「う〜〜〜ん・・・」

「おはようございます。起きて直ぐですみませんが、今の状況分かっていますか?」

「状況?......あッ!ドラゴンボール!!」

ブルマの叫び声に、眠っていた悟空たちも起き出した。

「ふぁあ〜もう朝か〜?」

「メシか〜?」

「ん〜?」

「寝惚けてる場合じゃないわよ!!ドラゴンボールは...って、何それ!?」

「ドラゴンボールなら盗られましたよ。これはピラフとかいう小さいのを蹴り飛ばしたんですが、皆さんに銃を向けられて人質にされたため拘束されただけですよ」

「俺達を人質にだと!?」

手足を拘束されたを見て驚いているブルマ達に説明すると、ヤムチャが愕然とした表情で叫ぶ。

「ええ。とはいえ、皆さん眠っていて動けませんでしたからそれほど落ち込む必要はないと思いますけど」

「落ち込むにきまってるでしょ!ドラゴンボール盗られちゃったのよ!!」

「盗られただけでまだ使われたわけではないでしょう?使われる前にここを抜けだして盗り返せばいいだけです」

「そうか!はっ!!!

の言葉を受けヤムチャが壁を壊そうと力いっぱい殴りつける。

悟空も蹴りを放つが壁はびくともしない。

「駄目だっ!!この壁硬すぎてとても破れんっ!!」

「蹴りでもびくともしねえぞ」

「もう駄目だわ...!!みんなで眠ってた間にあいつら願いをかなえてもらっちゃてるかもしれないわ...!!」

「まあ、大丈夫でしょう。もうしばらくなら余裕があると思いますよ」

「何でそんなことが言えるのよっ!?」

「ピラフを蹴り飛ばしたと言ったでしょう?あれが起きる時間もブルマさん達と大して違いはありませんよ。とは言えいつまでも余裕があるとは言い難いので...」

が手足に着いた重りの重さなど感じさせずに壁際へ移動すると、全員が口を大きく開けて唖然とする。

「危ないのでちょっと離れていてくださいね。そうそうその位で良いですよっっと!」


     ドカッ!

        ドカン!!


「「「ええ〜〜〜〜っ!!?」」」

「なっ!?」

「おお!!すげぇぞ!」

「ありがとうございます。とはいえ貫通しただけで人は通れそうにありませんね」

左右の腕から伸びていた鉄球を勢い良く振り回して開けた穴からは外の様子がうかがえたが、人が通るには小さすぎた。

「あっ!!奴ら外にいるぞ!しめた!!まだ龍は出ていないようだ!!」

「え!!」

驚愕から真っ先に我に返ったヤムチャが穴から外の様子を確認しながら言う。

その声につられてブルマがヤムチャを見る。

「プーアル!!蝙蝠(コウモリ)に化けてこの穴を抜け出せ!!今のうちに奴らからドラゴンボールを奪うんだっ!!」

「はいっ!!」

「アッタマいいーっ!!」

「危なくなりそうなら無理しないで下さいよ」

蝙蝠に化けたプーアルにが忠告すると、ブルマが後ろにいたウーロンを振り返った。

「何ボサッとしてんの!!ウーロンあんたも行くのよっ!!」

「へ!?お、俺が?...」

「たまには役に立ちなさいよ!!ピーピーピー...!!」

「わ、分かった!分かった!!行くっ!行きます!!」

ブルマに脅されてウーロンも蝙蝠に化けると、二人は慌ただしく穴を抜けてドラゴンボールの元へ飛んで行った。

出でよドラゴン!!そして願いを叶え給え!!!

プーアル達がドラゴンボールまであと半分のところまで来たとき、ピラフの叫び声と共にドラゴンボールから光をまとった巨大な龍が出現した。

「うわっ!!!うわわわわわわっ!!!」

「ま、間に合わなかった!!!(ドラゴン)が出ちゃった!!!」












     第二十話     鉄の箱












「まずいっ!!もう(ドラゴン)を呼び出してしまったぞ!!」

「あ     ん!!も、もう駄目だわーっ!!」

「おいっ!オラにも見せてくれーっ!!」

「大丈夫ですよ。直ぐに居なくなる訳ではありませんから。あ、ほら見えるようになりましたよ」

「うわ    っ!でっけえなー!!あれが龍か    !!」

「東洋の龍ですね。悟空、ああ見えてあの龍は魚の仲間なんですよ」

「へーそうなんか」

「ええ。(うろこ)が魚のものと同じでしょう?」

「くそ    っ!!!この世はあんな奴の言いなりになってしまうのか!!!」

「せっかく苦労してここまで来たのに    っ!!!」

と悟空は割と暢気に話しているが、ブルマ達はかなり悔し気に叫んでいる。

「さあ願いを言え。どんな願いも一つだけ叶えてやろう...」

「で、では願いを...」

ピラフ達から少し離れたところで変化を解いたウーロンとプーアルは完全に腰が引けていた。

「こ、こりゃあかん。に、逃げるしかなさそうだぞ!!」

「う、うん。そうみたいだね...」

「......ん!!(そ、そうだ!!あいつより先に言ってしまえば...!!)」

「え!?」

龍に向って勢いよく駆け出したウーロンに、プーアルが驚きの声を上げる。

「わ、わたしは世界を...」

「ギャルのパンティおくれ    っ!!!!!」

突然後ろから聞こえた声にピラフ達は目を丸くして驚いた。

しばらくそのまま誰もが固まっているとウーロンの頭に空からふわりとパンティが落ちてきた。

「願いは叶えてやった。ではさらばだ」

その言葉とともに龍が消えると、ドラゴンボールが光をまといながら宙に浮かび上がり散り散りに飛んで行った。

ピラフ達はその様子を呆然としたまま見送るしかない。

「やったぜあの野郎!!」

「ざまあみやがれ  っ!!ウーロンのスケベが役に立ったわ!」

「ドラゴンボールみんなパ   ッて飛んでっちゃったぞ!!」

喜んでいる2人に悟空がそう言うと、ブルマが振り返って説明する。

「ドラゴンボールは願いが叶えられるとまたバラバラになってそこらじゅうに飛んでっちゃうのよ」

「じゃあオラのじいちゃんの形見の球もどっか行っちゃったのかっ!?」

「残念ながらそういうことね...」

「で、そのことをブルマさんは隠していたと?」

「え?いやぁ、その...あはははは...」

「まあ、そのことは後で聞くとして...ウーロン君たち捕まってしまいましたよ」

「「「ええっ!!」」」

たちは捕まったウーロンとプーアルを人質にされ、壁が分厚い鉄でできた部屋へと移された。

「何と言う情けない...あっさり捕まるとは!」

「しょぼん」

「しょうがねぇだろ。あいつら光線銃持ってるんだから...」

ヤムチャの言葉にプーアルは肩を落とし、ウーロンは頭にパンティを被りながら文句を言う。

「今度の部屋は壁に穴も開けられんぞ。すべて鋼鉄でできている...」

「何言ってんだ。天井が開いてるじゃねえか!」

「駄目ね...超強化ガラスが貼ってあるわよ」

「はっ!!!」

「あ、悟空跳んだら『ガン』ぶつかりますよって...遅かったですね」

「い、いて!!いって〜〜〜っ!!」

「だから駄目だって言ったでしょ」

ガラスがどんなものか知らなかった悟空がジャンプして見事に頭をぶつけると、膝を抱えて座っていたブルマが呆れたように言った。

「くそ〜!何としてもここを抜け出さないと再びドラゴンボールを集めるどころかやられてしまうぞ...!」

「当分ドラゴンボールは集められないわ...」

「何?」

「あの7つの球は一度願いを叶えてしまうと再びドラゴンボールとなるのに1年以上もかかるらしいの。つまり1年経たないとただの丸い石コロよ...探せないわ...」

「い...いい...1年...!?」

「あかんわこりゃ...」

「1年以上(・・)と言うことは、もしかして願った内容によって期間が変わるんでしょうか?」

「さあ?そこまでは分かんないけど...」

(い、1年も俺は女が苦手なまま過ごさなきゃいかんのか...)

「この漫画のタイトルどうするんだろう...」

「漫画?」

かなり真剣に悩んでいるヤムチャの横で呟いたウーロンの言葉に、が首を傾げているとスピーカーから声が聞こえてきた。

『やいお前たち!!さっきは良くもこのピラフ様の世界征服を邪魔してくれたな!!お前たち全員を処刑してやる!!!』

「ふ〜ん、処刑ねぇ」

『ぐっふっふっふっふ。安心しろ。わしは野蛮なことは好きくない...じわりじわりと殺してやることにする!!』

どこか挑発的なの声にピラフは笑いながら答える。

『天井がガラス張りになっているのに気付いただろう。この辺の昼間は太陽がきつくて暑いぞ〜〜!その中はまるでオーブントースターのようになるはずだ...!!干からびて苦しんで死ねっ!!ぎゃははは!明日が楽しみじゃ!!!』

「ちくしょう!そ、そういうことか...!!」

「ど、どうしよう...!!サンオイル持ってないわ!!お肌が...お肌が...!!」

「お前死にそうにないな...」

ブルマの言葉に呆れたようにウーロンが言う。

「け...結婚の夢が...」

「この若さでミイラになるのはいや    っ!!」

焼豚(チャーシュー)になるのもいやーっ!!」

「おしっこしたい    っ!!」

「腹減った...」

「はいはい、皆さん落ち着いてくださいね『バキッ』っと」

「「「「「え?」」」」」

が手枷を力任せに引きちぎると、全員口をポカンと開けて固まる。

足枷も取ると部屋の隅に放り投げる。

「脱出方法はちゃんとあるから焦らないでください。あれらが寝静まった頃に行動を開始しますから、それまで騒いで体力を削るようなことはやめて下さいね」

「あ、ああ」

腹減った...」

「食事はここを出てからになりますから、もう少し我慢してくださいね」

「うん」

何とか返事をしたヤムチャといつも通りの悟空以外は、しばらく唖然としたまま固まっていた。











あとがき

ドラゴンボール第二十話終了です。

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