4人は観覧車を終えて、残すところあと1つとなったお化け屋敷へと歩いていた。

「観覧車はいまいちだったな」

「そうですね。ゴーカートの方がスリルがありましたし」

「...お前ら、本気で楽しんでるだろ...」

「?、楽しくないんですか?」

「......今まで乗ったのを思い出してみろ」

「今までのですか?」

は首を傾げながらも、今まで乗ったものを思い出した。




  −回想中−



<ジェットコースターで...>


  『ギャーーーーー!!』

「4人乗りか、小さいな」

    『うわーーー!!!!!』

「でもそのおかげで1番前に乗れると思いますよ」

   『ひーーーーーーーッ!!』

「まあ、そうなんだけどな」

     『とめてくれーーーー!!』

「それより俺は、この悲鳴の方が気になるんだが...」

ナハトの言葉に、とシルバは不思議そうな顔をする。

「ジェットコースターなんだから、悲鳴が聞こえるのなんて普通じゃん」

「悲鳴の種類が違うと思うわ」

「そうですか?悲鳴は悲鳴だと思いますけど?」

「そんなの乗ってみれば分かるだろ?次は俺らの番だぜ」

シルバの言ったように、たちの前に並んでいた人たちが出発するところだった。

「しかし、ちゃんとコースが見えないように壁まで造ってるなんてめずらしいな」

「そうね。見えるのはスタートとゴールだけだし」

「ああ...それに、帰ってきたときに人数が合ってないのが気になるんだが...」

「ええ...でも、あの子達はそのことを気にしてないみたいね」

セシリアはそう言うと、楽しそうに話しているとシルバを見た。

ナハトも2人を見て、疲れたようなため息をこぼす。

しばらくすると、空っぽのジェットコースターが帰ってきた。

「今度は、全員いなくなったか...」

「?、ナハトさん?」

「あー、何でもねーよ。それより乗るんだろ?」

ナハトがそう言うと、シルバがを呼んだ。

、早く来いって」

「はい」

4人全員が座席に着くと、ナハトはシートベルトが無いことに気付いた。

「もしかして、このバーに捕まってろってことか?」

「そのようね」

「...腕力が足りないと、吹っ飛ばされるな」

ジリリリリリリリリリリリリリリィ...スタートします』

たちの乗ったジェットコースタがゆっくりと進み出す。

スタート地点が見えなくなると、ジェットコースターは一気に加速した。

「「!!」」

「おっ、速い速い。今、時速何キロくらいだ?」

「90くらいですね。あ、回転するみたいですよ」

「「ッッ!!!!」」

「あはははははははははははははっ!おもしれー!」

「あ、あそこに落ちた人がいますよ」

「ほんとだ。気絶してんのか?」

「そうだと思いますよ」

「「ッ!!!!!!」」

「もうすぐ終わりみたいですね」

「もうかよ。もう少し乗ってたかったな」

「この距離だと急停止ですかね?」

「あっ、確かにそうなりそうだな」

シルバがそう言ったとたんジェットコースターが急停止する。

  ギギギギギギギイィッ!!!!

「「ッッッ!!!!!!」」

急停止したジェットコースターが、ゆっくりとゴール地点へと動いていく。

「終わりましたねぇ」

「もう少しコースが長いと良いのにな」

「そうですね」

「「.........」」








   第十四話   二次試験 2







<メリーゴーランドで...>


「見た目は普通みたいですね」

「異様にメルヘンだけどな」

「でも、結構人数が、一気に乗って降りるはずなんだけど...待ち時間が長くない?」

「そう言われてみれば、そうだな」

「ジェットコースターみたいに、放りっぱなしに出来ないからじゃないですか?」

の言葉に、シルバがなるほどと頷く。

「ああ、邪魔だもんな」

「はい。係員の方も1人だけのようですし、回りますから気持ち悪くなる人もいるでしょうし。そうなると、掃除も必要ですよね」

「げっ!俺、人が吐いたところに乗りたくねぇぞ」

「まあ、吐く前に遠心力で床に落ちるでしょうから、大丈夫じゃないですか?」

セシリアはとシルバの話を聞いて、呆れたようにため息をついた。

「あなた達...」

「「?」」

「...何でもないわ。私たちの番みたいね」

不思議そうにセシリアを見る2人に、言おうとした言葉を飲み込んで入り口に目を向けた。

戻ってきた係員が、入り口のところで番号を確認していく。

たちも番号を確認してもらうと、木馬の方へ歩いていった。

「本当に、見た目は普通だな」

「ええ、見た目はね」

「シルバさん、私これにします」

「じゃあ、俺はこれね。2人とも、早く乗らないと始まらねぇぞ?」

「ああ、そうだな」

ナハトたちと他の受験者が木馬に乗ると、明るいメロディーにあわせて動き始めた。

「何か、普通だ『がくんっ』なっ!」

ナハトが話している途中に、木馬が上下左右と、さまざまな方向にすごいスピードで動き始める。

「なあ、これって何て言ったっけ?」

「ロデオじゃないですか?」

「ああ、そうそう。ロデオだ。回るだけかと思ったら考えてるんだな」

「でもこの動きとメロディーがあってませんね。どうせなら、メロディーも合わせればよかったのに」

「そうだな。どんなのがいいと思う?」

とシルバが話をしている周りでは、受験生達が振り落とされないように必死でつかまっている。

その後メリーゴーランドは30分間回り続けた。

「待ち時間が長かったのは、こういうことなんですね」

「だな。30分も動いてれば、待たされるのも当たり前だよな」

「「......」」






<ゴーカートで...>


「1人乗りと2人乗りがあるんですね」

「やっぱり1人乗りだろ?」

「そうですね」

「「ちょっと(待て)(待ちなさい)!」」

ナハトとセシリアが、歩き出そうとしたとシルバの襟首をつかんで引き止める。

「いきなり掴んで止めるなよ。服が伸びるだろ」

「?、どうかしたんですか?」

「お前ら、ちゃんと説明書きを読んで1人乗りにしたのか?」

「「そう(だぜ)(ですよ)」」

セシリアが見ているゴーカートの看板には、以下のように説明が書いてある。



  ゴーカートは、1人乗りと2人乗りがあります。

  スタート地点とゴール地点の前後50m付近以外では、ゴーカートの速度が時速50km未満になると高圧電流が流れます。

  なお、コース内に描かれた赤い丸の上を走ると、電流の流れる速度設定が時速+10kmになるのでご注意下さい。



看板から目を移して、セシリアが困ったような顔をしながら言う。

「...普通は2人乗りで、1人がナビをしたほうが安全にいけると思うんだけど」

「「それじゃあ面白くない(だろ)(でしょう)?」」

「それに、2人乗りだとどっちが速いか分からねーし」

「せっかく面白いコースですから、タイムを競いたいですよね?」

「「......はぁ」」

2人の反応に、ナハトとセシリアは同時にため息をついた。

「...俺たちは2人乗りに行くから、お前らは1人乗り行って来い」

「そうね。速く終わった方が、ここで待ってるのでいいかしら?」

「分かりました」

「それじゃあ、あとでな」

2人が1人乗りのスタート地点に行くと、ちょうど2台の空きがあった。

「俺こっちな」

「では私はこっちですね。スタートの合図はどうしますか?」

「あの秒針が12のところにきたらで良いんじゃね?」

「そうですね。では...5、4、3、2、1」

「「スタート!」」

  ギュィイン!!!!

 ギュィィィィィィィィィィイーーーーーーーーン

  『うああーーー!!』

 『ギャーーーーーッ!!!!!!』

2人がスタートしてしばらくすると、他の受験者達の悲鳴が大きくなって聞こえてくる。

「...あの二人に巻き込まれたな...」

「あの2人が巻き込んだとも言えるわね...」

「......そうだな」

2人が出発してから5分ほど経ち、ナハトたちがゴーカートに乗り込もうとしたとき、モーター音を響かせて2台のゴーカートが帰ってきた。

 ギュィィィィイーーーーン、キィィィィィィィィィーーーーーーッ!!

すごいスピードで走ってきた2台のゴーカートが、コースにタイヤの後を残しながら急停止する。

「クソッ!同着かよ」

「シルバさん、赤いところを突っ切っていきましたね」

「お前だって、前にいた奴らの隙間を縫って走ってたじゃねーか」

2人が楽しそうに話す内容を聞いて、ナハトたちだけでなく、周りにいた受験者達も顔をひきつらせた。

「ん?あれ、あんたらまだ行ってなかったのか?」

「あ、ああ。こっちの方が並んでる人数が多かったからな」

「そういえば、そっち随分並んでるな。こっちはほとんどいないのに」

「シルバさん、飲み物をもらいに行きませんか?あそこで貰えるみたいですし」

「そうだな。じゃあ、俺達はあそこで待ってるからな」

「え、ええ。なるべく急ぐわね」

「はい。では、またあとで」

「「「「「「.................はぁー」」」」」」

歩いていく2人の背中を見ながら、そこにいたほとんどの人がため息をついた。






<コーヒーカップで...>


「え、4人一緒に乗らないんですか?」

「ええ、さすがにあなた達みたいに体力は無いから、2人ずつ乗りましょう」

「俺は別にいいけど...」

「まあ、同じところにいるんだし、大した違いはねぇって。だから、そんな顔するなって」

ナハトは、少し落ち込んでいるの頭をガシガシと乱暴に撫でながら言った。

「...はい」

、しょうがねーって。こいつらも若くないんだから、俺らが思いっきり回したら疲れるだろ?」

「若くないって...」

「ナハト、気持ちは分かるけど言っちゃダメよ」


「...分かりました」

シルバの説得に、しぶしぶながらもはうなずいた。

「よし!それじゃあ、乗るぞ!」

「はい」

シルバと並んで歩いていくに、2人はほぅっとため息をついた。

「やれやれ、どうもにああいう顔されると罪悪感が湧くな」

「そうね。そろそろ行かないと本当に拗ねるかもしれないわよ?」

「ああ、そうだな」

2人はたちの乗ったコーヒーカップの隣に乗り込む。

「ん?おいセシリア、これって...」

「え?...加速か減速かを回す方向で選べるのね」

「俺達は減速だけど、あいつらは絶対に加速するよな...」

「......言わないでよ。始まる前からやる気がなくなるでしょ」

「...ワリィ」

その隣では、ナハトたちが予想した内容を2人が話していた。

「やっぱり、加速だよな?」

「?、コーヒーカップで減速させる人いるんですか?」

「まあ、回るのが嫌いなやつはするんじゃないか?(というか、隣は減速するつもりだろうしな)」

「へぇー、もったいないですね。楽しいのに」

「俺らには関係ないから良いって」

「それもそうですね」

コーヒーカップ終了後、ナハトとセシリアは減速させるのにかなり体力を使ったため、肩で息をしている。

「2人ともどうしたんですか?」

「...いや、ちょっと(減速の方に)回しすぎて疲れただけだ」

「そうなんですか?」

「ええ...気にしなくても大丈夫よ。もう少ししたら落ち着くわ」

「しょうがねーな。二人に飲み物もらってこようぜ」

「はい。冷たいお茶で良いですか?」

「ああ、頼む」「お願いするわ」

「じゃあ、あんたらはそこで待ってろよ」

二人が歩いて行くのを、ナハトとセシリアはベンチに座って見送った。






<観覧車で...>


「2人とも疲れてるなら、次は観覧車にしますか?歩き回るのよりは楽だと思いますけど」

「ああ、そうだな。確かに観覧車なら...」

「ナハト、普通の観覧車だと思う?」

「........そう言えばそうだったな」

「何時までもここにいたってしょうがないし、とりあえず移動しないか?」

「...そうだな」

4人は観覧車までの道のりをのんびりと歩いていく。

観覧車乗り場に来ると、ナハトは上を見上げて呟く。

「1周30分くらいか?」

「ええ、それくらいだと思います。でも、随分と乗るところが大きいですね。普通の2倍以上ありますよ」

「簡単に考えると、中に細工がしてあると思うわね」

「たぶんな。どうせ乗らなきゃいけないんだから乗るか?」

「そうね。だいぶ体力も回復したし、大丈夫じゃないかしら」

「それじゃあ行くか」

4人はちょうど来たところに乗り込むと、係員が話しながら扉を閉める。

「お乗りになりましたら、そこのバーにぶらさがって下さい。しばらくすると、床に高圧電流が流れますので。それでは、お気をつけて」

「...やっぱり甘くなかったな」

「そうね。さっさと掴まりましょう。電流の餌食はごめんだわ」

「同感だねっと」

4人は天井付近にあるバーに掴まって、そのまま30分すごした。

「お疲れ様でした。もう電流は流れていないので、手を離して降りてください」

4人は言われるままに手を離して観覧車から降りと、お化け屋敷のほうへと歩いていった。




 −回想終了−



「楽しかったです」

「.........お前ね...」

「?」

「言うだけ無駄よ。あきらめなさい」

首を傾げるを見て、セシリアはため息をつきながらナハトに言う。

「そうそう、今更だって。それより見えてきたぜ」

シルバが指差す方向に目をやると、おどろおどろしい雰囲気の建物が暗い入り口を開いて建っていた。








あとがき

H×H第十四話終了です。
二次試験を終わらせられませんでした。
しかも、区切れなくて長くなってしまいました。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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