「...以上が私に関する内容です」
「......」
(やはり信じていただけないのでしょうか...)
がそう思ったとき、ビスケはポツリと呟いた。
「よく、あのアサヒがあんたをそばに置いたわね」
「...私のようなものは、アサヒさんのそばにいるべきではない、ということでしょうか?」
はビスケの呟きを聞いて、とても不安そうな顔をした。
その顔を見てビスケも目を数回瞬かせた。
(アサヒの真似じゃなくて、そんな顔も出来るんじゃない)
「あははっ、違うわよ。だからそんなに不安そうな顔をしなくてもいいわさ」
「はい」
の素直な返事にビスケはウンウンとうなずく。
「そうそう、子どもは素直が一番だわさ」
「ありがとうございます、ビスケちゃま」
しかし、から『ビスケちゃま』と呼ばれた瞬間、ビスケは嫌そうな顔をした。
「...『ビスケさん』でいいわさ」
「?、そうですか?」
「なんか、にビスケちゃまって呼ばせると、年取ったように感じるのよ。小さい子どもに呼ばれてるみたいで」
「まぁ、私は0歳ですからね。そういえば、ビスケさんは何歳なんですか?外見年齢は12、3歳くらいですが」
は先ほど疑問に思ったことを尋ねた。
「21よ。アサヒと同い年」
「アサヒさん21歳だったんですか」
「そうよ。半年以上一緒にいて知らなかったの?」
「はい。特に聞かなくても問題が無かったので...」
その答えにビスケは、アサヒの性格を思い出して納得した。
「それもそうね」
はすっかりぬるくなったお茶を入れなおすと、もう1つの疑問をビスケに尋ねた。
「ところで、ビスケさんの外見がアサヒさんより若いのは、なぜですか?」
その問いに、ビスケはどう答えるべきかしばし考えた。
(能力のことは知らないみたいだし、勝手に言わない方がいいわね)
「ちょっとした裏技よ。アサヒが教えても良いって言ったら、教えてあげるよ」
「分かりました。...もう12時ですけどお昼何がいいですか?」
「あら、もうそんな時間なのね。そうね...暑いからさっぱりしたものがいいわね」
「分かりました。今から作るので、少し待っていてください」
そう言うとは立ち上がって台所へと迎い、ビスケはの背中に笑顔で言葉を投げかけた。
「じゃあ、期待して待ってるわね」
第三話 話し合い
PM 2:20
予定より早く仕事が済んだアサヒは、家へ帰るたために森の中を駆けていた。
(あんまり良い本無かったわね。の場合は、なんでも喜んでくれそうだけど...)
のことを考えると自然に笑顔が浮かぶ自分に、親バカになったものだなぁと思わず呆れてしまう。
家の近くまで来たとき、以外の気配が家の中からすることに気付いた。
(!、が誰かと一緒にいる?まさか密猟者!?)
アサヒは家まで全速力で向かうと、ドアを叩きつけるように開けた。
バタン!!
「!!無事!?」
「お帰りなさい。早かったですね」
「え...? え、ぇ、ええ、あんまり良さそうな本が無くて...ってそうじゃなくて!」
「?、どうかしましたか?」
あまりにも普通に出迎えたにアサヒは困惑した。
「のことが心配だったんだろうさ」
「そうなんですか?」
「きっとそうだわよ。、お茶のおかわりもらえる?」
「はい」
ビスケがの後ろから声をかけたとき、アサヒがやっとと一緒にいた人物を確認した。
「......ビスケ?」
「そういえば、アサヒさんにお客さ「何であなたがここにいるのよ!」まが...」
の言葉をさえぎって怒鳴ったアサヒに、ビスケは顔をしかめた。
「そう怒鳴らないでよ。あたしだって、来たくて来たわけじゃないわよ」
「じゃあ何でわざわざ来るのよ」
「ハンター協会からの依頼だよ。追加依頼のための電話に全然でないから、また前みたいになってるんじゃないかって、あたしのところに依頼が来たのさ」
「うっ、うそ!」
「わざわざこんなウソつく必要がどこにあるのさ?」
「それは...」
ビスケの言葉に反論したアサヒは、ビスケがウソをつく必要性が無いことを分かっているために口ごもった。
「『前みたいに』って何ですか?」
「え、ええとね...」
「この機械音痴が、携帯電話を充電しないで放って置いたり、使おうとして壊したりしたことよ」
の問いを誤魔化そうとしたアサヒを無視して、ビスケが答えを言った。
「ちょっと、ビスケ!」
「本当のことしか言ってないでしょ」
「だからって、に言うことないじゃない!」
言い合いを始めた二人をさえぎるように、はアサヒに確認した。
「機械音痴なんですか?」
「うっ、そ、それはね。ええと...」
アサヒはの問いに言葉を濁した。
「やっぱり言ってなかったのかい」
「うるさいわね。いいじゃない、ここでは困らないんだから」
「さっきの『よく、あのアサヒがあんたをそばに置いたわね(ビスケの声)』は、そのためですか?」
「そういうこと」
「ビスケ、あなたそんなこと言ったの?」
アサヒが顔をしかめていった言葉を無視して、ビスケはに言った。
「、悪いんだけどちょっと部屋から出てくれる。一応、依頼の話だから」
「分かりました。裏の畑にいますから終わったら呼んでください」
「!、ちょっとビスケ!」
反論しようとしたアサヒを、ビスケは目で止めた。
「...、悪いわね」
「構いませんよ。お茶ここに置いておきますね」
「ええ、ありがとう」
ぱたん...
の気配が裏庭へと移動したのを確認すると、アサヒはビスケに問いかけた。
「ビスケ、どうしてを部屋から出す必要があったの?依頼内容ならあの子も知ってるのに」
「...依頼のこともあるんだけどね、のことを話すためさ」
その言葉にアサヒは怪訝な顔をした。
「どういうこと?」
「一応から経緯は聞いたけどね...アサヒ、出会った頃のと、最近のを比べてどう思う?」
「どう思うって...人間ぽくなったなぁとは思うかしら?会った頃は、ほとんど表情がなかったし」
アサヒの答えに、ビスケは複雑そうな顔をしながら本題を話した。
「...その人間臭さがあんたのコピーでもかい?」
「!、コピー!」
「そう、コピー。動きもだけど、精孔が開いてないにもかかわらず、オーラの揺らぎ方までコピーしてたわ」
「オーラまで...」
「まあ、その辺りは無意識なんだろうけど...そりゃあ、ここにはあんたしかいなかっいんだからから、似てくるのはしょうがないわ。でも、このままだと、じゃなくて、あんたの完璧なコピーになるわよ」
アサヒはビスケの話に非常に驚いたが、以前が話していたことを思い出した。
「そういえば以前、情報を集めるために、人に近い行動をするように造られたって言っていたけど...そういうことなのよね。私以外、参考にする人がいないんだから...今まで気付かなかったけれど...」
「まぁ、最悪の状態になる前でよかったじゃないさ」
辛そうな顔をして考え込むアサヒに、ビスケは慰めの言葉をかけた。
「ええ、そうね...」
アサヒは短く返事を返すと、真剣な顔で考え込んだ。
そして、何かに気付いたように勢いよく顔を上げると、じっとビスケの顔を見つめた。
「?、何よ?」
困惑するビスケをじっと見つめたまま、アサヒは自分が考えていたことを話した。
「ビスケ、あなたにのことを頼むわ」
あとがき
H×H 第三話終了です。
原作の30年以上前だったりします。
しばらくは原作キャラがかなり少ないまま進むと思いますが、ご了承ください。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
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