はナビゲーターの元へと向かうために、空港で飛行船を待っていた。

その間も、は人目には分からないように試験に参加する人たちの情報を集めていた。

(この人は脱落、この人も、この人も...この方は良い所までいきそうですけど、あの二人なら断りそうですね。なかなか条件に合う方がいませんねぇ。今のところ、候補者は5名ですけど...問題はあの人たちが気に入るかってことなんですよねぇ)

考え込んでいたがため息をついたとき、空港の一角が突然騒がしくなった。

それに反応しては騒がしくなった方に顔を向けると、以前情報を集めたときに知った人物の顔を見つけた。

(ん?...あれ、あの人は確か...)

「おい、大丈夫か!?」

「誰か医者を!!」

「...胸から血が!」


は聞こえてくる声とこちらに向かってくる人物を見て、内心なるほどと頷いた。

(殺気には敏感になったと思ったんですけど...すごいですねぇ。おや、今年の受験者のようですね。聞きたいこともありましたし...声をかけてみましょう)

は自分の考えに満足して笑みを浮かべると、その人物の方へ歩いていった。

相手もに気付いてこちらを見た。

は相手ににっこりと笑いかけると言葉を掛けた。

「1つお聞きしたいことがあるんですけど、よろしいですか?」

「......」

相手は無表情のまま無言でを見ていたが、はそれを気にすることなく質問した。

「あなたのお宅の植物を見せていただくのって、有料なんでしょうか?」

「.........ふざけてるのか?」

「いいえ、思いっきり本気なんですけど」

相手は警戒したままをじっと見つめた。

はそれにきょとんと首をかしげて、相手にたずねた。

「あれ?ゾルディック家の方ですよね?希少な毒植物をたくさん所有している」

「...確かに毒のものは多いが...そんなことを聞いてきたのは...というより、俺にそんな内容で自分から話しかけてきたのは、家族以外ではお前が始めてだぞ」

「え?でも、職業が暗殺者ってだけで、快楽殺人者じゃないんだから平気でしょう?」

相手はごく当たり前のように話すに驚いた顔をし、それから面白そうに笑った。

「くくっ、お前、変だろう」

「...疑問系では無いんですね...」

「本当のことだろう」

いきなり断言した相手にが少し落ち込みながら言うと、相手は口元に笑みを浮かべながら返した。

「...はぁ、別にいいですけどね」

「くくっ、そんなに拗ねることも無いだろう」

「......」

拗ねて黙り込むに、相手はさらに笑みを深めた。









   第九話 空港








のことを笑っていた相手が、ふとが自分を知っていたことを思い出して笑いを止めた。

「そういえば、お前、俺のことを知っていたな」

「以前あなたのお宅の毒植物を調べるついでに、所有者のことも調べましたから」

「...ついでなのか」

「はい」

はっきりと言いきったに、相手は複雑な顔をした。

「あ、ちゃんと名前も分かってますよ。シルバ=ゾルディックさん」

「それを分かってて話しかけてくるのは、ブラックリストハンターとお前くらいだろうな。それで、お前の名前は?」

「そういえば、言ってませんでしたね。です。あと、これが仕事用の名刺です」

が名刺を手渡すと、名刺を見たシルバは驚いた顔をした。

「お前があの情報屋『イレブン』なのか?」

「一応2年ほど前から『イレブン』でしたよ。なんとなく予想がつきますけど...どういう意味の『あの』ですか?」

「気に入った依頼しか受けない代わりに、依頼達成率100%、情報の内容200%の本人の情報が一切不明の情報屋...『イレブン』に挑んだものはすべて返り討ちにあい、社会的に抹殺されたという噂だが...」

「...いつ聞いても、大げさな噂ですよねぇ。さすがに全員はやってませんって」

あははと笑いながら言うを、シルバは興味深そうに眺めた。

「まさか、こんなところでイレブンにあって、名前を教えてもらうなんて思っていなかったな」

「私もここでシルバさんに会うとは思いませんでしたよ」

「シルバで良い。俺と同い年くらいだろう?」

「いいえ。あなたの方が10歳近く年上ですよ」

「.........」

その言葉に、シルバはをまじまじと見つめ、どうやらウソでは無いらしいと思うとにたずねた。

「何歳なんだ?」

「見た目(マイナス)10歳くらいですよ」

「...3、4歳か?見えないな...」

「4歳です。変装は得意ですから」

(変装の域をこえている気がするんだが...)

笑いながら言うに、シルバは無表情で呆れた。

「ところで、これから試験会場に行くんですよね?」

「...本当によく知ってるな。これからうちの飛行船で向かうつもりだが...」

「それなら、行き先を少し変更して一緒に行きませんか?なかなか面白いナビゲーターさんのところに行くんですけど?」

「興味はあるが...どんな奴だ?」

「傷薬から劇薬・毒薬・火薬まで、薬といわれる物のほとんどが揃っているお店のが主人なんですが、気難しくて気に入った方にしか薬を売らないんです。ご自身で新薬の開発もしてらっしゃるんですよ」

「へぇ、今まで聞いたことがなかったな」

「で、どうしますか?」

シルバはにっこりと満面の笑みを浮かべたに苦笑すると、少し待ってろと言い携帯を取り出した。

「...親父か?」

『どうした?これから試験じゃなかったのか?』

「ああ、そのことなんだが...」

はシルバが電話をしている間に携帯を取り出すと、先ほど選んだ候補者の情報を記録し始めた。

が情報を入力し終わるのとほぼ同時に、シルバが電話を切った。

、場所はどこだ?うちの飛行船で行くぞ」

「ニールデルタ空港から南へ50kmのブルネル湖のほとりが目的地です」

「行くぞ」

「あ、ちょっと待っててください」

「?、どうした?」

「チケットをキャンセルしてこないと」

そう言って、はチケットをシルバに見せる。それを見たシルバは呆れた顔をした。

「別にそれくらいかまわないだろう?」

「え?だって、もったいないでしょう?」

「...そんなことを俺に言うのはお前だけだろうな」

「そうですか?とりあえずキャンセルしてきますから、先に行っててください」

「場所は分かるな?」

「ええ、大丈夫ですよ」

はそう言って頷くと、チケットをキャンセルするために受付へと向かった。

シルバもなら大丈夫だろうと思い、飛行船へと歩き出した。






は手続きを済ませ、ゾルディック家所有の飛行船へと向かっていた。

飛行船に乗るためのゲートに近づくと、ゲートの横にタキシードを身にまとった壮年の男性が立っていた。

様でいらっしゃいますね。シルバ様がお待ちです。どうぞこちらへ」

そう言って歩き出した男性の後ろを、は黙ってついて行った。

しばらく歩くと、2人は飛行船の中にしては大きい扉の前で立ち止まった。

コンコンコン

「シルバ様、様をお連れいたしました」

「入れ」

「失礼いたします」

2人が中に入ると、ソファーに座ってたシルバは入り口の方を振り向いた。

「遅かったな」

「そうですか?人が並んでいなかったから、早かったと思いますけど?」

「俺は受付に並んだことなんて無いからな」

「そうなんですか?国や人によって受付の対応も微妙に違うから、結構面白いですよ」

「そんなことを面白がるのはお前くらいだろう。いい加減、こっちに座れ」

シルバが横にあるソファーを指すと、はそうしますと言って座った。

が座るまでの間に、もう1人男が入ってきてとシルバの前にお茶を置いた。

シルバに一礼し、部屋を出て行こうとした2人にがお礼を言った。

「サティニアさん、ディエンさん、ありがとうございました」

「「...いえ」」

名前を言ったに、2人は表情を動かすことなく部屋を出て行った。

「すごいですねぇ。さすがゾルディックの執事と言ったところでしょうか」

二人が出って行ったあと、感嘆の声を上げるにシルバは苦笑した。

「俺としては、うちの執事たちまで知ってたお前の方が変だと思うぞ」

「だって、私情報屋ですし。それに、ゾルディックの方々は情報を隠して無いじゃないですか」

「隠す必要が無いからな」

そう言うとシルバはお茶を飲んだ。

も目の前に置かれていたお茶に口をつけた。しかし飲んだ瞬間、は顔をゆがめる。

「シルバさん、あなた達だけならともかく、初対面の人にいきなりトリカブト入りって危ないと思いますよ」

そう言って、はコクコクとお茶を飲み干した。

「...その割りには平気そうだな」

「お茶自体はおいしいですから。それに、あなたほどではありませんよ」

「俺としては、お前の方が毒に強いんじゃないかと思うがな」

「そうですか?」

「実年齢4歳でそれが平気なら、慣らせばもっと強くなるだろうしな」

なるほどと言って頷くに、シルバは先ほど父親から言われたことを伝えた。

「そういえば、家の庭にある植物を見せる代わりに今度依頼を受けてほしいと親父が言っていたが、どうする?」

「いいですよ」

「...そんなに簡単に引き受けて良いのか?一応ターゲットの情報なんだが」

あっさりと承諾したに、シルバがたずねた。

「え?別にそれほど依頼内容にこだわりは持っていませんよ。単に私が気にいったのを受けていただけですし」

「そうなのか?」

「ええ」

「だが、以前は断られたと親父が言っていたが...」

「ああ、ある資産家の老人の居場所でしたよね?あれは私じゃなくても簡単に調べられるから、別に良いかなぁと思ったので」

の言葉を聞いたシルバは、複雑そうな顔をした。

「...それを他のところに頼んだら1週間かかったぞ」

「それでいくらかかったんですか?」

「確か2億くらいだったな」

「随分とぼったくってますねぇ」

あははと笑い声を上げるに、シルバは驚いた顔をしてたずねた。

「お前ならどうなんだ?」

「それ位なら、2時間ほどで1千万でしょうか?あ、身内だと9割引になりますから100万ですね」

「...安過ぎないか?」

「私が気にして無いからいいんじゃないんですか?」

「まあ、そうなんだがな...」





それから目的地に着くまでの半日ほどを、2人はいろいろな話をして過ごした。











あとがき

H×H第九話終了です。
シルバさんが登場しました!やっと出せたという感じです!

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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