轟々と燃え盛るフライパン山を前にして、体調が戻った亀仙人は感嘆の声を上げる。

「なるほどの...これがフライパン山か...すごいもんじゃ」

「じいちゃん、あんなのホントに消せるのか?」

「大丈夫だと思いますよ。亀仙人さん...武天老師様とお呼びした方がいいかもしれませんが...ただ炎の勢いに感心しているだけですし」

「それだと何でダイジョブなんだ?」

「ひるんでいたり、冷や汗をかいていないってことは、何かしら消す方法があるからだと思いますよ」

亀仙人に疑問を投げかけた悟空に、亀仙人ではなくが答えた。

そんな2人のやり取りを聞きながら、亀仙人は牛魔王に顔を向けた。

「これ、牛魔王よ!」

「は、ははっ!!」

「お前、評判が良くないのう...己の宝を守るためとはいえ、幾人も殺生しているらしいではないか」

「はっ、はは〜〜〜〜〜っ!!す、すべてお見通しで...!!」

牛魔王は亀仙人の言葉に土下座をして謝った。

「ま、まことにおはずかすい限りですだっ!!つ、つい、欲にかられますて!!もういいです!!火さえ消えれば宝など捨てますっ!!」

「まあ、捨てることはないだろ...もったいない」

「捨てるくらいなら、どこかに寄付をするか、博物館でも開いたら如何ですか?」

「...へっ?」

「どうせ取っておくだけで使い道がないなら、いくらかのお金を頂いて皆さんが見えるようにした方がいいんじゃないですか?そうすれば、人目がありますから宝を奪おうとする人も減るでしょうし、無駄に戦う必要もなくなると思いますよ」

「な、なるほど...そういう考えもあるだな」

「お前、面白い考え方するのぅ」

「そうですか?」

「...まあ、そういう方法も検討してみるのもよかろう。それにしても、あれごときの火が消せんとは情けないのう...」

そう言うと、亀仙人は杖の先で悟空をつつきながら、声を落して言った。

「お、おい。おい。例の条件...」

「え?ああ、そうか?」

「例の条件?」

「コホン...コホン...」

が不思議そうに首を傾げると、亀仙人は咳で誤魔化した。

「あのさあ、じいちゃんがお前に頼みがあるんだってさ」

「え?あたし?」

「ブルマさんにですか?」

「コホン...ちょ、ちょっとこっちに。他の者はそのままでいいから」

「?、何なの      ?」

たちから離れ、瓦礫の一部となった塀の影に行った亀仙人たちに、残った者たちは首を傾げる。

あいにく、こんな暑いところであるせいか虫が見られないため、『小さな蜜蜂(シークレット アイズ)』を使うと不審がられるだろうと思い使っていないので、にも何を話しているのか分からない。

ヤムチャたちの盗聴用の『小さな蜜蜂(シークレット アイズ)』は、車の下にこっそりとつけてあるため、見つかる心配はないが。

まさか話の中身が、火を消す代わりにブルマの胸をつつかせろという内容だとは誰も思うまい。

「あ、話し終わったみたいだべ」

「...?」

「何だったんだろ...?」

「さあ?...でも、亀仙人さんはずいぶんと機嫌が良さそうですね」

の言葉の通り、満面の笑みで戻ってきた亀仙人が言った。









   第十五話    初めての『かめはめ波』










「よーし!!山の火を消してやるぞーい!!」

「おおっ!よ、よがっだ!!ありがとうごぜえますだっ!!」

「よ、よろすく!!」

「ウム」

牛魔王たちの言葉に頷くと、亀仙人は背負っていた亀の甲羅を脱ぎ、その上に着ていた上着と杖を置いた。

その下から現われた武天老師の体にはほとんど筋肉が見られず、ガリガリである。

「ふう...わし、セクシーじゃろ」

「はい、はい」

亀仙人の言葉にブルマが適当に相槌を打つ。

「よっこらせ......く、くく!」

「ほれ、しっかり」

「大丈夫ですか?」

「と............ととと......!!」

ふらふらとしながら、悟空とに手を貸してもらい、亀仙人はやっとのこと塀の上に立った。

「よ、よっしゃ。行くぞ...!んん〜〜〜〜...」

亀仙人が深く吸い込んだ息を、気合のこもった声ととも吐きだした。

「はっ!!!」



  ずごごご・・・!!




「「「げげげげげげっ!!!!」」」

「...(ビスケさんと同じと考えていいんでしょうか?)」

亀仙人が発した後、その体は隆々とした筋肉で3倍にも膨れ上がった。

「で、出るだっ!!武天老師様の『かめはめ波』!!!」

「体内の潜在エネルギーを凝縮して一気に放出させる技ですよね...しかし、悟飯さんがやった時はあんな風に筋肉が膨れ上がらなかったはずなんですが...

あいにく後半は声が小さかったせいか、誰も聞こえなかったようだ。

............」

ゆっくりとした操作で両腕を構え、両手を花のように合わせてさらに力を練る。

そして、最も高まった状態で手を前に突き出した。

波!!






  カッ!!!









亀仙人の手から放たれた光の塊を、その場にいた者たちのほとんどが呆然を見ていた。

「ぷひゅ〜〜〜〜〜...ほれ、消えたぞい...」

「た...た...たた......たまげた......」

「すごい破壊力ですねぇ」

「あ、あんの〜、老師様......た、た...たすかに火は消えますたけんど...」

「?、なんじゃい?」

「後ろを見ていただければ、お分かりになりますよ」

「...つ、ついてに、や...山も城も...」

「へ!?」

「あっ!!ないっ!!」

「........................」

「見通しが良くなりましたよねぇ」

冷や汗をかきながら消えた山の方えお見ていた亀仙人が、ののんびりとした声で、顔を戻した。

「...張り切りすぎちゃった!!てへっ!」

「......今度からは、ご自分の力をきちんと把握していただけると助かります」

「あはは...すまん」

「まあ、いつまでもそこにいるわけにはいきませんし、降りてきたらいかがですか?」

「ウム」

は塀から下りる亀仙人から、ブルマへと目を移した。

「ブルマさん、ドラゴンボールを捜しに行かないんですか?」

「はっ!そうだったわっ!!行くわよ、ウーロン!!」

「俺だけかよ!?」

文句を言いながらもブルマの後を追ってウーロンも吹っ飛ばされた城へと走って行った。

「おっ!火が消えて涼しくなってきただよ!またここも過ごしやすくなるべ!!」

「いや〜、すまんかったのう。城まで壊してしもうて...」

「何言うだ!城は立て直せばええだよ!!」

「チチちゃんは、度量が大きいですねぇ」

「そ、そっだらことねえだよ!!」

の言葉に少し顔を赤くして否定するのを、微笑ましく見ていた。

「すげえ技だな!!じいちゃん、オラにも教えてくれよ!」

「ふぉっふぉっふぉ、そりゃあ無理じゃよ。かめはめ波を会得するには50年は修行せんとの...」

「50年もか...ふ〜ん...」

じっと両手を見つめつ悟空に気付いたは、話の輪を抜けて悟空へと近寄って行った。

「悟空、試してみたいんですか?」

「うん」

「そうですね...それじゃあ、手のひらに体全体の力を集めるつもりでゆっくりと手を前に出して...」

「むむ〜...」

「手を引きながら、手のひらに集まった力をさらに練って、全部を小さな塊にまとめるつもりで集める...」

「う〜」

「力が集まった思った瞬間に、手を前に出して放つ!」

「はっ!!!」



   ばぼん!!!



「「!!」」

「へ!?」

悟空の手から出た『かめはめ波』が車に当たった音で、亀仙人たちが振り返った。

「.........で...出た...」

「筋がいいですね。悟空は気を放出するのは(強化系の技より)得意ではないと思ってたんですけれど」

「でも、亀仙人のじいちゃんには全然かなわないな...」

「まあ、そのあたりは基礎能力の底上げと経験でしょう。付け加えると、さっきのように気を放出するやり方もありますが、こういうふうに手を気で覆って...」

!手が光ってるぞ!?」

「これも先ほどのと一緒です。これを気とかオーラと言います。こちらでは気という呼び方が一般的ですね。話を戻しますが、気で覆った手で殴ると」

ゆっくりと(・・・・・)近くにあった塀にが拳を近づける。



   ドゴン!!!



「「「「いっ!!?」」」」

それに悟空が首を傾げる暇もなく、が軽く殴った壁は粉々に砕けた。

「と、まあこんなふうになります。これはどちらかというと、自分の体の強度を上げる気の使い方ですね」

ぽかんと口を開けと驚いている悟空に説明をしているという組み合わせを見ながら、牛魔王が感嘆の声を上げる。

「す...素晴らしい...さすが悟飯さんの息子と孫だべ...」

「何っ!?悟飯って孫悟飯か!?」

「あれ?老師様知らなかっただか?」

「なるほどのう...」










あとがき

ドラゴンボール第十五話終了です。

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