そして3日も過ぎたころ、3人はやっと西方へとたどり着きいよいよ5つ目のドラゴンボールが近づいていた。

「レーダーの反応はどうですか?」

「近いのか?」

「かなり近いわね。すぐそこ」

「あそこに家がたくさんあるぞ。あそこかなー?」

「村か...多分そうだわ。行ってみよ!!」

3人がその村の中へと入っていくと、村の中は不気味なほど静まりかえっていた。

「静かねえ...誰も住んでないのかしら...」

「いや、人の気配はするぞ!」

「そうですね...(なぜか息を殺して家の中からこっちをうかがっているようですが...)」

「こんな静かなのに人がいるって言うの?」

「ああ、間違いねえ。人の気配がするもんな」

「こんちはーーーーっ!!誰かいますーーーーー!?」

ブルマはバイクから降りると大きな声で呼びかけが、どこからも返事は返ってこない。

「やっぱり誰も住んで無いんじゃないの?」

「おかしいなあ?」

「ええ...そこまで排他的な村には見えないんですけど...」

「まあ、どっちにしろここにドラゴンボールがあるのは間違いなさそうね」

「何人かいるみたいだぞ。確かめてやろうか!?」

そう言って悟空は筋斗雲からひょいっと飛び降りると、近くにあった一軒のドアを叩いた。


  どんどん


「おーーーい!!いるんだろーー!?何で返事しないんだーーーー!?」

「...?(中にいる人達が怯えたような声を出してるんですけど...もしかして、盗賊か何かに間違われてるんでしょうか?)」

「カギがかかってるみたいね」

「よーし」

「え?...ちょっと悟くバキッ...う...」

「ほれ開いたぞ!」

「あんた無茶するわねー」

「...(錬金術で直した方が良いですかねぇ...)」

「とーーーーーーーーっ!!!」

「へ!?」

「っと!」


  バシッ!!


「ひっひええええ......!!!」

!!その手ぇ!!!」

「大丈夫ですよ。血も出てませんって...ほら」

は悟空の頭にぶつかる直前に斧の刃を受け止めた手のひらを二人に見せた。

が言ったようにその手のひらから血は流れていなかったが、刃を受け止めたところが少し赤くなっていた。

その様子を見ていた斧を持っていた家人の体が小刻みに震える。

「や...やっぱりダメだったか............」

「何すんだよっ!!このやろっ!!!」

「すっすいませんでした、ウーロンさまっ!!!オカネや食い物ならいくらでも差し上げますっ!!どっどうか娘だけは...娘だけはっ...!!」

「へ?」

「ウ、ウーロン...?」

「あいにく私達の中にウーロンという名前の方はいないんですけど...」









    第八話   ウーロン









3人の様子に家人は呆然とした顔をすると、他の家からこちらの様子をうかがっていた村人達がぞろぞろと出てきた。

「ふーっ、何だウーロンじゃなかったのか」

「来る時間がちょっと早いからおかしいと思ったわ」

村人が先程の家の前に集まる中、は悟空とブルマと共に家の中へと通され、この家の娘から冷たい水で冷やしたタオルを受け取っていた。

「大丈夫?」

「ええ、少し赤くなっているだけですから」

「いやー、すまんすまん。てっきりウーロンの奴がお前さんの姿に化けてるんだと...」

「わたしだったら死んでたとこよ!!」

「め、めんぼくない」

「まあ、いきなりドアを壊してしまったこちらにも非はありますから...」

そう言って苦笑するに先のどの男性が申し訳なさそうに頭をさげていると、の隣に座ってた悟空がこの家の娘をじーっと見つめていた。

「?」

「?、悟空どうか『パンパン

「きゃっ!!」

「...え?」

「お前女だろ!!」


少女の股のあたりを叩いて性別を確認した悟空を、ブルマが殴りつける。


「なっ何するんだ!?」

「パンパンするなっ!!!」

「?、?」

「すいません...この子人里離れたところで生活していたので、男女の区別がつかなくて...」

ブルマが悟空に説教する横で、驚いている親子に向かっては申し訳なさそうに頭を下げた。

「ところでさっきから言ってるウーロンて何者なの?」

「え?あ、ああ...ウーロンですか?ウーロンというのはこのあたりに住んでいる妖怪で、いろんなものに姿を変えられる術を持った恐ろしい奴で、本当の姿は誰も見たことが無いんです。実は昨日、この村にウーロンが鬼の姿でやってきて、わ、わたしの娘を見て...

わっはっは!その女気に入った!おヨメさんにするぞ!!明日の12時ちょうどに迎えに来てやるから、仕度をしておけよ!!

 ...と言っていきまして。こいつがなかなかのスケベヤロウで、すでに何人もの村娘がさらわれておるのだが...逃げたり手向かったりすれば、村人全員を食い殺すというのです...」

「そんな奴やっつけちゃえば良いじゃないか!」

「と、とんでもない!こーーーんなにでかい奴なんですぞ!」

「ですけど、擬態する生き物...姿を変化させる生き物って言うのは、強い者のマネをするのを得意とするはずですから、本当はそれほど強くないのかもしれませんよ?」

「し、しかし...」

「そうだ!」

そのとき男と達の話を聞いていたブルマが、何か思いついたように鞄の中を探り出した。

「ねえ、おじさん。こういう球持ってない?」

「え?......?さて...いや〜、わしゃ持っとらんな。はじめて見るものじゃ...」

「ほいな!!わたしゃそれとおんなじもの持っとるぞい!!」

「やっぱりあった!!!」

「パオズばあちゃんが?」

老婆がそう言って自分の家に戻ると、手にドラゴンボールを持って戻ってきた。

「これとちゃうけ?」

「これこれっ!!」

「イチ...ニ...六星球(リュウシンチュウ)だぞ!!!」

「...?」

「私達はあの球を捜して旅をしてるんですよ」

「ほぅ...」

「どう?おばあさん、その球わたし達にいただけたら、ウーロンて言う妖怪退治してあげてもいいわよ!」

「いや〜、そりゃ退治してくれるんならやってもええけど、女のお前さんにゃちーーと無理じゃないかえ?」

「やっつけるのは、わたしじゃないわ!!このっ!!...『パンパン』...」

「...悟空...」

「あんたも女だろ!!」

「ぼっぼうやったら!!」

「見境なしにパンパンしとる場合かっ!!!!」

申し訳なさそうに老婆に謝るの横で、悟空は首を傾げている。

「いやしかし、万が一ウーロンを退治できたとしても、住処が分からなければつかまっておる娘達が...」

「いい考えがあるわ!あなたの着てる服ちょっと貸してくれない?」

「え?わたしの服を?」

数分後、家の中には娘の服を着て動きずらそうにしている悟空と、それを苦笑しながら見ている、自分の考えに満足しているブルマの姿があった。

「な、何でオラがこんなヒラヒラしたやつ着るんだよ!?」

「似合うじゃない!」

「まあ、まだ二次成長前ですから...それほど違和感はありませんけど...」

「いい?あんたは女の子に成りすましてウーロンの住処までついていくのよ!そこでやっつけて、つかまってる女の子達を助け出して!」

おいっ!!ウーロンのやつが来ただぞっ!!!

「みんな隠れてっ!後はわたし達に任せるのよっ!!」

ブルマの声で急いで家の中へと入っていく村人達を見た後、ブルマは悟空に声をかけた。

「さあっ孫くん!頼んだわよっ!!」

「わたし達って、お前もなんか手伝ってくれるのか?」

「祈ってあげるわっ!!も怪しまれるから家の中に入って!!」

「...え?」

ブルマはを引っ張って中に入れると、勢いよくドアを閉めた。

「作戦通りにやるのよっ!!!」

「めんどくせえなぁ...一発でやっつけちまえばいいのによ」

(十中八九ばれると思いますけど...そのときは拷問でもしましょうか...)

悟空の様子を見ていたが内心物騒なことを考えていると、スーツを着た鬼が花束を抱えて悟空の元へと歩いてきた。

「へっへっへ、お迎えに来ましたよ。かわいいお嬢さん」

(...本当に見掛け倒しですね...ブルマさんでも倒せるんじゃないですか?)

「あらら?おヨメさんになるのに持っていくのはその棒だけですか?」

「そうだ!早く連れてけよ!」

「バ、バカ!下手な演技ね!!そんな言葉遣いじゃ怪しまれるじゃない!」

「ブルマさんもあまり声に出すと気づかれますよ?」


「ほらー、怒らないで?グレちゃだめ!ボクちゃんホントはすっごくやさしいんだからね!」

ウーロンがそう言ったとき悟空の体がブルッと震え、それを見たが不思議そうに首を傾げる。

(?、怖がってる訳ないでしょうけど...でも、演技が出来るほど器用では無いと思うんですけどねぇ...)

「おや?震えてますね...そうか!!この姿が怖いんだね!!よーし、じゃ...変化っ!!!」


  BOB!


「これでいかがかな?お嬢さん?それとももうちょっとヤングマンの方が良いかな?」

「あら〜〜」

爆発音の後、煙が晴れるとウーロンの姿は30代後半から40代の男の姿へと変わっていた。

「ん?」

「は、はじめましてブルマと言います。16歳でーーっす♥えへ♥えへ♥」

「.........ブルマさん...」

「ほぉ...バ、バストのサイズは、い、いくつかな...」

85!!!

目をハートに変えてウーロンに挨拶するブルマに、は心底疲れたようなため息を吐いた。









あとがき

ドラゴンボール第八話終了です。
主人公はいつの間にかブルマさんの保護者のようにもなってきました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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