ケケケケケケケケ 『ざくっ』 ギャッ!!
「...............」
キキッ...キキキッ 『サクッ』 キュィッ!
「...............◆」
キィイイイッ!!! 『ばきっ』 ギャンッ!!!
「...............」
がさがさがさがさ... 『サクッ』 ドサッ...
「.........不機嫌だね♥」
「あなたは楽しそうですね」
二次試験会場へと向かう3人(意識があるのは2人)は、ここまで会話もすることなく黙々と歩き続け、時折襲ってくる湿原の生き物達を排除していく。
レオリオと一緒にを引っ張ってきたヒソカはとても楽しそうな笑みを浮かべ、それとは反対にの顔は一切の感情が表れていない。
は再び襲ってきた動物を片付けた後、を見て楽しそうに笑っているヒソカを見上げた。
「...それで?」
「ん?何が?」
「...何故私まで連れてきたんですか?気絶したレオ君...レオリオ君を運ぶという目的だけなら、私を連れてくる必要はありませんよね?」
「ボクが彼を殺すとは思わなかったのかい?」
「あなたはレオリオ君を合格と言いました。あなたが見込みのある相手を生かす性質なのは、天空闘技場でも知られていますから...」
「良く知ってるね♣」
「...それで?理由は何ですか?」
楽しそうに話すヒソカに多少疲れを感じながら再度質問すると、ヒソカはとても楽しそうに唇を吊り上げた。
「.........」
「イルミ=ゾルディック◆」
「.........」
「彼の声を聞き分けて、面白い呼び方をする君に興味があってねv」
「......つまり、私の自業自得な訳ですか...」
「ボクは思わぬ拾い物だったけどね♥」
そう言って笑うヒソカに、は深いため息をつきながら顔をそらした。
濃い霧の中2人か足を進めること10数分、は後100mほどのところに番号札の反応が大量にする場所があることに気づいた。
(もうすぐ二次試験会場ですね...って、あれ?ひとつだけ離れた反応?...301番って確か)
「イル君?」
「うん。久しぶり」
霧の中に見えた人影に声をかけると、イルミはゆっくりとの方へ歩いてきた。
「久しぶりですね...相変わらず痛々しい変装ですね」
「うん、結構ツライけどキルがいるから」
「2人とも僕を忘れないで欲しいな♣」
「「あぁ、そう言えば...」」
「くっくっくっ、ひどいなぁ」
「そう言えば、あなた達は知り合いなんですか?」
「うん」「友達だよ♠」
「「.........」」
楽しそうに答えるヒソカにはきょとんとした顔で2人を交互に見やり、イルミは無表情にヒソカに目を向けた。
「...友達?」
「そう、友達♥」
「、違「イル君、お友達が出来たんですね!!」...?」
イルミの言葉を遮って喜色を含んだ声で話すに2人の視線が集中する。
「年齢や実力が離れた相手とばかり会っていたせいで、全然友人を作ろうとしなかったイル君にお友達が出来たんですね!」
「......ねぇ」
「仕事ばかりで趣味さえなかったイル君の友人になって下さるなんてっ!ヒソカ君は少し乱暴ですけど、とってもいい子だったんですね!」
「「...いい子?」」
「イル君の初めてのお友達...やっぱりお祝いしなくちゃいけませんよね?何か欲しいものありますか?」
「...、違うから」
「え?」
「ただの知り合い」
「.........え?」
喜びにあふれた表情が次第に曇っていく様子を見て、イルミが内心『を泣かせたら母さんに怒られるかな?』と思っていると、その様子を見ていたヒソカが笑い声を漏らす。
「うん、ボクの片思い◆」
「...ヒソカ」
「ウソは言ってないよ」
「...ヒソカ君はイル君を友人だと思ってくれてるんですね?」
「そうだよ♥」
「ありがとうございます」
はふわっと慈愛に満ちた微笑を浮かべると、ヒソカに柔らかな声で感謝の言葉をつむいだ。
その微笑を見たヒソカは楽しげな笑みを浮かべ、イルミは無表情にため息をついた。
第二十七話 ヒソカの分類は?
その後ゴンたちが近づいていることに気付いたが2人を促して二次試験を待つ人たちの中に紛れ込むと、ヒソカは木の根元にレオリオを置いて去っていった。
はヒソカにレオリオを運んでくれた礼を言うと、レオリオの治療をするために自分の鞄を開けごそごそと必要なものを探し出した。
が消毒液や傷薬を取り出すと、まだ焦点のあっていないレオリオと目があった。
「レオ君、大丈夫ですか?」
「......?」
「ええ、今手当てしますから...沁みるでしょうけど我慢して下さいね?」
「ああ...って!イッテェッ!!」
「男の子なんだから我慢、我慢」
「男の子って...」
「腕の傷も消毒しますからネクタイ取りますよ」
「ん...」
「レオリオ!!!!」
が腕に巻かれたネクタイを取って消毒していると、無事に試験会場にたどり着いたゴンとクラピカが2人のところへ走ってきた。
走ってきた2人ににっこりと笑みを向けると、は消毒した傷口に薬を塗り、ガーゼを当て包帯を巻いていく。
クラピカはの隣にしゃがみこむと、治療している傷口を覗き込んだ。
「うむ、腕のキズ以外は無事のようだな」
「...クラ君?」
「てめ...よく顔を見ろ、顔を」
「いつから気付いてたの?」
「あ?ああ、ついさっきな...しかし、何でオレこんなケガしてんだ?どーも湿原に入った後の記憶がはっきりしなくてよ」
「「「.........」」」
レオリオの言葉に3人はしばし固まり、こそこそと顔を近づける。
「言わないほうが...良いな」
「うん」
「とりあえず誤魔化しておきましょうか?」
「どうやって?」
「レオ君、かなり強く頭を打ってたから混乱してるんですね...覚えて無いかもしれませんけどレオ君の近くにいた人達がジライタケの群生地に突っ込んでいったせいで、吹き飛ばされた人にぶつかったり武器が飛んできたりして混乱状態になったんですよ。そのとき二人と別れてしまったので、近くにいた私がレオ君を引きずってきたんですけど足は大丈夫ですか?(息継ぎなし)」
「お...おう、そうだったのか。すまねぇ」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ」
「「.........」」
淀みなく言われた理由にあっさり納得したレオリオに、ゴンとクラピカは複雑な気持ちになりながら話題を逸らした。
「ところで何でみんな建物の外にいるのかな?」
「中に入れないんだよ」
「キルア!」「キル君」
「よ、どんなマジック使ったんだ?は分かるけど、ゴンは絶対もう戻ってこれないと思ったぜ」
「ええと...」
方法が分かっているは、話をしている2人の横で途中だった治療を再開した。
「香水の臭いをたどったーーーー!?」
「うん」
「お前...相当変わってるなー...犬だろホントは」
「そうかな?...で、なんで中に入れないの?」
「見ての通りさ」
キルアが指差した方に目をやると、建物の入り口の上に『本日正午 二次試験スタート』と書かれた看板がかかっていた。
「変なうなり声はするけど、ぜんぜん出てくる気配は無いし。まあ、待つしかないんだろうな」
(そうですよね...普通はうなり声にしか聞こえませんよねぇ...)
「もうすぐだね」
「うん」
周りの緊張感が高まっていく中、時計の針が12時を指し、建物の扉が静かに開かれていく。
「「「「「!」」」」」
受験生が注目する先に姿を現したのは、椅子に足を組んで座っている女性と、その後ろで大きな腹の音を響かせている巨漢の男性だった。
2人を見た瞬間、受験生達の雰囲気が一気に沈む。
「どお?お腹は大分すいてきた?」
「聞いての通り、もーペコペコだよ」
「そんなわけで二次試験は料理よ!!美食ハンターのあたし達二人を満足させる食事を用意してちょうだい」
「「「「「「!?料理!?」」」」」」
「まずはオレの指定する料理を作ってもらい」
「そこで合格したものだけが、あたしの指定する料理を作れるって訳よ。つまり、あたし達二人が『おいしい』と言えば晴れて二次試験合格!!試験はあたし達が満腹になった時点で終了よ」
試験官の言葉を聞いた受験生達は、どんな料理を作らせられるのか緊張しながら次の言葉を待った。
「オレのメニューは...豚の丸焼き!!オレの大好物」
再び受験生達の雰囲気が沈む中、は試験官の言葉に苦笑を漏らした。
(ここの豚ってグレイトスタンプですか...弱点があるとは言え、そこを攻撃するとなるとそれなりの技量は必要なんですけど...と言うか、焼くのが大変でしょうねぇ)
「森林公園に生息する豚なら種類は自由、それじゃ二次試験スタート!!」
は試験官の合図と共にさりげなくゴンたちから離れ、1人で豚を探し始めた。
程なくして見つけた群の1頭の頭に石を投げて仕留めたあと、混乱する群の中からすばやく運び出す。
(群を暴走させちゃいましたねぇ...まあ、あの群に当たった受験生は運がなかったと言うことで諦めてもらいましょう。さてと)
「『贋物の本物』object『アニー』ability『蒼炎』」
がそう呟いた瞬間、小さな青い炎が出現し、すっとグレイトスタンプの中に消えていった。
そこまで終わるとは後ろを振り向き、こちらをのぞいている2人に声をかけた。
「イル君、ヒソカ君、それも焼きましょうか?」
「うん、お願い」
「くっくっくっ、気づかれてるとは思わなかったな◇」
「はい、じゃあ焼きますね。ヒソカ君はどうしますか?」
「お願いするよ♣」
「分かりました」
は2人が仕留めた豚に近づき『蒼炎』を埋め込むと、の豚から肉の焼ける良い匂いが漂ってきた。
「へぇ、もう焼けたんだね♠」
「内側から焼いていく炎ですからね」
「そんなに簡単にばらしちゃって良いのかい?」
「ええ、死体...肉を内側から焼いていくと言う、戦闘に全く向かない能力ですから」
「、また使えない能力選んだの?」
「使えてるじゃないですか?料理とか証拠隠滅には便利ですよ」
「証拠隠滅って...」
呆れた声で話すイルミに、は物騒なことを笑顔で答えた。
「さっき『また』と言ってたけど、そんなに能力があるのかい?」
「オレが知ってるのだけでも10以上あるよ。全部戦闘向きじゃないけど」
「だって戦いになる前に逃げますから...あ、私の分が焼けましたね」
は焼きあがった豚を担ぎ上げると、先に行ってますねと手を振りながら去って行った。
がいなくなった場所では、ヒソカが楽しそうにクツクツと笑い声を上げていた。
「面白いコだね♥」
「...年上だよ」
「それはそれは◆」
二次試験会場には念で豚を焼いたより早い者がいるはずもなく、が二次試験前半の最初の通過者となった。
しばらくして他の受験生たちと共にイルミ、ヒソカが豚を持ってくると、豚の丸焼きが大量に試験官の前に積み上げられる。
「うひゃ〜」
「あらま、大量だこと。テスト生なめてたわ」
「いっただきま〜す!」
ガツガツ
「うん、おいしい!」
ムシャ ムシャ
「これもうまい!」
ボリボリ
「うんうん、イケる」
もぐもぐ
「これも美味」
「「「「「「............」」」」」」
「ゲ〜ップ!あ〜〜〜〜食った、食った。もーおなかいっぱい!」
ゴォオオオン!!!
「終ーーーーーーーーーーー了ォーーーーーーーーー!!」
(((((((豚の丸焼き71頭!!バケモンだ......!!))))))
試験官の食べる様子を呆然と見ていた受験生達の考えが一瞬にして一致した。
「やっぱりハンターってすごい人ばっかりなんだね」
「すごいっちゃすごいけど、ああはなりたくないけどな」
「そうですねぇ」
「あ、!」
「どこ行ってたんだ?気付いたらいなかったけど」
「ちょっと人波に押されてしまって...まあそのおかげで、すぐに豚を見つけることが出来たんですけどね」
「だから1番最初だったんだね!」
「相変わらず運のいいヤツだなぁ」
ゴンとキルアとのんびり話していると、辺りに響き渡る声で二次試験通過人数が告げられた。
「豚の丸焼き料理審査!!71名が通過!!」
ゴォォォォォン
(状況報告:二次試験前半通過人数71名、脱落者78名、脱落者合計335名、現在までトラブルなし)
あとがき
H×H第二十七話終了です。
主人公、ヒソカを『良い子』認定しちゃいました...
そんな予定じゃなかったのに...キャラが管理人を無視して独走してる状態です。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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