4人はお化け屋敷の中には言ってすぐ、あまりの光景に足を止めた。
「「「.........」」」
「...お化け屋敷のイメージが少し変わりましたね」
「これ見て少しかよ?」
「でも、薄暗くて、お化けとか、死体の模型とが置いてあるのは変わらないでしょう?」
「でも、その模型がこれじゃあねぇ...」
セシリアの言葉に、全員がもう1度周りを見回す。
「風船みたいな幽霊に、きぐるみのキャラみたいにデフォルメされた死体に...」
「顔のついてる花...しかもキャラクターっぽい笑顔...」
「そして、この気の抜ける内装と音楽は...ねぇ?」
3人が言ったように、そこはパステルカラーで統一されたメルヘンの国のような内装。
お化け屋敷では使わないような、明るく楽しげな音楽。
通路の横に咲いた色とりどりの花には、中心にかわいらしい顔が描かれている。
また、所々に置いてある死体の模型はかわいらしくデフォルメされ、きぐるみのようにモコモコだった。
そして、お化け屋敷のそこかしこで、ふわふわとただよう風船のような幽霊が赤、青、黄色と3色に点滅している。
「無駄にリアルな死体が無数に転がってるよりはマシだと思いますよ。腐臭や血臭もしませんし」
「...まあ、そうだな」
「お前って、かなり前向きだよな」
「ありがとうございます」
「(今のって褒めてたのかしら?)係員が言ったように説明の書かれた看板を探しましょうか?」
「そうだな。入り口のすぐ横って言ってたけど.........これかよ」
入り口のほうを振り返ったナハトが看板を見つけると、思わず疲れたため息をついた。
「この内装にはあってるから、いいんじゃないですか?ここで血文字風に書いてあっても引きますし」
「...これは引きはしないけど、脱力感は増すぞ」
「確かにそうよね」
「ここをさっさとクリアーすれば問題ないって。で、なんて書いてある?」
シルバの言葉に、たちは説明が気へと目を走らせる。
お化け屋敷へようこそーv
ここはボクたちのナワバリだからー、勝手に入ってこないでねーv
いちばん下のボタンを押さないと始まらないからー、安心して説明を読んでネー。
ボタンを押すとー、ボクたちは赤なら100℃、青なら−20℃、黄色なら100Vになるんだよー。
ここを出るためにすることはひとつだけー。
ボクたちが緑色になったときに捕まえればいいんだよーv
それじゃあ、がんばってねーv
「「「「.........」」」」
その説明を読んで4人はしばし沈黙した。
「この説明書きって、コーエンさんが考えたんでしょうか?」
「そうじゃねーの。なんか、あいつが目の前でしゃべってるような感覚になるし」
「ああ、無性に殴りたくなってくるな...」
「ナハト、気持ちはものすごく分かるけど、落ち着きなさい」
「つうか、『ボクたち』ってやっぱりあれだよな?」
「あれですねぇ」
4人はふよふよと漂っている風船のような幽霊を見た。
第十五話 二次試験 3
とシルバはそれらを凝で見る。
「なあ、あれって...(念じゃねぇよな?)」
「ただの機械のようですね」
「機械以外に何があるんだ?」
とシルバの会話に、首を傾げながらナハトがたずねる。
2人は内心あせりながらも、表面上は普通に対応する。
「ああいう生き物という可能性もあったでしょう?(念のことはまだ話せませんし)」
「可能性は少ないだろうけど、確かに無いとは言い切れないわね。でもどうして機械だって分かったの?」
「携帯についてるスキャン機能を使いました(凝でとは言えませんから)」
「お前の携帯はそんなのも付いてるのかよ(いいわけには便利だけど)」
「結構便利ですよ(いいわけに)」
の説明に納得した二人に、とシルバは気付かれないように目を合わせる。
(今度から気をつけないとだめですね)
(だな、こいつらに教えるわけにもいかないしな)
ナハトが押すぞというと、二人もそっちに目を向ける。
ナハトがボタンを押したが、周囲では特に変わった様子は見られない。
「押した瞬間に攻撃してくるのかと思ったけど、本当に色が変わるだけなんだな」
「そうですね。もっとも、触ったら『火傷』か『凍傷』か『感電』か、なんですけどね」
「俺は100Vくらいなら慣れてるから大丈夫だけど」
「お前のうちは、子供にそんなのを慣れさせんのか?」
「まあな。それより緑のはどこだよ?」
「あ、あそこに緑色のが......」
セシリアが指差した方に3人が目を向けるとすぐに、赤に変化した。
「すぐに色が変わるのね」
「見つけてから捕まえようとしても手遅れってことか」
「これだけいると、俺でも避けながら捕まえるのはギリギリだぜ」
「緑色になっているのは3秒ほどですね。ランダムではなく、規則性があるとは思いますけど」
シルバがのほうを向いて話しかける。
「それを見つけるのにどれ位かかる?」
「2分下さい。それだけあれば十分です」
の言葉に3人が頷く。
「それじゃあ、決まりだな」
「ええ、の言うとおりに動くからお願いね」
「ここに転がってる木の棒でいいだろ?」
「大丈夫だと思うわ」
「追い込む場所は、あそこだな。バラバラに別れといた方が良いだろ?」
「はい。では2分後に」
「「「OK」」」
「シルバさん、青を右へ2m『どかっ』ナハトさんは黄色を左へ1m『バシッ』セシリアさんは1mの範囲にいるのを全部どけてください『ダッダダダッダン』」
の指示通りに、3人は幽霊達を叩いて分散させていく。
お化け屋敷の中は、の声と3人が叩く音が響き渡る。
しばらくすると、3人の中心に1つだけ赤い幽霊が取り残される。
「それが変わります。...3、2、1、0」
が0(ゼロ)と言った瞬間に、色が緑へと変化する。
パシッ!
それを近くにいたセシリアがすばやく捕まえた。
「「大成功!」」
シルバとナハトがお互いに手をたたきあう。
3人が捕まえたのを見て、も小走りで近づいた。
セシリアも緑色の幽霊を抱えながら歩いてくる。
「捕まえたのは良いけど、これどうすればいいのかしら?」
「出るために捕まえるんだから、持ったまま出口の方に行けばいいじゃねーの?」
「多分そうだと思います。これの色はもう変化してませんけど、他のはまだ変化している上にトラップが発動中みたいです」
そう言うと、は近くにいた青い幽霊にペットボトルの水をかけた。
水はたちまち凍りつき、幽霊が赤になると溶け出した。
「出口まで俺らが近づいてくるやつをどけるから、お前それ抱えてろ」
「私より、が抱えてた方が良いんじゃない?」
「私が抱えると、前が見えづらくなるので...」
「ああ、そうね。分かったわ。それじゃあ、出口までお願いね」
「はい」
が頷いたとき、シルバが先ほどまで無かったものに気がついた。
「なあ、出口までの道がさっきまで無かった矢印で書いてあるぜ」
「これも緑色のを捕まえたからだろうな」
「たぶんな。それじゃあ行くか」
「「「そう(だな)(ね)(ですね)」」」
5分後、4人は無事にお化け屋敷を抜けた。
たちがレストハウスで時間をつぶしていると、すぐ近くのスピーカーから集合場所が知らされた。
放送にしたがって集合場所に行くと、すでに10人ほどが集まっていた。
たちが着いてからも、何人かが歩いて集まってくる。
たちが到着して10分ほど経ったころ、近くの建物の中からコーエンがのんびりと歩いてくる。
「これで二次試験はしゅーりょーだよー。今日の試験はこれまでだからー、この建物で休んでねー」
そう言ってコーエンは、受験者達の後ろにある建物を指差す。
「明日の試験は8時からー、あそこの黒い門のところからスタートだよー。それじゃー、お疲れサマー」
それだけ言うとコーエンは出てきた建物の中へ戻っていった。
受験者達も、指定された建物へゾロゾロと入っていく。
「あー疲れた。ゆっくり休みたいぜ」
「同感。あなた達はどうするの?」
「私はこの建物の構造を調べに行こうと思ってます」
「俺も、一緒に探検してくる」
「...元気だな、お前ら」
「若いからな。行こうぜ」
「はい」
駆けていく二人をため息と共に見送って、ナハトとセシリアは休める場所を探すために歩き出した。
廊下を歩いていたシルバは、にしか聞こえない位の声で話しかけた。
「気付いてるんだろ?」
「ええ、2人ですね。困ったことに、レイファさんの下僕さんたちですね」
「全然困ってるように見えねーって。で、どうする?」
「そうですね...ここまで残っている下僕さんは10人中あの2人だけなので、ここで片付けておけば残りはレイファさんだけですよ」
「あのおばさんも一緒にサクッと殺った方が楽なんだけどな」
シルバの言葉にが苦笑する。
「まあ、今は休憩中ですし、わざわざ自分から動くこともありませんって」
「別にいいけどな。俺とで1人ずつ殺るか?」
「そうすると、後片付けが面倒ですよ」
「あ、そうか。眠らすくらいにした方が良いか?でも、そうすると3次試験からもうろうろしてくるしな」
「シルバさんが黙っててくれるなら、発を使ってもいいですよ?」
「マジ?」
の提案に、シルバが驚いた顔をしてを見る。
「ええ、信頼出来る人に見せるなら問題はありませんから」
「...え?」
の言葉にシルバは思わず立ち止まる。
は急に立ち止まったシルバを、不思議そうに見つめる。
「シルバさん?」
「......、お前なぁ...」
「?」
首を傾げるから、シルバはわずかに赤くなった顔を隠すように逸らせた。
「問題が無いなら別にそれでいいぜ。何時までもつけられてると鬱陶しいしな」
「?、分かりました。では、強制転送point(428.104 , 669.332 , 2.529) object(other-2)」
達の後ろをつけていた二人の気配がフッとなくなる。
「へぇ、相手を移動させたのか?」
「はい。今頃は魔獣たちの住処の真っ只中だと思います。計算が間違ってなければ」
「間違ってたらどうなるんだ?」
「空に放り出されるか、地面の中に出るかだと思います」
「結構おおざっぱだな」
「自分に使うときは、ちゃんと正確に計算しますよ」
「自分にも使えるのか...気をつけろよ」
「もちろんです。いなくなった所で、探検の続きしますか?」
「当然だろ」
2人は何事も無かったかのように廊下を歩き出した。
あとがき
H×H第十五話終了です。
やっと二次試験を終わらせることが出来ました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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