...コトコトコト...タンタンタンタン...

今日もアサヒの家のキッチンで、は朝食の準備をしている。

朝食がまもなく完成するというころ、リビングの端においてあるパソコンにメールが届いた。

は火を止めると、パソコンを操作してメールを確認する。

「ん?お2人にですか。...起きてくれるでしょうか?」

ポツリと呟き少し考え込むと、まあ、そのうち起きてくるだろうと放っておくことにした。


 −30分後−

リビングのドアを開いて、まだ眠そうにしているアサヒと朝からきちんとした格好をしているビスケが入ってきた。

「ふあぁーあ、おはよう

「おはよう、。アサヒ、あんたは少しシャキッとしなさいよ」

「おはようございます。アサヒさん、ビスケさん。朝食が出来てますよ」

2人はの言葉にテーブルにつく。

「なんであなた達しかいないのに、朝から気を引き締めなきゃいけないのよ」

「そんなもん最低限の礼儀に決まってるだわさ」

「...あなた、私に礼儀を使ってほしいの?」

「........やっぱり、気持ち悪そうだからいいわさ」

は相変わらずの2人のやり取りに苦笑すると、二人の前にコーヒーを置いた。

「二人ともそれくらいにして、食べませんか?」

「そうね」

「冷めるともったいないからね」

「「「いただきます」」」

3人が食べ始めてすぐ、はメールがあったことを思い出した。

「そういえば、お二人にハンター協会からメールが届いてましたよ」

がそう言うと、2人は箸を止めて非常に嫌な顔をした。

「......そんなに嫌ですか?」

「「当たり前(じゃない)(だわさ)」」

「あんたはネテロの無理難題をひょいひょい叶えちゃうから、被害がないだろうけど」

「私たちには、あなた以上のものを押し付けてくるんだもの」

「大体、あんたがあいつを甘やかすから悪いんだわさ!」

「そうね、前よりも人の悪さがアップしてるし」

「...気をつけます...ところで、メールは読まなくて良いんですか?」

苛立ちがのほうに向いてきたため、は話題をメールに戻した。

「ああ、そうだったわね」

、あたしの携帯に転送して」

「はい」

数秒後、ビスケの携帯がメールの受信を知らせた。

「どれどれ............ちょっとアサヒあんたも読んで見なさい」

「ん?............ビスケもしかして...」

「ちょうど良いと思うんだけど、どうだわさ?」

「そうね...才能がない人連れてこられても困るし、に連れてきてもらえばハズレにはならないわよね」

「まあね。と、いうことで

「...なんでしょうか?」

2人にしか分からない内容で話していたために、話に加わっていなかったにビスケがいきなり宣言した。

「あんた、今度のハンター試験参加決定!」

はビスケの顔をまじまじと見つめると、深々とため息をついた。

「...そこにいたった経緯は聞かせてください」








   第八話   保護者の憂鬱








「私たち2人とも、今度の裏ハンター試験の試験官になったそうなのよ」

「しかも、しっかりと拒否不可ってあのジジィが言ったらしいんだわさ」

「あら、駄目よビスケ。いくら本当のことだからってジジィなんて言ったら。せめてクソジジィって言わなきゃ」

「ああ、確かにクソジジィだわね」

「...2人とも話がずれてきてます」

話題がネテロの悪口の話に行きそうになるのを、が止める。

「あら、そうね」

「まあ、そういうことで裏試験官をすることになったんだけど...あたしもアサヒも、協会が割り振ったのを教えるなんてお断りなんだわさ」

「と、言うことで、もハンター試験に参加して才能がありそうなのをみつくろってきてねv」

「...それって、良いんですか?」

にっこりと満面の笑みで言うアサヒに、は顔を困惑しながらたずねた。

「あら、駄目だなんた聞いてないから良いのよ」

「そうだわさ。向こう(ネテロ)だって、あたしたちがこうすることくらい予想してるわよ」

「「...ああ、確かに」」

ビスケの言葉に、とアサヒが声をそろえて言う。

「それに、今年で念の修行を始めてもう3年でしょう?」

「その間、他の所に行くときはあたしとほとんど一緒で、が一人で長期間出かけたこと無かったしね」

「確かに、一人で出かけても3時間が最高でしたけど...」

「今は前みたいにあなたを狙ってくる相手を、私たちが警戒する必要は無くなったしね」

「それに、ライセンスはいろいろと便利だから取っておいて損は無いわさ」

2人の言葉にはしばし黙り込んで考え出した。

(2人の言うとおり、狙ってくる人たちにもある程度対応できるようになりましたし...ライセンスがあれば入国禁止のほとんどの国を見てまわれるんですよね。そういえば、ハンター専用のサイトも二人からハッキング禁止といわれていましたから...)

「分かりました。受けます」

ふふっ、そう言うと思ったわさ」

うふふふふふ...それじゃあ、の気が変わらないうちに申し込みをしましょう」

「......」

答えを聞き、楽しそうに笑う2人を見て、は少しだけ受けたくなくなった。













、ちゃんと1日に1回は連絡を入れるのよ」

「はい」

「それから、ちゃんと食事と睡眠もとること」

「はい」

「あと、あなたのことを信頼できる人にしか話さないこと」

「はい」

「えーと、それから...」


   ゴンッ!!


「いい加減にしなさい、この親ばか!」

  ッ!!」

試験会場に出発する日、家の前でを心配するあまり、話をいっこうに終わらせようとしなかったアサヒをビスケは思いっきり殴った。

は、もう何度目か分からないこのやり取りに苦笑した。

「ほら、もさっさと行きな!いい加減遅れるよ!」

「はい、行って来ます」

「...いってらっしゃい」

「ちゃんと合格して帰ってきなさいよ」

「はい」

は2人に手を振ると、森を抜けるために駆け出した。




が見えなくなると、ビスケはまだ殴られたところを撫でているアサヒに顔を向けた。

「あんた、が親離れするのが寂しいからって、過保護な振りして誤魔化そうとしないでよ」

「...心配なのは本当よ」

「心配する内容が違うと思うけどね。に直接聞いてみればよかったじゃないさ。ハンターになったらここを出て行くのかって」

「だって...」

顔をうつむかせ不安そうに話すアサヒに、ビスケは呆れたため息をついた。

「あんた、のことを甘く見すぎ。あの子が家族を放り出すはず無いでしょうが!ほんっと    に、バカだね

「...悪かったわね」

ビスケの言葉に泣きそうになったアサヒは、顔を横に背けた。

その様子に小さく笑うと、ビスケはからかうように声をかけた。

「そんなにが信じられないんだったら、あたしがの母親になってもいいけど?」

「それはダメ!」

「ぶっ...っあっはははははは.....!」

即座に顔を上げて反論したアサヒに、ビスケは噴出し、堪えきれずに笑い出した。

「ッ!ビスケ!いい加減に笑いやみなさいよ!!」

ビスケにからかわれたと気付いたアサヒが、顔を真っ赤にして怒鳴る。

「っはははははははは...!!」

「.........っ!!」

しかし、ビスケはアサヒの真っ赤な顔を見てさらに大きな声で笑った。

自分が話すと逆効果だと分かったアサヒは、こぶしを握ってビスケが笑い止むまで我慢した。



数分後、ビスケの笑いがやっとおさまった。

笑いすぎたビスケはぐったりとしたまま呼吸を整え、アサヒは非常に不機嫌な顔をしていた。

「あぁー、疲れた」

「それだけ笑えば、当たり前でしょう!?」

「あんたの反応が面白すぎるのさ。ここまで笑ったのなんか、あたしだって記憶に無いわよ」

「うるさいわね。のことじゃなかったら、ここまでムキにならないわよ」

きつい目で睨んでくるアサヒを無視して、ビスケはそりゃそうだと返した。

「しかし、本当に仲良し親子だねぇ。に反抗期が来たころが見ものだわね」

「来るわけないでしょう?あのよ」

「...まあ、だしねぇ」

アサヒの言葉に、非常に納得してビスケは何度も頷く。

それを見てアサヒは、大きなため息をついて呆れた。

「なんだか、悩んでたのがバカらしくなったわ。もともと、あのがうちを出て行くわけ無かったわ」

「...今更だわさ」

「うるさいわよ!」

もっともなビスケの言葉に、アサヒはもう一度怒鳴り返すことになった。










あとがき

H×H第八話終了です。
今回はビスケさんとアサヒさんがメインで、さんの出番があまりありませんでした。
次回から、ハンター試験に行くところを書いていくので、ちゃんとさんが出てきますよ。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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