が自分の家で依頼報告書を作っているとき、携帯電話が鳴った。

ピピピピピピピピ...

「ん?...また悟飯さんですか」

は相手を確認すると苦笑して電話に出た。

「はい、です」

『おお、久しぶりじゃのぅ』

「...一昨日もそう言ってませんでしたか?」

『ほっほっほ、そう言えばそうじゃった』

楽しそうに笑う悟飯に、はため息をつく。

『これ、ため息をつくことは無かろう』

「...無意識なので無理です」

『やれやれ、しょうがないのぅ』

「(原因はあなたなんですが...)それで、どうかしたんですか?」

悟飯の反応に呆れつつも、は悟飯にたずねた。

『おう、そうじゃった。実はのう『オギャー!!!』

悟飯の声を遮って、大きな泣き声が携帯から響き渡った。

「...え?」

『これこれ、泣くでない』

「え?え?」

『ゥギャーーー!!!』

『これこれ、いたたたたた!』

「......(混乱中につき思考停止)」


 −数十分後−


『やれやれ、やった眠ったわい。勝手に話を止めてしまって悪かったのぅ』

は悟飯の声にはっと気がつくと、急いで返事をした。

「あっ!いいえ。えーと悟飯さん、今のは...」

『おお、そのことで相談したことがあってのぅ』

「は、はい...」

はまだ少し混乱したまま、緊張気味に返事をした。

『実はのぅ、昨日赤ん坊を拾ったんじゃが...育てたことが無いからどうしたものかと思って困っておったんじゃ』

「え?パオズ山でですか?...その子の親は?」

『空から降ってきたんでのぅ。さっぱり判らん』

「......はい?」

悟飯の言葉に、は固まった。

『しかもこの子には尻尾が生えておっての。そのせいで捨てられたのかも知れん』

「...ちょっと、待ってください」

『なんじゃ?』

悟飯の言ったことで混乱したは、何とか落ち着こうと一人考えにふける。

(空から降ってくるって...しかも尻尾って...いや、それ以前に)

「悟飯さん、驚いてないんですか?」

『ん?この赤ん坊のことか?』

「はい」

『ほっほっほ、まぁ多少は驚いたがの。前に言ったじゃろう?ここでは何が起きてもおかしくは無いと』

「...そうでしたね」

悟飯の考えに大きくため息をつきながら、なんとか言葉を返した。









     第五話   親になった日









『それと...にこの子を育てるのを手伝ってもらいたいんじゃがのぅ』

「それはかまいませんけど?」

少し言いにくそうに悟飯が言うと、はためらいもなくその頼みを聞き入れた。

『ほっ?いいのか?』

「ええ、仕事の方もすぐに片付きますし...それに山の中では、その子の服やご飯がそろわないでしょう?」

『うむ、実はそうなんじゃ』

の問いに悟飯は困ったような声で言った。

「でも悟飯さん、私もさすがに赤ん坊を育てたことは無いですよ」

『おや?そうじゃったか?』

「ええ。まあ、知識だけならありますし、子どものいる友人に聞けば何とかなるとは思いますけど...」

『実際にやっていけば、そのうちに慣れてくるじゃろう』

「そうですね。仕事を終わられて、必要なものも買い揃えてからになるので、そちらに行くのは明後日の午後になると思いますけど...大丈夫ですか?」

『まあ、何とかなるじゃろう。幸い、赤ん坊も元気が有り余ってるほどだしのぅ』

は電話ごしに聞こえた泣き声を思い出して苦笑する。

「分かりました。それでは、明後日に」

『よろしく頼むぞ』

「はい」   





  −2日後−

「さてと、こんなものでしょうか?」

の前には大量の粉ミルク・洋服・布オムツ・おもちゃ、他にもベビーベットやおんぶ紐・育児書まで1日でそろえたとは思えない量の荷物が並んでいた。

それらをは巨大な木箱にテキパキとしまっていく。

すべて入れ終えると、辺りを見回した。

「忘れ物は...大丈夫ですね」

そう言うと、木箱に手を当てて強制転送《ムーヴ ムーヴ》を発動させた。

  





  シュッ!   ドスン!!

「っと!...周をしておいて正解でしたね。えーと、悟飯さんは...」

が悟飯の家のほうを見ると、ちょうど悟飯が中から出て来るところだった。

「ほっほっほ、ハデな登場じゃのぅ」

「すいません。うるさかったですよね?」

「なに、悟空も眠ったままだから大丈夫じゃろう」

「......え?」

悟飯が思いがけない名前を呼んだことで、は動きを止めて悟飯を見た。

「ん?言ってなかったか?拾った赤ん坊の名前を悟空にしたんじゃよ。やはり名前が無いといかんしのぅ。前にお前さんが言っておった名前を思い出したんでの」

「それで悟空ですか...」

「うむ、ワシの孫らしい名前にしたかったんじゃ」

「はぁ...」

「ほっほっほ、そうなるとお前さんは親かのぅ」

「......」

悟飯の言葉をどう受け止めたら良いのか分からず、は困惑した顔になった。

「ほっほっほ、何もそんなに難しく考えることはないぞ。見た目にはそんなもんじゃろうと思っただけじゃしの」

「まあ、確かにそうですね」

「ところで、随分とたくさん持ってきたのぅ」

の持ってきた木箱を見上げて言う悟飯に、は苦笑しながら返した。

「ええ、山の中ですからそんなに頻繁に補給は出来ないでしょう」

「そうじゃのう、足りなくなるよりはマシと言ったところじゃな」

「ええ。ところで、運べるものは運んでしまいますか?悟空の食事、あまりあげて無いんじゃないですか?」

「いやいや、ちゃんとふもとの農家から牛や山羊の乳を貰ってきて飲ませておったぞ。ただのぅ...」

言葉を濁す悟飯にが首を傾げる。

「?、何かあったんですか?」

「性格が荒くてのぅ。ワシが飲ませようとして抱き上げると、叩いたり引っ掻いたりしてなかなか大変なんじゃよ」

心底困り果てた顔で言う悟飯に、が驚いた顔をしてまじまじと悟飯の顔を見つめた。

「そういえば...小さい傷が所々に出来てますね」

「そうなんじゃよ。相手が赤子なだけに言ってもどうにもならんしのぅ」

「...まあ、いきなり親元を離されたことを考えればしょうがないかもしれませんね。悟空が私たちに慣れるまで待つしか無いですよ」

「やはり、そうなるか」

「ええ、幸い赤ちゃんなのでそれほど威力が無いですし」

「...早く、慣れてくれると言いのぅ」

「...そうですね」

2人はそろってため息をつくと、とりあえず家の中に運ぶものを相談し始めた。








あとがき

ドラゴンボール第二話終了です。
...悟空が名前だけしか出てきませんでした。
次回は出てくるはずです(...多分)。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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