『ただ今をもちまして、4次試験は終了となります!受験生の皆さん、すみやかにスタート地点へお戻りください!』

は島へ向けて流されたアナウンスを聞くと、釣竿を消して立ち上がった。

4次試験はというと、はっきり言ってほとんど何もなかった。

を狙うものといえば、自分のプレートを奪われた者しか来ないのだから、当たり前だ。

しかも、その者たちの服を釣り針に引っ掛けて海に放り込んだのだから、結局誰もふれることさえかなわなかった。

その上、ゴンたちに手を貸すこともできないとあっては、釣りをしているくらいしかできない。

もちろんゴンたちの(一応受験生全員の様子は見ていたが)、様子が危険な常態になったときはあせったし、駆けつけることができなかったのは歯痒かったが。

『これより1時間を帰還猶予時間とさせていただきます!それまでに戻らない方は全て不合格とみなしますので御注意下さい!!なお、スタート地点へ到着した後の...』

はアナウンスを聞きながらスターと地点へと足を進めた。

程なくしてスタート地点へたどり着くと、そこにはすでに見覚えのあるものたちの姿があった。

「「!」」

「何だ。結局最初の格好に戻ったのか」

「ええ、こっちのほうが動きやすいですからね」

「確かにあの格好は試験に向かないな」

そこで、何故あんなドレスを着ていたのかは聞かないでいてくれるらしい。

「はい。何はともあれ、皆さん無事で何よりです...というわけではなさそうですね。ゴン君とレオ君、もしかして蛇に噛まれましたか?」

実際に見ていたことなど微塵も感じさせずに言うと、レオリオが頷きながら言った。

「ああ、ゴンのおかげで無事だけどな」

「解毒薬をうったからもう平気だよ」

「かなり危なかったがな」

「まあ、無事というなら...キル君はケガはありませんか?」

「ない。相手もかなり弱かったし」

「それは何よりです」

は大丈夫だったのか?かなりの人数に狙われたのではないか?」

「それほどでもありませんでしたよ。たいていの方は自分の獲物の方に行ったようでしたし、プレートを奪われた後で向かってきた人たちも怪我をしていたりしましたから」

「そうか」

にっこりと笑って答えると、4人とも納得したように頷いた。

が海へと眼を移すと、ハンター協会の飛行船が低い音をたてながら島へと近づいてきているのが見えた。

あの中にネテロが乗っていることを知っているは、最終試験がものすごく捻くれたものでないといいなと他人事(ひとごと)のように思った。









  第三十五話   新人(ルーキー)










はなぜか分からないが、ネテロ達のいる部屋に呼び出され、ともに食事を取っていた。

「9人中6人が新人(ルーキー)か。ほっほっほ、豊作、豊作」

「9人ということは、私は最終試験に出なくてもいいんですね」

「うむ。ハンター証の二重取得はできんからの」

「それは何よりです。さすがにもう持ってるのに受験生達を蹴り落とすのは心が痛みますから」

けろりとした顔で言ってもあまり信憑性はない。

その証拠に、ネテロがとても楽しそうに笑っている。

「でも新人がほとんどって、たまにあることなんですか?」

「うむ。たいがい前ぶれがあってな、10年くらい新人の合格者が一人も出ないときが続く、そして突然わっと有望な若者が集まりよる。わしが会長になってこれが4度目かのー」

「へぇー」

「1度目はの試験のときだったかの。あれが1番珍しかったぞ」

「まあ、最終試験に残った4人全員が新人で、全員合格でしたからね。確かに珍しいかもしれませんね」

にこやかに話す2人の会話を聞いて、メンチがマーメンに小声で話しかけた。

「会長って歳いくつなの?」

「20年位前から約100歳とか言ってますけど」

そんな内容を聞いていながら、ネテロの年齢を知ってるは2人の会話に口をはさまなかった。

「ところで、最終試験はいったい何をするのでしょう?」

「あ、そうそう。まだ僕らも聞いてないね」

「新人の豊作の年かどうかは、まだ最終試験次第だもんね」

「うむ。それだがな、一風変わった決闘をしてもらうつもりじゃ」

「「?」」

「......」

「そのための準備として、まず9人それぞれと話がしたいのォ」

「...あまりいじめないであげてくださいね」

「ほっほっほ」

の言葉にただ笑って返すネテロに、は困ったような顔で笑った。



『え    これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までお越しください。受験番号44番の方、44番の方お越しください』

「面談...?」

「何を聞かれるんでしょうね」

「「っ!!!?」」

いつの間にか近くに来ていたに、ゴンとクラピカが驚きの声を上げる。

、いつからいたの?」

「今通りかかったんですよ。一緒に食事でもとろうかと思って探してたら、ちょうどアナウンスが流れてきたんです」

「だが、これから面談なら、食事は後のほうがいいだろうな」

「そうですね。あ、キル君とレオ君がどこにいるか分かりますか?」

「ううん。分からないや」

「私もどこにいるかは知らないな」

「それなら一緒に探そうよ!」

「ありがとうございます」

ゴンの目が少し赤くなっていることも分かったし、またその理由も話を聞いていたわけではないが予想はできた。

どうやらクラピカと話していて吹っ切れたのだろう。

は話を蒸し返すようなことはせず、ただいつものように2人に接する。

ゴンもそれに当たり前のように普通に接していることに、クラピカは安堵しながら2人と共に歩き出した。

がゴンたちと話をしている頃、ネテロは畳の上に敷かれた座布団の上に座りヒソカと対峙していた。

「まあ、座りなされ」

「まさかこれが最終試験かい?」

「まったく関係ないとは言わんが、まあ参考までにちょいと質問する程度のことじゃよ。まず、何故ハンターになりたいのかな?」

「別になりたくはないけど、資格を持ってるといろいろ便利だから♥たとえば人を殺しても、免責になる場合が多いしね♠」

「なるほど。では、おぬし以外の9人の中で1番注目しているのは?」

ネテロの言葉を聞いたヒソカは少し間を置いた後言った。

「99番♥405番と406番も捨てがたいけど1番は彼だね♣いつか手合わせ願いたいなァ♦(は手合わせしてくれる約束だしね♠)くっくっく♥」

「ふむ...では最後の質問じゃ。9人の中で1番戦いたくないのは?」

「それは405番...だね♣99番もそうだが...今はまだ戦いたくない...という意味では405番が1番かな♦」

そう言ったヒソカの顔に禍々しい笑みが浮かぶ。

「ちなみに、今1番戦ってみたいのはあんたなんだけどね♠」

「うむ。ご苦労じゃった。下がってよいぞ」

「.........」

ヒソカの言葉や態度などまるで気にするでもなく隙だらけな様子に、ヒソカは毒気を抜かれたのか何もすることなく部屋を出ていった。

ヒソカのあとも受験生たちが同じ質問に答えていく。

53番、ポックル。

「注目しているのは404番と406番だな。見る限り1番バランスがいい。44番とは戦いたくないな。正直、戦闘ではかなわないだろう」

99番、キルア。

「ゴンだね。あ、405番のさ。同い年だし。53番かな。戦ってもあんまし面白そうじゃないし」

191番、ボドロ。

「44番だな。いやでも目に付く。405番と99番、406番だ。子供と戦うなど考えられぬし、実際には女かも知れぬものとも同様だ」

294番、ハンゾー。

「44番だな。こいつがとにかく1番ヤバイしな。あ、違う意味でなら406番だ。あの変装は俺でも見破れねえ。もちろん44番だ」

301番、ギタラクル。

「99、406番。44番」

403番、レオリオ。

「405番と406番だな。恩もあるし、合格してほしいと思うぜ。そんなわけでその2人とは戦いたくねーな」

404番、クラピカ。

「いい意味で405番と406番。悪い意味で44番。理由があれば誰とでも戦うし、なければ誰とも争いたくはない」

405番、ゴン。

「44番のヒソカが1番気になってる。色々あって。う〜ん、99・403・404・406番の4人は選べないや」

そしてが最後に呼び出された。

「して、おぬしが1番注目しておるのは誰じゃ?」

「私にも聞くんですか?」

は考えてもみなかったと驚いたような顔でネテロを見た。

「各々についておった試験官からも話を聞いておるからの」

「分かりました。そうですね...やはり今年は新人たちに注目がいきますね。私が一緒に行動していなかった子、294番も、身体能力はなかなかだと思います。それと新人ではありませんが、ヒソカ君も去年試験官を半殺しにしていなければ、合格できたでしょうから、今年は問題なく済めば合格できると思います」

「ふむ。問題なく済むかのう?」

「それは...微妙なところですね。試験の内容にもよるでしょうけど、今年はシルバさんたちの長男と家出中の3男が来てますし」

「何かあったときの対処は任せるぞ」

「ええ、一応そういうことで請けた仕事ですから」

「では、おぬしが1番戦いたくないと思う相手は?」

「...何故ですか?私は戦う必要はないのでしょう?」

「まあ、参考のためじゃ」

「......では、友人たちと友人の息子たちです」

「ふむ。そうか」

あいまいな答えだったが、ネテロはそれで納得したようだ。

「これから何か予定ははいっとるか?」

「みんなと食事を取る予定です」

「さっきわしらと一緒に食ってなかったか?」

「食事はおなかを満たすためだけのものではないでしょう」

そう言って立ち上がったは、ネテロに笑顔を向けてから去っていった。

「...やはりは一番上にするか?」

ネテロがポツリとつぶやいた言葉をが聞いていたら、意味は分からなくとも詰め寄ったに違いない。

ある意味が自ら不幸を招いたともいえるが。









あとがき

H×H第三十五話終了です。
人の悪さでは、まだネテロさんに及びません。
あと500年も過ごせば同じくらいにはなるかしら?

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