「あ、やっと来た」
「お疲れ様でした。怪我はありませんか?」
とシルバが到着して45分後、ナハトとセシリアが到着した。
2人は汗を拭い、息を整えながらたちのところに歩いてくる。
「ああ、あの階段の後は普通だったからな」
「怪我は無いんだけど...ここが本当に終わりなの?」
「気持ちは分かるけど、に調べてもらったから間違いないぜ」
ファンシーな絵がたくさん描かれている看板を見ながら不安そうに呟くセシリアに、シルバは苦笑しながら話した。
それを聞いた2人は、非常に複雑な気持ちでを見た。
その様子に苦笑すると、は先ほど調べたことを話し出した。
「シルバさんが言ったように、ここが終了地点で間違いありませんよ。空港から北北西へ224km、地下291m。携帯で現在位置と照合しても、間違いなくここがゴールですね」
「地下291mって...電波届くのかよ」
「...私のは圏外になってるわ」
「2人とも、の携帯だから届くんだって」
「「...なるほど」」
声をそろえて頷く二人に、は苦笑する。
頷いていたナハトが、の携帯に興味を持ち見せてくれと頼む。
「かまいませんよ」
「いいのか?商売道具だろ?」
「ええ、問題はありませんから。...どうぞ」
が携帯をナハトに渡したとたん、携帯の電源が切れる。
「え!もしかして、壊れたの!」
「なっ!?ただ持っただけだぞ!!」
「あーぁ、人の商売道具を...」
「...ナハトったら...」
「うっ!あっ!ッ!!」
「っふ、あはははははははは...」
慌てふためくナハトと、ナハトをからかう2人を見て、は思わず笑い出した。
その様子を見てナハトは冷静さを取り戻すと、を不機嫌な顔で見つめた。
はまだ笑いの余韻を残した声で、ナハトに謝る。
「っふぅ...すいません。予想以上に驚かれたので、つい」
「はぁ...ったく、ちゃんと説明しろよ?」
「はい。この携帯は、私にしか使えないようにしてあるんです。ですから、先ほどのように私以外の人が触ると、電源が自動的に切られるんですよ」
「...他には?」
「そうですね、基本的な機能としては先ほど言った個別認証システム、耐水・耐衝撃、圏外なし、受信データの自動選択とかですね。私の場合は、高メモリーにもしてますけど」
「へぇー、そこまでいくと特注だろ?どこに頼んだんだ?」
「...シルバさんもほしいんですか?」
「まあ、携帯もほしいけど...うちの仕事のときに使えそうな無線機が欲しいんだよな。普通のだと、電波妨害で繋がらないときもあるし」
「あ、俺も欲しい。結構、密林とかに行くと連絡つかねーことが多いし」
「私も携帯を駄目にしちゃうことが多いのよね...いくら耐水って言っても、染料の原液で駄目になるし」
口々に自分の欲しいモノの特徴をあげていく3人に、は数秒考え込むと口を開いた。
「じゃあ、原材料+αで作りますけど、今試験中ですから、作り始めるのは試験終了後からになりますけどいいですか?」
「「「.........」」」
の言ったことを理解するために、3人は思わず黙り込んだ。
「...、お前自分で作ったのか?」
「ええ、そうですけど」
「マジで!?」
「ええ。自分で作ったほうがメンテナンスも出来ますし、コストもかかりませんから」
あっさりと言ったに、シルバとナハトがまあだしなと頷く。
セシリアは、もうひとつ気になったことをたずねた。
「えーと、料金の『+α』って言うのはどれ位かしら?」
「そうですね...私の頼みを1個聞いてもらおうかなぁと思ってますけど?」
「頼み?あ、うちの植物を見に来るやつか?」
「それは、今度依頼を受ければ見せてもらえるんでしょう?」
「あ、そう言えばそうか。じゃあ、何を頼むつもりなんだ?」
「特に決めてませんよ」
「は?なら何でわざわざ金じゃなくて頼みごとなんだ?」
「私の師匠に当たる方が『人に借りを作らせたほうが面白くなる』と言っていたので」
「...良い(性格の)師匠ね」
「はい。大好きなんです」
セシリアの言葉の裏側に気付かずに、ニコニコと笑いながら言うに3人は微妙な顔をした。
「?、どうかしましたか?」
「何でもねーよ。それよりそろそろじゃねぇか?」
「ああ、そうですね」
がそう言ってまもなく、通路の上からゆっくりとシャッターが下りてきた。
「あれより向こう側だと失格ってことか?」
「そうみたいね。かなり減ったわね」
「はい、現在の人数が56人ですからちょうど1/7です」
「数えてたの?」
「はい」
「(数え方が発信機ってのは言わないのか...)閉まるぞ」
ガシャン
シルバがそう言うのと同時に、シャッターが完全に閉まった。
第十三話 二次試験 1
ジジジ...
シャッターが閉まってしばらくすると、スピーカーから放送が流れる。
『一次試験は終了した。二次試験の試験官がその場に行くまでしばらく待つように』
そう言って切れたスピーカーに、その場にいる人たちがざわめく。
「試験官待ちか」
「そうね。この看板にした試験官なのよね...」
「「......」」
セシリアが呟いた一言に、シルバとナハトは看板を見てひきつった顔をした。
はそれに苦笑しつつもフォローを入れる。
「でも、ハンターとしてちゃんと実績のある方なんですよ」
「あれ?試験の内容は調べないんじゃなかったのか?」
「試験の内容は調べてませんけど...さすがにこの看板を見て、そのままスルーは出来ないですし...」
「「「ああ、そっか」」」
3人が揃って声を出したとき、看板の下の壁がゆっくりと開いていく。
受験者達が口を閉ざし、固唾を飲んで壁を見つめる。
壁の奥は真っ暗で、中をうかがい見ることは出来ない。
壁が開ききるのと同時に、強力なライトがあたりを照らし出す。
受験者達は思わず目をつぶったり、腕で光を遮ったりした。
受験者達の目が明るさに慣れ、壁の向こうに目をやると、ほとんどの者が唖然とし固まった。
「すごいですねぇ。天井にまで絵が描いてありますよ」
「驚くところが違うって。何であんなにメルヘンな感じなのか驚けよ」
「2人とも驚くところ絶対に違うぞ...」
「普通は何でこんなところに遊園地があるのか驚くわよ」
「「試験のために造ったから(でしょう)(だろ)?」」
「うん。そのとーりー」
「「「「「「「!!」」」」」」」
「「ふーん」」
とシルバの言葉に、4人の後ろから突然肯定する声がかけられる。
その声にとシルバは驚くことなく頷くが、他の受験生達が驚いたようにその人物を見る。
とシルバの後ろには、長身で細身の男が、茶色の髪の端に小さな石を、手や足、首などにもたくさんのアクセサリーをつけ、壁に寄りかかるようにして立っていた。
「『ふーん』ってー、もうちょっと驚いてくれなーい?せっかく驚かせるためにこういう風にしたのにー、つまらないじゃないかー」
「そうは言いますけど、看板からして遊園地って感じでしたし」
「少しは驚いたけど、やっぱりって感じだしな」
「ああ、確かに看板がこれだったからねー。普通のにしておけばもっとインパクトがあったんだー?」
たちと話をする男は、周りの受験者のことなど関係なく話している。
ナハトはそれに困惑しながらも、このままでは埒があかないと思い、男に話しかけた。
「...あんたが試験官なのか?」
「ンー?ああ、そうだよー。僕が二次試験官のコーエンだよー」
コーエンの気の抜けるような話し方に、ナハトは多少いらつきながら話を続けた。
「あんたが試験官なら、二次試験の説明をしなくれないか?」
「あー、そういえばー、忘れてたねー」
あははははーと笑うコーエンに、多くの受験者が顔をひきつらせる。
コーエンはそれを気にすることなく、試験内容を説明しだした。
「二次試験はねー、簡単に言うとーここのアトラクション全部を乗って無事だったら合格だよー」
「全部って、いくつあるだ?」
「んーとねー、ジェットコースター、コーヒーカップ、ゴーカート、メリーゴーランド、お化け屋敷、観覧車の6個だよー。内容は乗ってからのお楽しみー。あとー、団体でまわるのはいいけどー、アトラクションの内容を他の人に教えちゃダメだよー。乗る人は入り口のところで番号を確認されるからねー。もちろん途中で脱落した人は失格だよー」
「制限時間は?」
「んー?待ち時間とかもあるからねー、最高でも5時間かなー?」
「時間が余ったらもう1回乗れるんですか?」
「それはダメー。乗るのは1回だけねー。他に質問はなーいー?」
コーエンは周りを見回して質問が無いことを確認した。
「それじゃー、すたーとー」
スタートの合図と共に受験者が我先にといっせいに動き出した。
「なあ、どれから乗る?」
「どれから乗りましょうか?」
「...お前らノンキだな」
「しょうがないわよ。この二人だもの」
苦笑する2人に、が顔を向けて話しかける。
「ナハトさんとセシリアさんは何から乗りたいですか?」
「あ?お前らの好きなのからで良いって」
「そうね。どうせ全部乗るんだし」
「、やっぱりジェットコースターからにしようぜ。面白そうだし」
「いいですよ」
「1番前だといいな!」
「はい、楽しみです」
笑いながら並んで歩く二人を、ナハトとセシリアはほほえましく思いながら後を着いて行った。
あとがき
第十三話終了です。
二次試験の開始までした。次で二次試験を終わらせられたいなぁと思います。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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