試験会場だったホテルから、最寄りの空港へ移動し、そこから飛行船で3日。

パドキア共和国入りし、ククルーマウンテン近くの町までは列車に乗って移動する。

「そろそろ左手にククルーマウンテンが見えてくる頃ですよ」

「ホント?」

の声に、3人は窓の方に顔を向ける。

「あれか?」

さほど待つことなく、木々の間から高い山が見えてきた。

「暗殺一家のアジトか...実際に見ると、いやーな雰囲気だな」

「うむ...周囲の聞き込みから始めるか」

「まず宿を確保して作戦を立てようぜ」

「え?なぜですか?」

「いくらがその暗殺者たちと知り合いと言っても、ギタラクルから連絡がいって警戒されているだろう」

「いえ、大丈夫ですよ」

クラピカの言葉をあっさりと否定すると、それに同意するようにゴンも言った。

「そうだよ。友達に会いに来ただけなんだからさ」

「ええ。あ、ゴン君、あの鳥はこの辺りにしかいない鳥なんですよ」

「え!?どれ?」

窓から見える景色や動物を見て騒ぐ2人を、レオリオとクラピカは呆れたように見ていた。











     第四十一話     観光バス










駅に着くと、が大丈夫と言ったにもかかわらず、なぜかクラピカとレオリオの意見に従って聞き込みをしている。

さすがに地元の人に聞けば納得するだろうと、止めなかったためだ。

そして、当然のごとく、ククルーマウンテンについては、1番初めに聞いた八百屋の女将さんの話で分かった。

「ククルーマウンテン?ゾルディック家の観光かい?山景巡りの定期バスが日に1本ガイド付きで出てるよ」

「...ゾルディックの家まで行きたいのだが」

「家まで行きたい?あはははは、結構いるねーそういう客。とにかくバスに乗ってみな」

暗殺一家のいる山が観光地になっていることに、多少困惑しながらレオリオとクラピカは顔を合わせた。

はいつものことなので特に気にせず、ゴンも初めて乗る観光目的のバスに楽しそうにしている。

バス停に向かうと、すでにバスが停車しており、何人かが乗り込んでいた。

4人も乗り込み、それから30分ほど経った頃、ようやく出発した。

『皆様、本日は号泣観光バスをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。さっそくですが、デントラ地区が生んだ暗殺一族を紹介していきましょう』

バスが発車してククルーマウンテンに向かう途中、観光客たちはカメラで写真を撮ったり、外の景色を見て楽しそうに話をしている。

それ以外にも、ゾルディック家の賞金目当てのアマチュアハンターが乗っている。

『え、皆様。左手をご覧下さいませ。あちらが悪名高いゾルディック家の棲むククルーマウンテンです。樹海に囲まれた標高3722mの死火山のどこかに、彼らの屋敷があると言われていますが、誰も見た者はいません』

残念ながら、屋敷を見た人が1人乗っているのだが、誰も気づかない。

『ゾルディック家は10人家族。曾祖父・祖父・祖母・父・母の下に5人の兄弟がいて、全員殺し屋です。では、これからもう少しだけ山に近づいて見ることにしましょう』

しばらくするとバスが止まり、観光客たちと一緒に4人も降りる。

「おお」

「おお...こりゃすげーな」

目の前にそびえ立つ巨大な塀と門に、感嘆の声を上げる。

「え、ここが正門です。別名、黄泉の門と呼ばれております。入ったら最後、生きて戻れないとの理由からです。中に入るには守衛室横にある小さな扉を使いますが」

「ほお」

「ここから先はゾルディック家の私有地となっておりますので、見学できません」

「何      !?山はまだはるか向こうだぜ。まさかあそこまで...」

「はい。ここから先の樹海はもちろん、ククルーマウンテンも全て、ゾルディック家の敷地と言うことです」

「これが庭ってことかよ」

その説明を聞いた3人も、観光客たちと一緒にぽかんと口を開けて門の向こうに見える風景を見た。

「ねえ、...あれ?」

ならそこで電話をしているぞ」

「仕事か?」

いつの間にかバスから離れたところで電話をしているに、話を聞けないと分かったゴンは、ガイドの女性に話しかけた。

「ねぇ、ガイドさん」

「はい」

「中に入るにはどうしたらいいの?」

「ん〜...ボウヤ、私の説明聞いてまして?」

ガイドがにっこりと営業用の笑顔を浮かべたまま言う。

「うん、でも」

「中に入れば2度と生きて出られません。殺し屋の隠れ家なのよ」

「ハッタリだろ?」

ガイドの後ろから、腰に剣を下げた非常に体格のいい男と、幅広の剣を肩に担いだ普通の体格の男が言った。

「誰も見たことのない幻の暗殺一家」

「奴らの顔写真にさえ、1億近い懸賞金がかかってるって話だ」

「まじか?くそ、写真撮っときゃよかった」

「何のですか?」

「うお!かよ...驚かすな」

「すみません。で、何の写真ですか?」

「何って...キルアの写真だよ。1億近い賞金がかかってんだろ?」

周りを気にしたのか、キルアの名前を出すときは小声で言う。

「まあ、確かにそれくらいのはずですが...地位や財力が高い人はそれなりに顔も知ってますから、賞金としては低いですよ」

「おいおい、1億で低いのかよ」

そんな会話をしている間に、アマチュアハンターたちは守衛室の扉を力任せに取り外した。

そして、守衛−ゼブロ−の胸倉を掴まえたことには眉をひそめた。

「門を開けな」

「こ、困りますよ。あたしが旦那様に叱られるんですから」

「心配すんな。どうせあんたの御主人たちは俺たちに始末される」

ゼブロのポケットに入っていた鍵を抜き取ると、邪魔だとばかりに放り投げた。

「っと、大丈夫ですか?」

「え、は、はい...もしや、様でしょうか?」

放り投げられたゼブロを、は地面につく前に受け止めた。

レオリオはいつの間にそこに行ったのか驚き、ゼブロも思いがけない相手に目を丸くする。

その間にアマチュアハンターたちは扉を開けて中に入って行った。

「ええ。お久しぶりです」

「はい。お久しぶりでございます」

、守衛さん大丈夫?」

「一応、地面につく前に受け止めましたが...」

「いえ、何ともありません。しかし、またミケがエサ以外の肉を食べてしまいますのが...」

「え?」

「まあ、自業自得でしょう。あ、少し砕けた言い方でも結構ですよ」

「では、お言葉に甘えて」

その時、2人が入っていた扉が内側から重い音を立てて開いた。

「「!?」」

そこにいた者たちが皆注目する中、扉の隙間から先ほどのハンター達の服を身に纏い頭部を砕かれた骸骨が、獣のような手につかまれて放り出される。

「ひィィ!!」

「うわわわわ!!」

「な...」

悲鳴が上がり、ゴン達が驚いていると、骨だけになったアマチュアハンターが放り出された。

「時間外の食事は旦那様に堅く止めてるのになー...ミケ   !!太っても知らないよ   !!

「まあ、その分運動すれば大丈夫だと思いますよ」

「そうですかねぇ」

「なんだ!?今のは...」

ゼブロと暢気な会話をしているうちに驚愕から我に返ったクラピカが、思わずを見て発した言葉に、ただにっこりと笑って返した。

「え、皆さまご覧いただけましたでしょうか。1歩中に入ればあの通り、無残な姿をさらすことに...」

「いいからそんなこと!」

「早くバスを出してくれ   !!」

「あんたら何してんだ!早く乗って!!」

慌ててバスに乗り込む観光客たちの1人が、まだ扉の前にいるたちに気づいて叫ぶ。

「あ、えーと、行っていいですよ。俺たちここに残ります」

その言葉に目を見開いて固まった観光客たちと、呆気にとられているゼブロに、くすりとが笑った。











あとがき

H×H第四十一話終了です。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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