と別れたゴン達は、ホテルのロビーへと足を進めていた。
「ククルーマウンテンか。聞いたことがねーな。さっきに場所聞いておけばよかったぜ。クラピカ、どこにあるか分かるか?」
「......」
「...?おい、クラピカ」
何かを考え込み反応を返さないクラピカに、レオリオはもう一度声をかけた。
「ん?ああ、何だ?」
「山だよ。あいつが言ったククルーマウンテン!場所に心当たりはないか?」
「...いや、分からない。だが、調べれば分かるだろう。あとでめくってみよう」
「うむ」
「?(めくる?)」
クラピカ言っためくるという言葉に、ゴンが内心首を傾げる。
「よぉ」
そこへ最終試験でゴンと対戦したハンゾーが気さくに寄ってきた。
「俺は国に帰る。長いようで短い間だったが楽しかったぜ。もし俺の国に来ることがあったら言ってくれ。観光スポットに案内するぜ。あ、一緒にいた試験官の分も渡しとく」
3人が受け取った名刺には『雲隠流上忍 半蔵』と、忍にしては自己主張が強いのではないかと思うほど大きな字で書いてあった。
ハンゾーがその場を立ち去ってからすぐ、キルアに不戦勝したポックルがクラピカに声をかけてきた。
「さっきは感情的になってしまいすまなかった」
「いや。私の方こそ非礼をわびよう」
「いや、あんたが正しいからこそ俺もムキになったんだ。まさかあんな不完全なカタチで合格するとは思ってもみなかったからな。そのわだかまりをあの場でぶちまけたかったんだと思う」
「......」
「だがもう吹っ切れた。せっかく受かったからには最大限に利用する。問題はこれから何を成すかだからな」
そういうポックルの顔には、確かに不満もわだかまりもなくなっていた。
「俺はこれから世界を回って様々な未確認生物を見つけ出す。いわゆる幻獣ハンターってやつだ。何か知りたい情報があったら一緒に探してやるぜ。どうだい?」
「うん!」
ゴンは笑顔で頷いた。
「ジンって名前のハンターのこと知りたいんだ。どんなウワサでも良い」
「ジン...か。写真とかあるかい?」
「うん」
差し出された写真を小型パソコンで読み込むと、ポックルは残りの2人へと顔を向けた。
「あんた達はあるかい?」
「いや、特にない」
「...」
そう言ったクラピカに、レオリオはなぜ『緋の目』のことを頼まないのか不思議に思いながらも口には出さなかった。
「そうか。ま、何かあったらここに連絡をくれ。ホームコードだからそのつもりで」
「?」
「そうか。これは私のホームコードだ」
「これが俺の」
「?」
それぞれ名刺に書かれたホームコードを交換しているが、ゴンはそれが何なのか分からず不思議そうにそのやり取りを見ている。
「ゴンも教えてくれよ。でないと連絡が出来ない」
「いや、あの、ホームコードって何?」
そう聞いたゴンに、3人はそろって目を丸くしてまじまじと見た。
「そっか。こいつハンターの仕事も知らないで試験に来たんだった」
「ホームコードって言うのはいわば留守番専用の電話だよ。ハンターって言うのはだいたいが四六時中世界を飛び回っている商売だからな。情報収集のためにメッセージ専用の電話がどうしても必要になるんだ。世界のどこにいても携帯電話でその中から重要な情報を聞き出して行動できるようにするわけさ」
「もちろん盗聴を考えて重要な情報は直接吹き込んじゃダメだ。あらかじめ暗号を決めて情報交換は出来れば直に合って行うのがいい」
「さっき『めくる』って言ってたのは?」
「ああ、それは電脳ページのことだ」
「これは簡単にいえば電信の万能辞典というところか。自分専用の電話回線と登録ナンバーコードを買って入力すれば、世界中どこのパソコンからでも知りたい情報を取り出せるシステムだ。もちろん表層的な情報が大部分だし、デマも多いが、『事典より詳しく知りたい』ぐらいの内容はすべてここで知ることができる」
「この電脳ページで何かを調べることを俗に『めくる』って言うんだ。これがその登録カード」
「ふーん。そうか」
「あと、ウソかホントか知らんが、『イレブン』なら電脳ページの全ての内容を真偽を含めて知ってるなんて言われてるぜ」
「『イレブン』ってのことだよね?」
「ああ。あながちウソだと言いきれねんだよな」
「確かに」
「っと話はずれたが、ホームコードとケータイ電話と電脳コード。こいつはハンターの電波系三種の
神器
(
じんぎ
)
だぜ。ゴンもそろえといた方がいいぜ」
「え〜と...」
「あっ!そーだ。ハンターカ−ドでもめくれるんだった」
「あ、そう言ってたな」
「え!?本当!?」
話を聞き流していたゴンが驚きの声を上げる。
そんなゴンに、クラピカは自分のハンター証を出して説明する。
「しかもハンターカードなら無料で電脳ページを使用できる。さっそく使ってみるか?」
「う、う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん...やめとく!まだ使わないって決めたし」
使いたくてうずうずしながらもそういうゴンに、クラピカとレオリオがそろって苦笑する。
「ホントに強情なやっちゃな」
「まあ、いい。私のカードを使おう」
「ま、それじゃホームコードができたら連絡くれよ」
「うん。ありがとう」
ポックルはホームコードを渡すと、軽く挨拶を交わして歩いて行った。
「よし、俺らも行くか」
「あ、ちょっと待って」
第四十話 『極秘指定人物』
ゴンは建物の奥の方へと歩いていく試験官たちに気づくと、声をかけながら近寄って行った。
「サトツさーん」
声をかけられたサトツは足を止めて振り返った。
「これ何なのかな?」
「ん?」
ゴンはポケットから依然カイトが落して行ったカードを取り出て見せた。
「知り合いの落とし物なんだ。俺今までこれがハンター証だと思ってたんだけど」
「ほう」
手に取って見たサトツは感嘆の声を漏らす。
「素晴らしい。これは
二ツ星
(
ダブル
)
ハンター認定カードですよ。ふむ...本物っぽい...!!」
くるりと裏返して見たサトツの表情が一瞬驚愕へと変わる。
「ゴン君...これを落としたという知り合いとは...?」
「カイトって言う人だけど...何?」
「このカードの本当の持ち主はジンというハンターですよ」
「!!」
「ここに認定ナンバーがあるでしょう。君のハンターカードにも入ってます」
そう言われたゴンは自分のハンター証の裏を見た。
「その下3桁が第何期のハンター試験の合格者かを示すものです。ちなみに今年は第287期生になります。
で、この番号、267期の合格者はたった1人だけ。それがジンというハンターなのです」
「もう少し教えてくれる?その...ジンって人のこと」
「ええ、いいですが...実は先ほど話たルルカ遺跡の発掘者がジン、その人なのです。それで彼のことを調べて見たのですが、一言で言うなら『ナゾ』です。彼自身のことはほとんど分かりませんでした。電脳ページって分かりますか?」
「あ、ははは、もちろん!!」
さすがにさっきまで知りませんでしたとも言えず、笑って誤魔化しながら答えた。
「それをめくれば彼がどんな人か分かりますよ」
「うん。やってみる」
「ああ、それともうひとつ」
「何?」
「あくまで噂ですが、彼は『イレブン』の身内だという話です」
「それホント!?」
「ええ、噂ですが...本人に聞いて言ってくれるかは分りませんが聞いてみてはいかがでしょう?」
「うん」
頷いたあと、ゴンはジンの認定カードをじっと見つめた。
「ゴン君、もしよろしければそのカイトという人の連絡先を教えてもらえませんか?」
「あ...実は
というわけで恩人ではあるんだけど、ホームコード知らないんだ」
「なるほど」
ゴンがカイトに会った経緯を放すと、サトツは納得して頷いた。
「もし会ったら聞いておくよ」
「お願いします」
「いろいろありがとう、サトツさん」
「いえ。あ、ゴン君」
「?」
「いや...体に気をつけて」
「うん!!じゃあね」
待たせていた2人の所へ戻って行ったゴンを見ながら、サトツは後ろで聞いていたメンチとブハラに言った。
「...不思議なコですね。どうも肩を持ちたくなってしまいますよ」
「んふふ。今サトツさんやばかったでしょ」
「ええ。うっかり喋ってしまうところでした。ハンター試験がまだ終わっていないことを」
「まあ、そのあたりは『イレブン』が何とかするでしょ。あの子のこと気に入ってるみたいだし」
「そうですね」
そんな試験官たちのやり取りは知らず、3人はロビーの近くにあるパソコンスペースへと移動した。
その中の1台に座ると、クラピカのハンター証を使って電脳ページを開く。
「まずはククルーマウンテンを調べてみよう」
ククルーマウンテンと入力するとすぐにその情報が表示される。
ククルーマウンテン
パドキア共和国デントラ地区にある標高3722メートルの山
「パドキア...知らねーな。どこの国だ?」
「世界地図で確認しよう。現在地と目的地...ここだ」
世界地図に現在地とパドキア共和国の位置が印付きで表示された。
更に詳細を知るために、クラピカは電脳ページをめくる。
「パドキア共和国...大丈夫。一般観光客でも行ける国だ。飛行船で3日というところだな。出発はいつにする?」
「「今日のうち!!」」
「了解。チケットを予約する」
「クラピカ、次はハンターのページでジンってとこ、めくってみてくれる?」
「分かった。ハンター...の人名リストで、入力」
共通語とその人の母国で使われる文字、両方が記された名前がいくつか表示される。
「ジン...何人かいるぞ。ファミリーネームは?」
「フリークスだよ。ジン=フリークス」
「これだな。めくるぞ」
めくったとたん、パソコンからは警告音が流れ出した。
「!!ダメだ」
「?」
画面には大きく書かれた『?』と『極秘指定人物』の文字。
「どういうことだ。こいつは?」
「電脳ページ上での彼に対するあらゆる情報交換が禁止されているんだ。電脳ネットワークの極秘会員に登録してるんだろう。ちなみに、個人がこれに加入するためには、一国の大統領クラスの
権力
(
パワー
)
と莫大な金が必要だ」
「......」
「ゴン、お前の親父は予想以上にとんでもねー人物みたいだな」
「うん」
サトツが電脳ページをめくればどんな人物か分かると言った言葉を実感しながら、ゴンは頷いた。
「『極秘指定人物』?チケットを予約してたんじゃないんですか?」
「「「!?」」」
「はい?どうかしましたか?」
気配も音もなく現れたに3人が驚くが、にとってはいつも通りのことなので何に驚いているのか分からなかった。
「あ、そうだ。サトツさんが言ってたんだけど、親父がの知り合いってホント?」
「ええ、知り合いですよ」
「なっ!?マジかよ!?」
「本当ですよ。知り合ったのはジン君が新人ハンターになってからですけどね」
「最初に親父の話が出たとき知らないって言ってたのは何で?」
「まさか人が大勢いるところで『極秘指定人物』の話は出来ないでしょう。これジン君のをめくったんですよね?」
「うん」
「ついでに言っておきますと、ジン君の友人のほとんどがこれに入ってます。だからジン君の友人たちを回って居場所を突き止めるのも大変ですよ」
「にもゴンの父親の居場所は分からないのか?」
「知っていますが、教えられません。そういう約束ですから」
「別にいいよ。自分で探すから...でも親父の話は聞きたいんだけど、ダメかな?」
そういったゴンをは微笑ましく思いながら笑顔を向ける。
「もちろん構いませんよ。輝かしいハンター記録から、ちょっとマヌケでおかしなことまで、いろいろ話してあげますよ」
「ありがとう!」
「輝かしいハンター記録はともかく、マヌケな話って普通聞きたいもんか?」
「...ゴンとだからな」
「そうだな」
笑顔で話すと、目を輝かせて聞くゴンを、2人は疲れたようにため息をついて見ていた。
あとがき
H×H第四十話終了です。
次からゾル家へGOですよ!!
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