さて、以上で説明を終わります。あとはあなた方次第です。試練を乗り越えて、自身の力を信じて、夢に向かって前進してください。ここにいる8名を新しくハンターとして認定いたします!

マーメンがそう言ってすぐ、ゴンは席を立ちイルミの元へと向かった。

「ギタラクル、キルアの行った場所を教えてもらう」

イルミはそう言ったゴンを無表情に見下ろしたあと口を開いた。

「やめた方がいいと思うよ」

「誰がやめるもんか!」

ベッと舌を出すゴンを見たは口元をほころばせた。

「キルアは俺の友達だ!!絶対に連れ戻す!!」

「...後ろの2人も同じかい?」

「当然よ」

いつの間にか後ろにいたレオリオとクラピカに気づいたゴンは、目を丸くして2人の顔を交互に見る。

は?」

「先程ご招待を受けたばかりですよ」

にっこりと笑って言ったの言葉に、イルミは気付かれないほど小さなため息をついた。

そして再びゴンへと視線を向けて言った。

「...いいだろう。(も門を自力で開けれない人間を家に案内したりしないだろうし)教えたところでどうせたどり着けないだろうし。キルは自宅に戻っているはずだ。そうでしょ?」

「ええ、1度(・・)家に帰ると言っていましたよ」

「...ククルーマウンテン。その頂上に俺たち一族の()()がある」

イルミはの言葉に引っかかるものを感じながらも、それを表には出さずに無表情で言った。

はその様子を何が面白いのかにこにこと笑いながら眺めていた。










   第三十九話      ハンター試験終了










「さて、これでもうこの建物を一歩出たら諸君らはワシらと同じ!ハンターとして仲間でもあるが商売敵でもあるわけじゃ。ともあれ、次に会うまで諸君らの息災を祈るとしよう。では解散!!」

その場にいた受験生...今年のハンター試験合格者とが全員部屋の外へ出ると、ドアはやや大きな音を立てて閉ざされた。

「ゴン君、レオ君、クラ君、先にチケットとっておいてもらえますか?」

「え?なんで?一緒に行かないの?」

イルミやヒソカと反対方向へ足を進めていた3人にそう言うと、そろって不思議そうな顔をされた。

「試験が終わったら試合ましょうねって約束したんですよ。ヒソカ君と」

「ええっ!?」

「何っ!?」

「マジかよ!?」

「本当ですよ。試験中に何度も暴れ回られたら困ってしまいますから、試験後にと言ってあったんですよ」

何でもないことのように話すを、3人は心配そうに見ている。

「大丈夫なの?」

「確かに試験官として円滑に進めたいというのは分かるが、あのヒソカにそんな約束をするのは...」

「そんな約束すっぽかしちまえよ!」

「約束は約束です。それになにも今すぐ戦うわけではありませんよ。試合の場所と日時の確認だけですし」

の安否を心配している3人の気持ちはうまく伝わらずに、微妙な返事が返された。

「いや、心配してるのはそう言うことではなくてだな...」

「?、まあ、大丈夫ですよ。ヒソカ君はちょっと物騒ですけど、いい子ですし」

『いい子』と言い切ったに、思わずレオリオとクラピカが顔をひきつらせ、ゴンが信じられないと目を丸くした。

はそんな3人に苦笑しながら、「またあとで」と言葉を残し、背を向けて歩き出した。

3人はそれに顔を見合わせたあと、を気にしながら、とりあえずキルアの行き先を調べるためにと反対方向へと足を進めた。

「やあ♥」

「ヒソカ君、合格おめでとうございます」

「ありがと♣」

「イル君もおめでとうございます」

「ありがとう」

ニィっと笑みを浮かべるヒソカと無表情なイルミにお祝いの言葉をかけた後、は腫れあがったイルミの右腕に目を向けた。

「折れてますね」

「折れてるよ」

「じゃあ治しましょうか」

「...もしかしてアレ?」

「もしかしなくてもアレです」

それはもう素晴らしい笑顔で言ったの言葉に、イルミは隠すことなく深いため息をついた。

「アレ?」

「私のではありませんけど、念能力です」

「いいのかい?こんなところで言って 」

「大丈夫なんじゃない。のことだから簡易消音装置でも使ってるよ」

「正解です。よくできました」

にっこりと笑って頭をなでてくるに、イルミは再びため息をついた。

「それじゃあ、いつまでも喋ってないで作りましょうか」

「作る?」

「見てれば分かるよ」

「準備する物は200ml(ミリリットル)のビーカーひとつ、薬品A、薬品C、薬品D、薬品G、薬品Y」

がそう言うと、オーラがビーカーと赤、緑、紫、黄色、黄土色の液体が入った5つの試験管に変わった。

その様子をヒソカは面白そうに、イルミは無表情だがやや嫌そうに見ている。

「まず薬品A20mlと薬品Y80mlをビーカーに入れ、よくかきまぜて色が変わったら」

そう言いながらかきまぜると、液体の色が変わった。真っ青に。

「...普通、赤と黄土色を混ぜると青になったかい?」

「まさか」

ヒソカの珍しく常識的な言葉に、イルミはため息とともに答えた。

「薬品D10ml入れて一度爆発させたあと『ボン』...薬品C5mlを静かに流しいれて2層にした後、薬品G35mlを勢いよく(・・・・)入れれば...完成です!」

の目の前にはビーカーには蛍光ピンクの薬がぼこぼこと泡を立て、オレンジの煙が噴き出している。

「これはこれは♦」

「これ、一気に飲まないと効果ないんだよね」

「僕が飲むんじゃなくてよかったよ♠」

さすがにヒソカもこの薬は飲みたくないらしい。

「でも、見た目が悪いから味はマトモなんですよ」

「『見た目が悪いから』?『見た目は悪いけど』じゃないのかい?」

「『見た目が悪いから』でいいんですよ。見た目がいいのは...ねぇ?」

「思い出させないでよ」

「すみません。じゃあ、覚悟が決まったら一気にどうぞ」

手渡されたビーカーを受け取ると、イルミは即座に喉に流し込んだ。

「嫌がってた割にあっさりと飲んだね♣」

「...いつまでもこれ持っていたいと思う?」

「なるほど♥」

イルミが飲み終わった後話している間に、ビーカーはなくなり、怪我していた腕も元通りになっていた。

「へぇ もう治ったんだ♠」

「相変わらず、効き目だけはいいよね」

「ケガ限定ですけどね。さてイル君の用事が終わったので、次はヒソカ君の用事を終わらせましょう」

「肩の傷ならもう治ってるよ♦」

「いえ、肩の傷ではなくて、『遊びたいなら試験の後に天空闘技場に行ってあげるからそれまで我慢しなさい』って言ったでしょう?」

「そういえば言ってたね それじゃあ戦ってくれるのかな?」

「ええ。試合の日を相談しておこうかと思いまして」

「できれば早い方がいいんだけどな♥」

「う〜ん...最短で1か月後でしょうね。何せイル君のお家に行きますし

「また連続着せ替え時間更新かもね。この前は2週間だっけ?」

「正確には2週間と18時間ですね」

はどこか遠くを見ながら疲れたような笑みを浮かべた。

「でも今度は今まで以上にすごいかもね。どうせのことだからキルに余計な入れ知恵したでしょ」

「...1か月で済んでくれたらいいなぁ」

そう言ったの顔は非常に切なげだった。










あとがき

H×H第三十九話終了です。
あと1話でゾル家に行ける!


補足説明です(一部ネタばれをふくむので、お気を付けください。)。

イルミの骨折を治した『念で出来た薬』は、夢主の友人である三つ子の医者のひとりの『内科担当』の能力です。
飲ませる相手の目の前で、『勘』を頼りに調合しなければなりません。
ただし、必ず何らかの良い効果が表れます。

注意すべきことは、見た目と味が反比例していることです。
見た目が最悪でも味はマトモです。
見た目がマシだと、特に無色透明だと...表現できないほど壮絶な味です。
それを一気に飲まなければならないので、精神的疲労はたまるかもしれません。

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