「くそ〜っ!完全に閉じ込められた!!」

「オラのパンチでも開かねえぞ」

「だから入るの止めようって言ったじゃないか!!」

「目的が分かりやすいですねぇ。監視カメラとモニター付きですよ(相手の反応待ちですね)」

「何でそんなに落ち着いてんのよ!」

緊張感のないの言葉に、ブルマが肩を怒らせて叫ぶ。

それに対しては肩をすくめた軽く言う。

「そうは言っても、焦って酸素使いきったら窒息死ですよ」

「「「「チッソクシッ!!?」」」」

「なあ、チッソクシって何だ?」

悟空はブルマ達が叫んでいる言葉の意味が分からず首を傾げる。

「息が出来なくなって死んでしまうことですよ」

「のんきに説明してる場合じゃないじゃない!私達死んじゃうかもしれないのよ!!」

「まあ、あそこに通気孔がひとつあるからしばらくは大丈夫でしょう。明日以降は分かりませんが(まあ、その時は壁を壊して出ればいいんですけどね)」

通気孔があるということにほっとした途端、言外に明日まで持つかどうかと言われブルマ達はさっと顔を青ざめさせる。

そんな様子を見かねたのかヤムチャがおもむろに口を開いた。

「ハナクソの秘密をそっと(・・)くそ(・・)う!!」

「「「「「......?」」」」」

「...............」

一瞬その場が静寂に包まれる。

「ヤ...ヤムチャ様...何ですか?今の発言...」

「.........シャレだ」

「そんなしょーもないシャレを言っとる暇があったらここを抜けだす方法でも考えろよ!!」

「黙れ!!今のは自信があった!!!

「...地震?」

地面が揺れてた様には感じなかったけどなぁと思いながらが首を傾げる。

無意識に自信を地震に変換するほどヤムチャのシャレは面白くなかったらしい。

「人がせっかく雰囲気を和ませてやろうと思ったのにその態度はなんだ!?」

「和んだというよりもあなたが痛々しかったというか憐れだったというか微妙なところですね」

「うっ!」

「...結構キツイなお前」

「?」

はどの辺りがきつかったのか分からず本気で首を傾げた。











     第十九話     人質












『おいお前たち!!私はピラフ大王だ!!』

「あっ!!」

(眉なし三白眼?...頭もハゲてそうですね)

のモニターに映し出されたピラフの容姿についての感想は酷評だ。

「あんたね!!私のドラゴンボールを奪ったの!!」

『そのドラゴンボールだがひとつ足らんぞ』

「おい、あのマド割ったら抜け出せるぞ」

「アホか。あれはテレビジョンだ...!」

「あそこにアレがいるのではなく、離れた所からその窓のような所に姿を送って見せているんですよ」

「へぇ〜」

『星の4つ入ったボールを持っているはずだ!!今のうちに素直に渡さんと後悔することになるぞ!!』

「誰がお前なんかにやるもんか!!アッカンベ    だ!!」

『く......!!』

が説明している間もピラフの話は進んでいた。

ブルマもピラフもふたつ同時に話を聞くことはできないので、ピラフを「アレ」とどうでも好さそうに言ったのを聞きそびれた。

『よ〜〜〜〜〜し、どうしても渡さんつもりだな...エッチなことするぞ!!』

「え!?」

天井の一部が開き、そこからUFOキャッチャーのようなアームが伸びてきた。



     バキッ



『「......へ?」』

ブルマを掴まえる前に関節部分をあっさりと壊したに誰もが唖然とする。

天井の穴から侵入しようかと思ったが、壊れた場合は自動的に戻されるらしく、アームの先以外が収納されて天井が閉じてしまった。

(まあ、天井がそれほど厚くないことが分かったのは収穫ですかね?)

『ま......まあ、いい...エッチなことはここからでも出来るのだ!』

「何!?しまった!マズイぞ!!」

「わ...わくわく...」

「エッチってどういうことなんだ?」

「エッチとは性的にいやらしい様、またはそういう人を指す俗語のことです」

「セイテキ?イヤラシイ?ゾクゴ?」

「この場合の性は男性・女性という性別のことですね。いやらしいはそのまま嫌な感じですね。俗語とは単に使われているだけで知識としてあつかわれない言葉のことです」

「へ〜」

「エッチって言う言葉から何で話が国語の授業見たくなるのよ」

『...おっほん』

の話をうっかり真面目に聞いてしまったピラフが取り繕うように咳払いをした。

『ふっふっふ...白状するなら今のうちだぞ!さあ言え!!最後のドラゴンボールはどこだ!?』

へんっ!!誰が言うもんですかっ!!!」

『なるほど...そんなに恥ずかしい目に会いたいのか...では望みどおりに...』

「た、耐えろっ!!頑張るんだっ!!」

怯んだように息を呑むブルマにヤムチャが声をかける。

『......ちゅぱっ』

「.........え?」

(...バカ?)

『ど、どうだ!!さすがに喋る気になっただろ...!!』

「.........今の何?」

『な...な...な...投げキッスだ...!!』

『きゃーっ!エッチーッ!』

『言わないで下さいよ〜』

どうやらピラフの部下たちには効果絶大だったようだ。

「それがそうしたのよ」

!!

「えらい!!よく耐えたぞっ!!」

「へ!?」

(何か耐えるようなことありましたっけ?......ああ、生理的嫌悪感ですか!)

の考えに悪気は全くないのだがかなり辛辣(しんらつ)だ。

「(生理的嫌悪感は置いておくとして)あなた精神年齢三歳以下ですか?子供の頃や家族のスキンシップで頬へのキス位普通でしょう?」

「そうよね。私も子供の頃パパやママにされたことあるし...今時赤ちゃんだってそんな幼稚なことしないわよ」

「赤ちゃんの場合しないのではできないのでは?」

「言葉のアヤよ!っていうか、私てっきり裸にされてへろへろとかパフパフとか、きょいきょいとかいんぐりもんぐりとかされるかと思っちゃった!!」

「へろへろとかきょいきょいとか何ですかそれ?」

「え!?分かんないの!」

「パフパフという言葉は友人がやってたド○○エというRPGにあったので知ってますけど...えーと確か、女性にしてもらうこと、お金を取られることがある、部屋を暗くして行うことのどれかを満たしていれば良いんですよね?」

「......ってホントに成人してるの?」

「成人してなくてもウーロン君は分かったみたいですけど?」

「あれは別よ」

きっぱりと言い切ったブルマにはそういうものなのかと頷いた。

長い2人の会話で自失していたピラフが元に戻ったらしく、眼を剥いて体を引いていた。

『な、なんといういやらしい奴だっ!!よ、よくそんなエッチなことが思いつくな!!』

『『へ、変態だっ!!』』

「あ!切られた!」

ぶつんと音を立ててモニターが消された。

「...対面せずにこちらを無効化する方法だと毒ガスですかねぇ」


     シュ〜〜〜   


「あ!!」

「まっまさか!?」

音を立ててモニターの下から噴き出してきた煙があっという間に部屋に充満する。

「ゴホッ!ゴホッ!うわ   っ!!」

「なっなんだ!この煙はっ!?」

「いや   !死にたくない!!」

「大丈夫ですよ。ただの睡眠薬ですから」

「あ、睡眠薬なの...って、何でそんなに落ち着いてるのよ!?」

「ブルマさん、そんなに騒いでると薬が早く回っちゃいますよ...遅かったようですが」

「ぐ〜〜〜〜...」

煙が通気孔から次第に出て行っているらしく、煙に覆われていた徐々に視界が晴れてきた。

ブルマは壁に寄りかかるようにして、ヤムチャは床に横たわり、他の3人はヤムチャを枕にして眠っている。

はその様子に苦笑をもらした。

悟空たちをヤムチャの上から度かそうかどうか悩んでいたが、近くまで来ている気配にスッとへを細める。

「はっはっは!よく眠って...」

「いるわけないでしょう」


    バキッ!


んぎゃっ!?...んげっ!!

「「なっ!?」」

通路を塞いでいた壁が上がって行き、壁際で絶をしているに気づかずピラフがガスマスクもつけずに高笑いをした。

がそれを見逃すはずもなく、腹を蹴られたピラフは通路の端まで飛ばされ壁にめり込んで止まった。

ピラフの部下達−ドラゴンボールを盗んだ犬の忍者(?)と長い黒髪の女性−はガスマスクをつけていたので顔は見えなかったが、が眠らずにいたこととピラフを蹴り飛ばしたことに驚愕していた。

「...」

「ヒィッ!」

が無言で横を向くと、目が合った犬の忍者(?)は悲鳴をあげた。

同じように蹴り飛ばそうと足を振るった時、黒髪の女が声をあげた。

「待てっ!!」

「......ヒィイイぃイ!!!」

犬の忍者(?)いつまで来ない衝撃に恐る恐る目を開くと顔のすぐ横での足が止められていた。

「こいつらを殺されたくなかったらシュウから離れて!」

「...いいでしょう」

ちらりとヤムチャたちに銃を向けている女と撃鉄(ハンマー)の起こされて銃を見て頷きとともに言葉を返す。

「シュウ、リモコンを使って鉄球付きの手枷と足枷を出して拘束するのよ!」

「...へ?」

「早く!」

「は、はいぃ!!」

女の命令に犬の忍者−シュウ−はびくりと体と揺らして何度も頷くとリモコンを取り出して操作する。

その間、女は一番体の小さいプーアルを腕に抱えを警戒していた。

しばらくすると天井から4本のアームが伸びてきての手足を拘束する。

足枷は片足を拘束するタイプのものが両足に付けられ、手枷は手錠のような形で腕の自由を奪っている。

また足枷にも手枷にも大きな鉄球が付けられていて、重さは合計でおよそ200kgほどになるだろう。

「はっはっはこれで動けまい!」

「シュウ笑ってないでドラゴンボールを探して!」

「え?でもこいつもう動けないじゃないか」

「そいつを見なさい。こんな状態で平然としてられる様なヤツ普通じゃないわ」

「それは失礼。もう少し焦って見せるべきでしたか?」

は女の言葉を肯定するようにうっすらと挑発的な笑みを浮かべる。

その笑みを見た2人はブルリと身体を震わせた。

「シュウ早く!」

「わ、分かった」

恐怖を振り払うかのように放たれた女の言葉に、シュウは慌てて従う。

「ん!あった!!!!!」

「よし!!!下がるわよ」

しばらくして悟空の身につけていた袋からドラゴンボールを探し出すと、2人はプーアルを人質に取ったまま後ろに下がった。

そして通路の仕掛けがあるところまで来るとプーアルを投げ飛ばし急いで壁を下ろした。

「っと!乱暴ですねぇ」

投げ飛ばされたプーアルは床に叩きつけられる前に重りなど付けてないように動いたによって受け止められた。

なお、壁の向こうでは部下たちが今まで忘れていたピラフを引き抜くのに大忙しだった。













あとがき

ドラゴンボール第十九話終了です。

18話   戻る   20話