3人がパオズ山を出発して20分ほど経った。


   バイイイーーー...ン

    ウィィィィー...ン



「わっ!!!!」

「...おや?」

「ぎええええーーーーっ!!!!!」


     ドンッ!
  キーーーーー...ッ!

      ドサッ!   ズザザザザザザザ...キッ!



「ぷーーーっ」

「あー、ぶったまげた!!す、すげえ技だな今の!空飛んだぞ!!」

「ふ、ふふ...ま、まあね...」

「思ったより急になってましたからね。悟空、怪我はないですか?」

「おう」

思った以上に急だった峠でジャンプしたバイクに跨ったまま、は後ろの乗っている悟空を見た。

悟空も驚いたようだが、どちらかと言うとワクワクとしている顔に見える。

「ちょっと失礼、待っててすぐ来るわ」

「え?なになに!?どこ行くの!?」

「あんた鈍感ね!!レディがこう言ったら、オシッコに決まってるでしょ!!」

「なんだションベか」

「悟空の場合、女性に会ったことがなかったんだからしょうがないと思うんですけど...」

「おろ?何でションベするのに、あんなとこ行くんだ?ここですりゃいいのに...へんなやつ」

「悟空、女の子というのはそういう所を見られるのを嫌がるものなんですよ」

「へぇー、そうなんか」

2人が和やかに話していると、ブルマの悲鳴が聞こえてきた。

「ん?」

「...悟空、ちょっと見てきてもらえますか?一応人通りが無いとは言え、バイクだけ置いておくわけにもいきませんし」

「おう!」

の言葉に頷いて、悟空がブルマのいる方へと走っていく。

しばらくするとブルマの声が上から聞こえてきたため見上げると、翼竜のような生き物がブルマを連れて飛んでいた。

(...ライフルなら届くでしょうけど、ブルマさんも一緒に落ちてしまいますしねぇ...どうしましょうか?)

が上を見ながら考え込んでると、悟空が走ってきてブルマの乗っていたバイクにまたがった。

「?、悟空?」

「の、乗れるかな!!確かここんところを...」

「...(ジャンプするつもりですかねぇ?)...そこを手前に回すんですよ」

「こうか?...ととと!!」

に言われたとおり動かすと、悟空の乗ったバイクがふらふらと動き始める。

「や、やった!!動いたぞーっ!!!よーし!!よーし!!...ヴオンわへっ!!!!」

「...アクセル全開ですか」


   ドヒューーーーーーーーーーーーン


「ひょええーーーーーーーーーーーっ!!!!」


悟空の乗ったバイクが全速で峠を駆け上がり、先ほど以上に高くジャンプする。

「うーん、少し届きませんね...っと、なるほど。良い判断です」

わずかに届かなかったバイクを乗り捨て、如意棒を伸ばして翼竜の首にたたきつけた悟空を見て、が笑みを浮かべる。

さらに翼竜を気絶させたあと、如意棒を投げてブルマの袖に通し、岩場に止めたのを見て、は子供の成長ってはやいなぁと感慨深げに頷いていた。










    第六話    海ガメ









ささやかなアクシデントがあったが、それ以降は特に何事もなく旅は順調に進んで行った。

「なあなあ、あと玉4つ集めればいーんだろ?簡単だなー」

「なーに言ってんのよ、あんたイナカもんだから知らないでしょうけど、世の中広いのよ!」

「そうですね。やっぱり自分で体験してみないと分からないことって多いですから、これからいろいろなものを見て体験するのも良い経験ですよ」

「ふーん......なぁ、オラ腹減った」

「暗くなってきたし、今日はここまでね」

「分かりました」

がバイクを止めると、後ろに乗っていた悟空がひょいっと飛び降りた。

「今日はここで野宿か!」

「やーねー、デリケートなわたしが野宿なんて出来るわけ無いでしょ?」

「?、どうすんだ?こんなとこ家なんかねえぞ」

「カプセル、カプセル」

(あれだけの量のカプセルはかなりの金額になると思うんですけど...)

「えーーーーっ!?その何とかかんとかちゅーのは、家まで飛び出してくるんけ!?」

「ホイポイカプセル」

「知らない人には『何とかかんとか』では通じませんから、全部は無理でも『カプセル』という呼び方は覚えましょうね」

「おう」

「あそこんとこにきーめた!ホラ!投げるわよ、離れて、離れて!」

ブルマに言われて2人が離れると、爆発音と共に小さめの家が現れた。

「...............」

「ほら何してんの、入りなさいよ」

「ああ、先に入っててください。食糧をとりに行って来ますから」

「?、食糧くらい中にあるわよ」

「ええ、でも悟空には足りないでしょうし、元々それはあなたの食糧ですから」

「気にしなくても良いのに。あんた律義ねー」

「あはは、性分な物で...悟空はブルマさんと中に入ってて下さいね」

「...お、お前ほんとに魔法使いかなんかじゃ無いんだろうな!!」

「あんた野宿する?」

「悟空には刺激が強かったようですねぇ...じゃあ、ちょっと行って来ますね」

そう言っては、暗闇に包まれた森へと入っていった。







1時間ほどしてが戻ってくると、悟空がカプセルハウスの外でオオカミとムカデを丸焼きにしていた。

「ただいま、悟空...もしかして(というか絶対)自分で獲ってきちゃいましたか?」

「おかえりー!おう、オラが獲ってきた!」

「ちょっと!!も変なもん獲ってきたんじゃ無いでしょうね!!!」

「いえ...私は魚と鶏肉と果物ですけど...女の子に血生臭いところを見せるわけにはいきませんから、遅くなりましたけど」

「何でそういう気遣いを孫くんに教えとかないのよ!!」

「そう言われましても...」

「おーい、ホントに食わねえのか?そろそろ焼けるぞー!」

「うるさいわねっ!!そんなの食べるわけないでしょう!!!」

「...(味は悪く無いんですけどねぇ)悟空が獲ってきたものなら、1人で食べても良いですよ。というか、足りますか?鶏肉と魚も焼きますか?」

「おう!」

と悟空は外で獲ってきたものを焼いて食べると、カプセルハウスの中に入っていった。

「ふーっ、さーて寝よ寝よ!」

「あんたちゃんと歯磨いてよっ!!!、あんたはお風呂!!孫くんと一緒でお風呂入ってないんでしょ!」

「悟空と違って、水浴びをしたり体を拭いたりはしてますよ。悟空はお湯に浸かるのが苦手でしたから」

「いい訳は良いからさっさと入ってきて!!」

「はいはい」

怒鳴るブルマに苦笑しながら風呂に入り、髪を拭きながら出て来ると、ブルマが悟空の隣に床に毛布を敷いているところだった。

はこっちで寝てよね、もう孫君は寝ちゃってるけど」

「私はそこの椅子でかまいませんよ。日が昇る前に起き出しますから、起こしてしまうかもしれませんし...年頃の女性はあまり寝顔を見られたくは無いでしょう?」

「...ホントに何でそういう気遣いを教えとかないかなぁ」

「まあ、あそこには女性がいませんでしたから。先に寝ててください。電気のスイッチはこれですよね?」

「そうよ。じゃあ、オヤスミー」

「おやすみなさい」

そうしてブルマがベットで、悟空が床で、が椅子で眠りについた。







次の日、いつものように夜が明ける前から起きだしたは、日課となっている鍛錬をしていた。

朝日が昇り始めたころ、突然カプセルハウスの中から悟空の声が聞こえてきた。

はまだ何か驚くようなことがあっただろうかと、首を傾げながら中に入っていった。

「んもー!ビックリするじゃない!寝ぼけないでよね!!」

「おや、悟空寝ぼけてたんですか?」

「そうなのよ、いきなり玉がないって言ってさぁ。ビックリしちゃったわよ」

「あはは、すみません。あ、台所借りますね。昨日の魚と鶏肉が残ってるので...ブルマさん何か食べたいのありますか?」

「私が食べられそうなやつだったら何でも良いわ。間違っても昨日の孫くんみたいのは作んないでよねっ!!」

「分かってます。飲み物はコーヒーですか?」

「そう、お願いねー」

に朝食の準備を任せると、ブルマは鏡台に向かって身だしなみを整え始めた。

はブルマの準備に時間がかかることを見越して、先に悟空に朝食をとらせてからブルマの分を用意し始める。

朝食をアッという間に平らげた悟空が、まだ鏡台に向かっているブルマに話しかける。

「まだー?お前のろいなー、カメになっちゃうぞ」

「うるさいわねー、何がカメよ!だいたいねー、あんた達が早起き過ぎんのよ!」

髪をとかしながらブルマが鏡に映っている悟空に反論する。

「それとさあ『お前』って言うのやめてくれる!?わたしの方がふたつも年上なんだから、みたいに『ブルマさん』って呼んで欲しいわね!」

「言いにくいからヤダ」

「どこが言いにくいのよっ!!」

「悟空は呼び捨てでしか呼んだことありませんからね。砂糖とミルクはどうしますか?」

「いらないわ。あんたも飲む?コーヒー」

「オラ、その汁苦いからキライだ」

「まあ、悟空には苦いでしょうね」

「体操でもしてこよっと」

「あまり遠くに行かないで下さいね...というか、私も出てますか?着替えるんでしょう?」

「うん...子持ちじゃなかったら彼氏に欲しいくらいね」

「あはは、ありがとうございます。着替え終わったら呼んで下さいね」

はブルマの言葉に、笑いながら外に出て行った。

が出て行ったあと、ブルマはテーブルに並べられた朝食を見てため息をついた。

「彼氏って言うより、お嫁さんの方が良いかしら?」






「んんんーーーー...!!」


     ばごっ!!!


が外に出ると、悟空が岩を抱え上げて粉々にしたところだった。

(...あれは体操って言わないことを教えた方が良いでしょうか?)

「んーーーーーーーーーっ!!」

悟空が勢いよく次の岩に向かって走り出し、岩を持ち上げると、岩が驚きの声をあげた。

「「え!?」」

悟空とが揃って驚きの声をあげまじまじと見ると、それは岩ではなくて海ガメだった。

「あいつ、ホ...ホ...ホントにカメになっちゃった...!!」

「...は?」

「お、お前がのろのろしてるからだぞっ!!」

「?」

「悟空、流石に人がカメになったりは...」

「なーに?あんたら誰としゃべってんの?」

2人の声にドアを開けてブルマが顔を出す。

「あれ?」

「ん?ん?何これ、カメ!?」

「お前じゃないのか?」

「アホ!!」

「うーん、やっぱり一般常識くらいは教えておくべきだったでしょうか?」

「それって、今更じゃない?...でも、これって海ガメじゃないの?何でこんなところにいるのよ」

そのとき黙って話を聞いていた海ガメが、ブルマに話しかけた。

「す、すいません。塩水を1杯いただけませんか?出来ればワカメも添えていただいて...」

「贅沢なカメねー」

「まあ、良いじゃないですか。海水と同じ濃度でいいんですよね?」

「はい」

は塩水を作るために家の中へと入っていった。

がカメが飲みやすいようにバケツに塩水を持ってくると、カメはごくごくと塩水を飲み始めた。

「ぷはーっ!あ、ありがとうございます!...実はわたくし...カメなんです」

「みりゃ分かるわよ!!!」

「海ガメなのに松茸狩りに来たのが運のツキで、みんなとはぐれるわ、道に迷うわで...もうかれこれ1年ほども海を求めてさまよい歩いております...」

「ふーん」

「海ですって!?てんで方向違いじゃない!それにカメにはかなりの距離よ」

そう言ってブルマは中から地図を持ってきた。

「ほら!南へ約...120公里(キロ)

「ひゃ、120公里(キロ)ですか...!?」

「オラ達がそのウミってとこへ連れてってやろうか!?」

「えっ!!ホ、ホントですか!?」

喜びの声を上げる海ガメを遮って、ブルマが怒鳴り声を上げた。

「何言ってんの!!ジョーダンじゃないわよ!!後30日しか無いわよ!!そんなことしてる暇ないわ!!」

「のんびりしてたくせに」

「時間のムダだわ!!ほっときなさいよカンケイ無いんだから!!」

「じゃあ、オラだけで行って来る」

「悟空、私も行きますよ」

「勝手にしなさいよ!!!その代わり、二度と私の前に顔を見せないでちょーだい!!!」

怒鳴るブルマをよそに、悟空が海ガメを背負う。

「疲れたら変わりますからね」

「おう!でぇじょぶだ!!」

「ス、スイマセンね...」

「イーだ!!」

海ガメを背負って走り出した悟空と、それについていくにブルマが後ろから悪態を吐く。

がそれに苦笑してしばらくすると、後ろからバイクのエンジン音が聞こえてきた。

「ちょ、ちょっとーっ!待ちなさいよー!!!しょうがないから、私もついてってあげるわーっ!!!」

「あれー?二度と会わないんじゃなかったか?」

「あんた、ホントにかわいくないわねー...」

「1人じゃ怖いんだろ」

「ホ...ホッホッホ、バカいわないでよ。わたしの狙いはあんたの持ってるボールよ!」

(ブルマさんも意地っ張りですねぇ)

「...何よ、

「いえ、別に」

苦笑しているにブルマが少し顔を赤くして睨みつけると、はにっこりと笑って流した。









あとがき

ドラゴンボール第六話終了です。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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