「ネンには2種類あるわ。ひとつは『燃』、もう1つが『念』よ」

「『燃』はもともと『念』の偽装として生まれたものだけど、実際に心を鍛える効果もあるわさ」

「『念』とは体から発するエネルギー、オーラのことよ。オーラを自在に操作・増減する能力を念能力と呼ぶの」

「ハンターになってる人たちは一応念が使えるわさ。念に対抗するには、念の使い手になること」

「『念』を起こすには、肉体に無数にあるオーラの出る穴『精孔』をこじ開けなければならないの」

「方法は2つ。ゆっくり開くか、無理やりこじ開けるか。前者は瞑想や禅で起こすわ。才能次第で数週間で目覚めさせることも可能よ」

「後者は別の念能力者に念を送り込んでもらうわ。眠っている体を驚かせて目覚めさせるの。ただ、これは未熟な能力者が行えば死ぬ場合もあるし、オーラは肉体エネルギーだから、とどめられない場合も危ないわね」

ここまで説明するとビスケはに問いかけた。

「で、はどっちがいい?」

「時間短縮のために、後者で」

「...2人とも...」

「「何(ですか)(だわさ)」」

あっさりと重要なことを決めた二人にあきれて、アサヒは大きくため息をついた。

「...とりあえず話を進めるわ」

「?、はい」

「念を使いこなすための基本が四大行、『(てん)』『(ぜつ)』『(れん)』『(はつ)』よ。

 『(てん)』オーラを肉体にとどめること。

 『(ぜつ)』オーラを完全に経つこと。

 『(れん)』纏の状態からオーラをねって増幅すること。

 『(はつ)』練で生み出したオーラを放つこと」

「さらに四大行の応用で『(ぎょう)』『(いん)』『(しゅう)』『(えん)』『(けん)』『(こう)』『(りゅう)』があるけど、これは実際にやるときに説明するわさ」

は2人の話を記憶すると、『燃』についてたずねた。

「燃の方にも四大行はあるんですか?」

「ええあるわよ。『点』『舌』『錬』『発』というの」

「『点』で心を一点に集中し、自身の目標を定め、『舌』で『点』を口に出し、『錬』で思いを強め、『発』で実現させるという流れになるのさ」

ここまで話をすると、アサヒとビスケは紅茶に口をつけ、に聞きたいことはないかたずねた。

「そうですね...念能力で何が出来るんですか?話を聞いてると戦闘にかかわることなんでしょうけれど」

「そういえば、まだ言って無かったわね。の言うとおり基本は戦闘、攻撃と防御よ」

「基本ということは応用があるんですね」

「ん、正解。攻撃方法だけを挙げるなら、自分の肉体を強化するもの、武器を強化するもの、武器を実体化させるもの、他にもいろいろあるわさ」

「攻撃以外だと、治療や予知、空間や分身を作るものもいるわ」

「念能力は能力者の人数とセンス次第で無限にあるわさ」











          第六話   念の発動










「大体説明はこんなもんだけど、他に質問あるかい?」

「特に今すぐ聞かなければならないことはないと思います」

「じゃあ早速念を起こそうか」

そういってビスケが立ち上がるのを、アサヒは慌てて止めた。

「ちょっと待ってよビスケ!何もそんなに急いでるわけじゃないんだから、ゆっくり起こしたっていいじゃない」

「でもは、こっちの方が良いって言ったじゃないさ」

「それは、そうだけど...」

「それに、はじめにあたしのやり方でやらせてもらうって言ったじゃないさ。それともあたしが信用出来ないのかい」

そういわれてアサヒは慌てて否定した。

「信用はしてるわ!でも、にあまり危ない目にあって欲しくないのよ」

「アサヒ、あんた...ずいぶんと親ばかだねぇ」

ビスケのあきれたような言い方に、アサヒは憮然として言い返した。

「自分でもそう思っているんだから、わざわざ言わなくても良いわよ!」

2人の話を黙って聞いていたは、唐突にアサヒに話しかけた。

「ところで、今更なんですが、私にもオーラがあるんですか?」

アサヒとビスケはピタッと動きを止め、信じられないような顔をしてを見た。

「あんた、今まで、なんで念の話をしてきたと思ってるんだい?」

「使えなかったら念の話をする必要が無いでしょう?」

呆れたように言うと、「それもそうですね」と納得しているに、2人はため息をついて話を続けた。

「何か話の腰が折れたけど、念を早く覚えさせた方が良いんだわさ」

「早くといったって...もしかして何かあるの?」

アサヒの問いにビスケは大きく頷いた。

「ええ、以前のハッキングの話をしたでしょう?それが前以上に噂になってるのよ」

「え?でも、痕跡を残さないように注意しましたよ?」

困ったように話すに、ビスケは分かっていると前置きして先を話した。

が痕跡を残さないようにしてるのは知ってるけど、偶然にもパソコンが勝手に動いてるのを見た人が結構いるのよ。しかも、パソコンに起動したことが記録されてない上に、侵入の痕跡が無かったら...」

「間違いなく、凄腕のハッカーなんじゃないかって噂になるわね。しかも愉快犯の」

「そういえば、人に見られるかもしれないという可能性を、全然考えてませんでしたねぇ」

「「.........」」

緊張感をぶち壊すの言葉に、アサヒとビスケは揃って脱力した。

「...まぁ、がハッキングしてるって言うのは、まだばれてないと思うけどね」

「念能力で見つけられる可能性がある以上、早くした方が良いと言うことね」

「そういうことだわさ」

アサヒはソファーの背に寄りかかって大きくため息をつくと、に確認した。

は本当に無理やり起こす方法でいいのね?言っておくけど、本当に危ないのよ」

「大丈夫ですよ。アサヒさんとビスケさんを信用していますし。それに最悪の場合でも、私の機能が一時的に停止するだけで、死ぬことはありませんから」

「...分かったわ。けれど、絶対に成功させなさい。あなたが倒れるのを見るのは絶対に嫌よ」

「努力はします」

の返事を聞くと、アサヒはビスケに視線を向けた。

アサヒに向かって頷くと、ビスケはに話しかけた。

「さて、話がまとまったところで早速やろうか。、上着を脱いでこっちに来て」

「はい」

「こっちに背を向けて」

の背にビスケが手を近づける。

(...熱い...気温は変化していないのに)

「行くよ」



   ドンッ



「ッ!!?」

(体から立ち上っている...これをとどめる...)

体から立ち上るオーラをじっと見ていたに、二人は急いで指示を出す。

、目を閉じて!」

「体にとどめるのをイメージしやすい構えで!」

「イメージは血液が体の中をめぐっているように、頭から右肩、右手、右足,そして左側へ」

「その流れをゆっくりと止めて、体の周りに揺らいでいるイメージでオーラをとどめる」




「......」

「「......」」





「出来ましたか?」

オーラがとどまったことを感じ取って、は二人に話しかけた。

「できたけど...ねぇ」

「...例外もここまで来ると、驚くほうがバカらしくなってくるわさ」

2人の反応に、は目を開いて首を傾げた。

「?、何か間違ってましたか?」

、あなたオーラを増幅するイメージでもした?」

「はい。とどめる量が多い方が良いかと思ったので」

2人はその言葉に顔を見合わせて、やっぱりと呟いた。

、『纏』のときは増幅させなくていいから...今やってるのは『堅』だわさ」

「『纏』と『練』の応用技よ」

はわずかに目を見開いて驚いた。

「あらら」

「「いや、あららないわ(よ)(さ)」」

気の抜けるの反応に、アサヒとビスケは脱力して言葉を返した。













あとがき

H×H 第六話終了です。
やっと念を起こしました。
念の説明は、ハンターズ・ガイドを参考にしました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!


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