フライパン山から西へと向かうこと数日、道の両脇に木ではなく、巨大なキノコが何本もそそり立つ地域へとやってきた。

「変なとこだなあ」

「変なところですねぇ(なぜあんなに巨大化したキノコが...)」

しみじみとが言うと、今は後部座席にいるブルマが頷いて、ウーロンを見た。

「ねえ、ウーロン。この辺りに町かなんかないかしら?」

「知らないよ。こんなとこまで来たことないもんな」

「そうなんですか...町があったら野菜を買おうと思ったんですけどねぇ」

「何で野菜限定なのよ?」

「だってここ数日お肉ばかりでしょう?だからと言って、この辺りの野草には詳しくありませんから、採取するわけにもいきません。お肉ばかりじゃ、栄養が偏ってるでしょう...それに、成長期の悟空にはきちんとした食事を作ってあげたいですし」

「...、あんたいいお嫁さんになるわよ」

「私(今は)男なんですが」

ブルマの言葉にが苦笑とともに返した時、メーターを見たウーロンが困ったような声をあげた。

「まずいなあ、燃料がなくなってきたぞ...」

「そう言えば、車はいただきましたが、さすがに燃料はいただいていませんでしたね」

「もう少しは大丈夫だと思うけど...」

「...あれ?そう言えばのバイクの燃料は平気なの?」

今気付いたというように声をかけたブルマの声に、ウーロンもそう言えばとを見る。

「大丈夫ですよ。このバイクはソーラーエネルギーで走っているので燃料は必要ありませんから」

「へぇ〜、ソーラーカー...この場合ソーラーバイクってやつか。話には聞いてたけど、初めて見たな」

「...話していませんでしたか?」

「聞いてないわよ...それより、あんたのバイクってホントにありえない構造してるんじゃない?ソーラーカーなんて、パネルのせいで無駄に大きいし、今の段階ではせいぜい最高時速30kmくらいしか出ないはずよ」

「えっ!?の乗ってるバイクはこの車と同じ速さで走ってるじゃないか」

「よく分かんねえけど、の乗ってるやつは普通のより大きいんか?」

「いいえ。大型バイクとしては、普通の大きさだと思いますよ」

「だから、それがありえないって言ってんのよ!」

ブルマは腕を組んでを、正確にはの乗っているバイクをだが、じっと見ながら言葉をつづける。

「ソーラーパネルも見たところハンドルの下についてる所だけだし、そんな小さいので集められるエネルギーなんて、せいぜい豆電球1つ点けるのがやっとのはずよ」

「それじゃあ、何でのバイクが走ってんだよ?」

「そんなこと知らないわよ...に聞けば分かるだろうけど」

片方はじっと、もう片方は運転中のためチラチラと、に視線を向けてくる。

悟空は話についていけなくて首を傾げているが。

「...まあ、このバイクの97%ほどは私のオリジナルですから。高エネルギー吸収のソーラーパネルもその1つです」

「ちょっと!高エネルギー吸収のソーラーパネルなんて、今まで見たことも聞いたことないわよ!?」

「そうでしょうね」

「そうでしょうねって...」

「言ったでしょう?これは私のオリジナルの1つですって」

「...もしかして、作るだけ作って発表してないのっ!?」

「はい」

「なっ...............何考えてんのよあんたっ!?馬鹿じゃないのっ!!」

絶句した後、を怒鳴りつけたブルマに、悟空とウーロンが驚いた。

は怒鳴りつけられたことに苦笑しているだけで、大して気にしてはいないようだ。

「なあ、それって発表しなきゃいけないもんなのか?」

「当たり前じゃないっ!!」

「当たり前って...何でだ?」

「あ〜っ!!これだからイナカ者はっ!!いいっ!?説明してあげるからちゃんと聞くのよっ!!」

「うん」

「...はい」

ブルマの勢いに押され、頷いた悟空とウーロンを見て少し落ち着いたのか、声を元の大きさに戻して説明を始めた。

「自分が作ったものが、誰もまだ作っていない初めてのものだったら、特許って言う届けを出すのが普通なのよ」

「ふ〜ん」

「ああ、聞いたことはあるな」

「で、その特許を出しておけば、自分が作ったものを、他の誰かが勝手に作っちゃいけなくなるの。その代わり、作っていいと本人が許可を出せば、たいていは特許料っていうお金が入ってくるのよ」

「じゃあ、届けを出してないは、誰か他の奴が同じのを作るかもしれないし、金も入ってこないってことだよな?」

「そういうこと...ぱっと見ただけではっきりとは言えないけど、たぶんそのソーラーシステムだけでも億単位のお金が入るはずよ」

「おっ!?億っ!!!!?」

目を見開いて驚くウーロンとは異なり、悟空はきょとんとした顔でブルマを見ている。

「その金っつうのをもらうと、なんかいいことがあるのか?」

「「.........」」

「そうですね...町などに行った時に、お金を使う代わりに食料を手に入れたり、食事をしたりすることができます。他にも服や、今乗っている車やバイクなどを手に入れることができますよ」

「へぇ〜、山のふもとに行ったとき、塩とか皿とかもらう代わりに魚や肉なんかをやるようなもんか?」

「そうですね。悟空は理解が早いですね」

「へへっ、そうか?」

ほのぼのとした会話をしている2人とは反対に、ブルマとウーロンは絶句していた。

「いまどき物々交換なんて...」

「どんな田舎だよ...」

とりあえず、お金に執着がない理由は分かったらしい。










   第十七話    ウサギ










「助かった     っ!!町があったじゃない!!」

「燃料が入れられるぞっ!!」

「.........?」

ほどなくして町についた4人が周りを見回すと、町の人たちがギョッとした顔で4人を見ていた。

「オッス!!」

「っ!!きゃーっ!!」

「......何だ...?」

「...怯えられているようですけれど」

近くにいた少女に挨拶をしただけで、悲鳴を上げて逃げられた悟空と一緒に、は首を傾げた。

周りの人たちの目は、ブルマへと集中している。

「ここのやつら、お前見てびびってるぞ」

「え?何言ってんのよ?」

「一応、そうみたいなんですけど」

「もう、まで冗談言わないでしょ」

「満タン頼むぜ」

「は、はい...!え、液体プラニウムですね...」

「おう、そうだ」

スタンドでそんなやり取りをした後、はバイクをカプセルに戻して荷物を持った。

「それじゃあ、私は食料を買い込んできます...量が量なので、少し遅くなるかもしれませんが」

「オラはここで待ってる」

「私も買い物してくるわ。待ってて」

が食料を買うためにブルマと違う方向へと歩いて行くと、やはり怯えたような視線を向けられることがなくなった。

(やっぱりブルマさんに怯えていたんですかねぇ...理由は分かりませんが)

そんな事を考えながら、は両手で持てるぎりぎりの量を買い、このままでは車に積みこめないことに気付いたため、カプセルの冷蔵庫を購入した。

もちろん、そのお金はブルマのではなく、の所持金とカードで支払った。

買った冷蔵庫がかなり大型のものだったので、どうせならと、それにぎゅうぎゅうに詰め込める量をさらに買い足してから、スタンドへと戻ってきた。

食料はほとんど冷蔵庫の中で、の両手に抱えられている紙袋の中に入っているのは今日の昼食分だ。

それでもかなりの量があるが。

がスタンドに戻って来ると、そこには似合いもしないウサギ耳をつけた男2人と、2人に痛めつけられている悟空、そして人参を手に持ってその様子を眺める2足歩行のウサギがいた。

それを見たは、問答無用で...

「うちの子に何してるんですかっ!!」



   どげし!!


      どしゃっ




「「ぐおっ!?」」

...男2人を蹴り飛ばした。

「...あれ??」

「何してるんですか、悟空。あんなに弱いのに蹴られっぱなしで」

「あいつら、ブルマを人参にしちゃったんだっ!!」

「...人参?」

の眼がウサギの持っている人参に向けられる。

「さわっとオラも人参になっちまうから、如意棒でぶったたこうとしたら...あいつら、人参を食っちまうって...」

「で、黙って殴られてたんですか?」

「うん」

頷いた悟空に苦笑を向けたあと、はウサギに視線を向けて行った。

「悟空、そういうときはですね...」

「うん?」

「相手が食べるより早くやっつけてしまえばいいんです」

「あ、そっか!」

「「「げっ!!」」」

の言葉にぎょっとした3人(2人と1匹)は数歩後ずさった。

ウサギは後ずさりながら、人参を高くかかげた。

「そ、それ以上、ち、近づいたら、この人参を地面に叩きつけますよっ!」

「きったねえぞっ!!」

「近づかなくても攻撃する方法もあるんですけれど」

「な、何、負け惜しみを...『ぱくっ』...っ!?あっ!!」

ウサギが話している途中、どこからともなく飛んできた鳥が人参をくわえて飛び去って行ってしまった。

「は      っ!!」




  ばかっ!

    べきっ!!



「孫!!!!人参は取り上げたぞ!!如意棒で奴を叩きのめせっ!!」

「あ...あわわわわ.........」

屋根の上から飛び降りてきたヤムチャが男2人を気絶させて、たちに叫んだ。

「ん?あれ    っ!?久しぶりだな    っ!どうしてここに!?」

「本当に久しぶりですねぇ。そういえば、私ヤムチャ君に名乗ってなかったと思うんですが(まあ、隠れている時に聞いていたのは知ってるんですが)」

「いいから、早くやっつけろっ!!」

暢気な2人にいらついたヤムチャが叫んだ。

「よ〜し...よくもやったな〜〜〜〜〜〜」

「おっ、お待ちなさい!!、は、話し合いましょう!!わ、私を殺したら、人参になった女の子は元に戻りませんよっ!!」



   ガンッ!!!



往生際悪く言いつのるウサギを無視して、悟空は如意棒を伸ばして振り下ろした。

「おーっ!!おおっーっ!!」

「はい、人参!」

「あ!サンキュー!!」

「ありがとうございます」

ウサギが頭を押さえてうめいている間に、プーアルが渡してきた人参を受け取る。

「おい!この人参もとに戻せい!!命だけは助けてやるからさ!!」

「ホッ、ホントですかっ!?はっ、はい、分かりました!!...へい!」

「......ん?」

ウサギが片足で立って手を叩くと、人参はブルマの姿へと戻っていた。

ブルマが戻ったのを確認するとすぐに、は男2人とウサギをそろらへんにあった縄で縛って蹴とばした。

「「「イタッ!」」」

「自業自得です。大丈夫ですか、ブルマさん?」

「わ、私どうしてたのかしら...」

「ヤムチャたちが助けてくれたんだぜ!」

「え        っ!!あ、あのお方が!?どこ!?どこ!?」

「あれ?どっか行っちゃった...」

「まあ、そのうち会うこともありますよ(そこの影に隠れてるのは、内緒にしといてあげましょう)」

がにっこりと笑って言うと、ブルマは残念がりながら諦めた。

「それど、この3人はどうしましょうか?」

「ん〜...お前たちをどうするかというと...」

「ひいい〜〜〜〜〜っ!!お、お手柔らかに...!!」

悟空はウサギの言葉に答えず、地面に如意棒を突き刺した。

「棒よ!!うんと伸びろ!!」

悟空の言葉とともに、棒は雲の上まで伸びていった。

「ちょっと行ってくる!」

「はい、いってらっしゃい」

悟空が3人を結んでいる縄を持って如意棒を登るのを見守っていて、ははたと気づいた。

「どこに行くのか、聞くのを忘れました」

「...どこに行くのか分かってたんじゃないの?」

「いえ、ついいつもの癖で...」

そんな会話をしてしばらく経った頃、悟空が如意棒を滑るようにして戻ってきた。

「ただいま     っ」

「おかえりなさい」

「あんたどこに行ってたのよ?」

「ウサギは月だ!!」

「え?」

「...月ってこんな短時間で行ける場所でしたっけ?(それ以前に、月を見て悟空は大丈夫だったんでしょうか?)」

ちょっと何でもありのような気がしないでもないが、にとってはウサギのことよりも、悟空の怪我の方が気になるので、治療に専念することにした。










あとがき

ドラゴンボール第十七話終了です。

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