最後のドラゴンボール、一星球はレーダーによれば間近にまで迫っていた。
道の周辺には西へと向かっているエアカーとバイク以外は、巨大化したキノコしかない。
「う〜ん...かなり近づいてきたわね!」
「どの位ですか?」
「私たちのいるのが此処でしょ。で、ここが一星球のあるところ」
「確かに、もう少しですね.........?」
レーダーを見せながら話すブルマに頷き返した時、たちの様子をうかがう視線に気づいた。
は不自然を感じさせない程度に視線を動し辺りをうかがう。
「お前、性格暗いぞ。ちょっと危ないとすぐ逃げちゃうんだもんな!」
「くどいな〜...お前は性格がねちっこいんだよ!」
「ああいう時に逃げられたら、これ位の愚痴は普通でしょう?」
「......ところでよ」
ウーロンがかなり苦しく話題を変える。
「一度聞いてみたかったんだけど、ブルマさあ、ドラゴンボールが集まったらどういう願いを叶えてもらうんだ?」
「ほっほっほ!!言わなかったっけ?恋人よ!!素敵な恋人!!」
「なにー!?恋人!?俺たちが命懸けで手伝ってやって、そんなしょーもない願いかよ!!」
「しょーもないとは何よ!ふんっ!ガキには分からないのよ!!」
「まあまあ、世界の崩壊だの、天変地異だのを願われるよりはずっと良いじゃないですか」
「それは極端すぎないか?」
そんな呆れたようなウーロンの声を聞きながら、は視線を向けてきた相手を確認した。
(どこかへ連絡したようですね。地図では私有地ではありませんから警備員ではないですね。山賊にも見えませんから、お金や人質が目的じゃないとすると...狙いはドラゴンボールかな?向こうもレーダーを持っていると仮定すると、待ち伏せをしていた理由も分かりますし)
「こんなに苦労して集めてるんだぜ!もっとかっこいいことに使えよ!」
「うるさいわね!大きなお世話よ!!対して役にも立ってないくせに!!」
「悟空跳んで!」
「!?」
ブルマ達が口論している時、が当然叫ぶ。
悟空がそれに従おうと足を曲げた瞬間、エアカーにバズーカほどの大きさの弾丸が命中した。
第十八話 矢印と罠
悟空は体勢を崩しながらも足元を蹴り、くるりと一回転して着地する。
の方もバイクを横に滑らせながら座席を蹴って飛び、車外に放り出されたブルマとウーロンを受け止めて着地した。
「な...何?何があったの?」
「うぐぐぐ...な...何だ?」
「あ〜、ビックリした...!!」
「やれやれ、ずいぶんと乱暴な...と、御出ましのようですね」
「え?」
がそう言うのとほぼ同時に、胴体部分に操縦席、右手がバズーカ、左手が作業用のアーム、昆虫のような足が四本という形のロボットが現われる。
そのロボットは壊れた車の傍に降り立つと、何かを探し始めた。
「きゃ!!」
「な、何だあいつ...!?」
その様子を思わず呆然と見ていた3人とは別に、はロボットに近づいていく。
「あった!!」
「えい」
余りやる気のない声の割に、蹴りが綺麗に決まった左腕からはバズーカ大きく弧を描いて飛んで行った。
「ギャ っ!!?」
「叫んでないで、それ置いて行って下さい」
「しゃ、しゃいなら っ!!」
中に乗っていた忍びのような服を着た犬人は、大量の冷や汗を掻きながら打ち上げロケットのようにロボットを発射させた。
「変わったやつだなあ...」
「は、早く捕まえてっ!ドラゴンボールを盗まれたのよっ!!」
「空を飛んで行きましたし...お願いしてもいいですか悟空?」
「おう!筋斗雲よーい!」
悟空の声ですぐに飛んできた筋斗雲に乗ると、ロボットの飛んで行った方へ向かった。
「無理して奪い返さなくてもいいですからねー!」
「ちょっと!なんてこと言うのよ!!」
「ただのオレンジ色のボールより、自分の息子の方が大事なだけです」
「うっ...そうかもしれないけど...」
「そうかもではなく、そうなんです」
「う〜〜〜〜〜〜〜...」
きっぱりと言い切ったに、ブルマが唸る。
「でも、なんであいつらドラゴンボールのこと知ってたんだ?」
「ブルマさんと同じように、調べたんじゃないですか?以前集めた人が王になったと分かるくらいなんですから」
「そうか...ドラゴンボールのことを知ってる奴がいてもおかしくはないわね...昔の文献にもちゃんと載ってるんだから...」
ブルマが深刻そうな顔で呟いた。
「なあ、なあ、もう諦めようぜ!今度こそヤバそうだよ!」
「そうはいかないわよ!」
「よし!!俺が恋人になってやろうじゃないか!!」
「なってもらわんでええわい!!」
「あ、帰ってきましたね」
漫才のようなやり取りをしている横で、はこちらに向かってくる悟空に気づいた。
「やっほ 」
「お帰りなさい」
「あッ!!どうだった!?」
「やっつけたぞ」
ブルマの問いに筋斗雲から降りた悟空が答えた。
「...で、ボールは!?」
「なかった」
「何しに行ったのよ!!」
「悟空、車を壊した物の近くに...こんな人がいませんでしたか?」
「ん〜?...見てない」
ロボットが乗り物も兼ねていたことを知らないだろう悟空に、さっき見た犬人の顔を地面に描いて見せた。
悟空はそれに首を横に振りながら答えた。
そんなやり取りをしている横で、ブルマはがっくりと膝をついて嘆いた。
「ああ〜っ!!もうダメだわ!きっとあいつら最後の1個持ってるんだわ...!!盗られたボールを合わせたら、7個全部そろっちゃう...!!」
「え?6個でしょう?」
「オラのがあるじゃないか」
「はっ!!」
不思議そうな顔で言うと、自分の腰にあるボールを皆ながら言った悟空の言葉に、取り乱していたブルマが顔を上げて立ち上がる。
「がっはっは!!あいつめ!1個忘れておるわい!!ザマーミロ!!」
「立ち直りが早くて何よりです。で、どうしますか?」
「ドラゴンレーダーでドロボウの居所が分かるわ!!さあ、行くわよ!!7個全部いただくのはこの私だわ!!」
(取られた5個はともかく、1個は相手のものなのを忘れてますね...そんな堂々と泥棒宣言しちゃダメでしょうに)
「行くわよ...ったって、どうやって...車は壊れちまったぜ」
「ふんふんふーん!この前ちゃ んとカプセルを買ったわよー!」
「...そのカプセルは車の中ですか?」
がそう言うと、ブルマの動きがぴたりと止まる。
「カ...カプセル...ボールと一緒に、カバンの中...」
「そう言えば、のバイクは?」
「はっ!そ、そうよ!ちょっと狭いけど、のバイクで行けば!」
「バイクなら、あそこですが」
「へっ?」
の指差したほうを見れば、見事大破したバイクがあった。
「な、なんで!?」
「バイクが滑って行った後、巨大キノコにぶつかりましたからね。幸い燃料がなかったので、爆発はしていませんが...(私としては、キノコの思いがけない硬さにビックリです。どれだけ強度のある菌糸なんですか)」
「う、うわ ん!!」
移動する乗り物が無くなったと知ったブルマが、泣きだしてしまう。
その傍らでは、たちはどうしたものかと顔を見合せた。
そんなとき、ヤムチャとプーアルの乗ったエアカーが近づいてきた。
「おやおや !?こりゃまた、偶然だな 。こんなとこで何してんの ?」
「あ!!ヤムチャ!!」
「お久しぶりですね(意外と早く出てきましたね)」
「きゃーっ!!ヤ、ヤムチャ様 っ!!」
非常にわざとらしく挨拶をしてくるヤムチャに、はにっこりと笑って言う。
「実は私たち西に向かっていたんですけれど、ご覧の通り乗り物が壊れてしまって...私や悟空はともかく、ブルマさん達には歩いて向かうのはキツイだろうと言うことで、困っていたんですよ。向かう方向が同じようですし、ブルマさんとウーロン君を乗せてあげて欲しいんですけど」
「ああ、もちろんいいよ!困った時はお互い様さ !」
「ありがとうございます」
「きゃーっ!ありがとうございます〜!!」
「やっぱ、良い奴だなお前!」
「ホントにいいのか!?」
そして、もともと2人乗りのエアカーの座席にヤムチャとブルマが乗り、プーアルとウーロンは座席の後ろのにあるトランクの蓋に乗ると、走り出した。
と悟空は筋斗雲に2人で乗って、エアカーの横を飛んでいく。
途中ブルマがヤムチャに頬ずりし、エアカーが大きく蛇行するということがあったが、何とか無事に目的地までたどり着いた。
悟空たちは、目の前にそびえ立つ小さな城ほどの大きさの建物を見上げた。
「ここよ、ここ!」
「でかいな っ」
「はあっ、はぁっ...」
「ヤ、ヤムチャ様、大丈夫ですか!?」
「さて、着きましたけれど、ヤムチャ君はどうしますか?」
「...え?」
ブルマから離れ、肩で息をしていたヤムチャにそう尋ねると、意味が分からなかったのが、疑問の声が漏れる。
「私たちも目的地はここ何ですけれど...ちょっと取られたものを取り返しに忍びこむので、ここにいるのは危ないと思いますよ」
「あ、ああ。そうだな。俺たちも付いて行こう」
「いいんですか?私達から離れている方が安全だと思いますけれど...」
「い、いや!こ、困っている人を助けるのは当たり前だよ!な、なあ?」
「え、ええ!そ、そうですよ」
「それなら、これ以上は言うことはありませんが、気をつけてくださいね」
何度も首を縦に振る二人に、はこっそりと笑った。
「おーい、入るぞー!」
「分かりました...先頭は悟空にお願いしてもいいですか?私が殿を務めますから」
「おう」
「悟空の後はブルマさん、ヤムチャ君、ウーロン君とプーアル君でいいですか?」
の言葉に皆頷いた。
目の前にあった扉を開いて建物中に入る。
「気をつけた方がいい。敵はタダ者じゃなさそうだ!」
「そ...そうね」
「そ〜...っと」
「あまり離れすぎないでください。分断されると厄介ですから」
以外、壁に背を預け、ゆっくりと足を動かして音を立てないように進む。
最後を歩いていたため、普通に歩いていても音のしないには誰も気づかなかった。
「ん!?何だ!?これ」
「矢印だ...何だろう...」
「この方向に何かあるのかしら...」
「道順を示したら侵入者にばれてしまいますから、先にあるのは、入られても害が無い所か、罠かだと思いますよ」
床に書いてある矢印を見てが言うと、ヤムチャは少し考えた後言った。
「行ってみよう...道で行き先が分からないなら、相手の反応を見よう」
「ここにもあるぞ」
「罠だった場合はどうしますか?」
「これだけ人数がいるんだ。何とかなるだろう」
(そう上手くいきますかねぇ)
さらに廊下を進んでいく。
「あれ?行き止まりだ」
「急いで戻...」
が『戻って』と言う途中で、分厚い壁が下りてきて閉じ込められた。
「...れませんね」
「しっ、しまった っ!!
「閉じ込められた!!」
その様子を見ていた相手が、「よく、あんなアホらしい罠に引っかかったな」と言っていたが、あいにくこの中にはそれを聞いた者はいなかった。
あとがき
ドラゴンボール第十八話終了です。
17話
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19話