンジェリンの答えに、ネギが嬉しそうに確認する。

「よーし!名簿の所に『僕が勝った』と書いとこ♥」

「なっ!?なにするんだ貴様!やめろ!!てゆーかどっから出したソレ!?」

「えーだって」

「停電が続いてれば絶対私が勝ってたんだよ!」

「勝負ごとにもしはありませんよー」

「うるさい!!」

「えーと...仲直りってコトで良いの?」

「...どうなんでしょうか?」

騒いでいる3人を指さして明日奈が茶々丸に問う。

「あ、安心して下さいエヴァンジェリンさん。呪いのことなら僕がうーんと勉強してマギステル・マギになったら解いてあげますから」

「...な」

頬を引っ張られながら言うネギに、エヴァンジェリンは一瞬顔を赤くして固まった。

「それまで何年待たなきゃいけないと思ってんだ!!それよりお前の血を吸えばすぐに解けるんだよ!」

「あ、そうだ。まき絵さん達を治しに行かなきゃ」

「無視すんな!いいかぼーや!私は諦めた訳じゃないからな!!満月の晩は背中に注意しておけよ!」

「エヴァ、自分に注意させるために忠告するなんて...意味ないですよ?」

「うるさーいっ!!」

「ねえ...エヴァンジェリンっていつもこうなの?」

「いえ、こんなに楽しそうなマスターはネギ先生が来てからで...」

そんな言い合いは1時間後に見回りをしているはずのとネギがいないことに気づいた(ことになっている)学園長からの連絡でぐだぐだ状態のまま終了した。















あとがき

『『ネギま』とのクロス』第4話です。
おいおい様、気に入っていただけると、嬉しいです。

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