ヤムチャの攻撃から辛くも(?)逃れた4人は、6つ目のドラゴンボールを目指し、フライパン山へと向かった。

そして北へ向かい2日が経った。

「ねえ、フライパン山はまだなの?」

「もうすぐそこだよ」

「それにしても何?この暑さ...!ここ割と北のほうなのに...」

「確かに...シダや常緑樹はともかく、ヤシの木まであるのはちょっと異常ですね」

「フライパン山のせいだ...」

後部座席に座っているブルマと、バイクで並走するが口に出した疑問にウーロンが答えた。

「フライパン山はもともと涼景山というしのぎやすいところだったのだが、10年ほど前に天から火の精が落ちてきて、燃える山となり気候も変わってしまったらしいぜ」

「燃える山?火山活動ではなくてですか?(ヤシの木がこんなに繁殖するのって10年で可能でしたっけ?...まあ、何でもありの世界ですしね)」

「いや、火山とも違う......見ろ!!あの山だ!!」

道の両脇にそびえていた岩が途切れ、見通せるようになったその先に、言葉の通り燃える山があった。

火山のようにマグマが流れるのではなく、山全体が巨大な炎に包みこまれている。

「ひえええ〜〜〜〜〜〜っ!!」

「...確かに燃える山ですね」

「すげえな!!」

ブルマが悲鳴に近い声を上げ、と悟空が目の前に広がる光景に感嘆する。

「うわ〜、これじゃ暑いわけだわ...!!」

「これだけ離れてこの暑さということは、近づいたらもう少し気温が上がりそうですね」

「な、なあっ、もう行くの止めようぜっ!!牛魔王もいるしよ!!」

車を止めてその山を眺めていると、ウーロンが切羽詰まった声で言った。

「...で、その牛魔王って言うのは何者なのよ」

「お前ホントに知らんのか!?は!?」

「私も(この世界にいる)14年間のほとんどを山の中で生活してましたし...(悟飯さんから聞いたのは、弟弟子としての牛魔王さんでしたからねぇ)」

「とにかく、ムチャクチャ恐ろしい奴で、悪魔の帝王とか呼ばれてるぐらいだぞ!!」

「物騒な呼び名ですねぇ」

「...とにかく、あの山に近づく者はみ〜んなこれだ...!!」

暢気なの言葉を無視して、ウーロンは横にした手を首にあてて言葉を続けた。

「殺されるわけ...?」

「あらあら」

「...あの山の天辺を見てみろ。城があるだろ。あれが牛魔王の城でよ、その中にそこらじゅうから奪った金銀財宝が置いてあるもんだから、いろんな奴がそれを狙ってやってくるんだが、牛魔王が見張ってるからな...」

「じゃあ、6つ目のドラゴンボールもあの中ね」

遠目で城を眺めながらブルマが呟く。

「じゃあ牛魔王はあの中にいるのか?」

「どうなんでしょう?さすがにあの中にずっといたら脱水症状で倒れると思いますけど...」

「城にはいない。山のふもとで城を守ってる!牛魔王が子供とピクニックに出かけている時に山が燃えだしちまったんだからよ!」

(さすがに『あの世界』の方たちの名前も一緒ということはありませんよね...普通の人間のようですし)

「あの火はもんのすごくてよ!さすがの牛魔王も城に帰れないのだ!」

「あんたやたら詳しいわねぇ」

「当たり前だ。学校の教科書に載ってるぐらいだからな」

「へぇ、最近の教科書にはそんな事も書いてあるんですか」

「どっちかって言うと、この周辺の所じゃない?私は知らなかったし」

「あぁ、確かに。その可能性の方が高そうですね」

ブルマとが会話をしている間に、ウーロンは運転席に乗り込んでいる。

「さ!というわけだから、今のうちに大人しく引き上げようぜ!」

「バカ言いなさいよ!ここまで来て!」

「お、お前ら死にたいのかっ!?いくら悟空とが強くても、牛魔王とはケタが違いすぎるんだぞっ!?」

(一応、牛魔王さんの兄弟子よりは強いんですけれど)

「俺はごめんだぜっ!!」

「あっ!!」

「また逃げた!!」

「逃げるなら車は置いて行ってください」

ウーロンは車をバックさせて逃げだした。

それに対してだけが違う反応を示したように見えたが、ブルマもすぐさま逃亡阻止のための言葉を口にした。

「ピーピーピーピーピーピーピー...!!」

「うっ!!うおおおおっ!!」

ブルマの言葉でゴロゴロとお腹が鳴った途端、ウーロンは近くの茂みへと飛び込んだ。

「...そういや、ウーロンの奴、あの飴なめてたんだった」

「そういえばそうでしたねぇ」

のんびりと会話をしている2人をよそに、ウーロンは腹を下しながら観念していた。











   第十三話   燃える山










しばらくして、4人は山のふもとへとたどり着いた。

ふもとには瓦礫となった家々が点在し、もともとそこが街であったことがうかがえる

「んもう!!ほんっとに暑いわね    っ!!」

「ア、アホッ!でかい声出すなよっ!!牛魔王に聞かれるじゃないかっ!」

そんな会話をしている2人から少し離れたところで、は白骨死体を木の枝でつつく悟空をほのぼのと眺めていた。

「うん〜なるほど...あのお城かあ...」

先ほどの場所より間近になった炎の中の城を見上げながら、ドラゴンレーダーを取り出した。

「レーダーで見ても、あそこにあるのは確実みたいね...要するに、飛んでいけば簡単なんだ......ね    孫君!あそこからドラゴンボール持ってこられる    !?」

「え!?行ってみなきゃ分かんねえけど」

「でもあの炎の中に建ってる城なんですから、壁も床も焼けていて触れないと思いますよ」

「そんじゃ、触んないように気をつける。筋斗雲        っ!!!

「わわっ!!でかい声出すなっちゅーのに!!」

「ウーロン君の声も十分に大きいですよ」

がそう言っている間に、悟空は筋斗雲に飛び乗っている。

「ちょっと見てくる!」

「いってらっしゃい。無理はしないでくださいね」

「必ず見つけてくるのよ    っ!!」

「早く帰ってこいよ    っ!!」

三者三様の言葉を背に、悟空は城の上空まで飛んで行った。

3人がその様子を見ていると、城へ向かって下りて行った筋斗雲が、途中で急上昇する。

「......まあ、近づくだけでかなり高温ですよね」

「ほら、見ろっ!!もうダメだ!とっとと諦めて帰るしかねえよっ!!」

「んもーっ!!あいつ根性ないわねーっ!!」

「ブルマさん、少しは私の息子の心配をしてください。ところで...」



   バゴッ!!!



「「いっ!?」」

「牛魔王さんらしき方が後ろにいらっしゃいますよ...言うのが遅れましたが」

は1mほどもある巨大な斧が投げられ、すぐ横の壁に深々と刺さっている状況を平然と見やりながら言う。

「ぎええええ〜っ!!」

後ろには鎧を着こみ、顔の半分を覆い隠す兜を被った、鬚面の巨漢の男が立っている。

兜には目の部分を保護するためなのかスコープらしきものがついている。

壁に刺さった斧を引き抜きながら、男は3人を見下ろす。

「おめえたず、こっだらとごでなにすてるだ?」

「あ...あが...あがが......」

「あ、あなたギュ、ギュウちゃんね...!?」

「ブルマさん、初対面の、しかも年上の方に向かっていきなり『ちゃん』付けは失礼ですよ」

震え上がる二人をよそに、は呆れた調子でブルマの言葉遣いに注意する。

「はじめまして。と言います。あなたが牛魔王さんですか?」

「んだ。おめえたず、おらの宝さ盗みさ来たんじゃねえじゃろうな。え!?どんだ!?」

「そ、そ、そんな...わ、私たち、ほんの、と、通りすがりで...ね、ねえ!」

「は、はは、はい...!」

腰を抜かしながら言い逃れをする2人をよそに、はあっさりと牛魔王の言葉を肯定するセリフを吐いた。

「う〜ん、確かに許可を取らなければ盗みになりますから、盗みにきたで間違いないと思いますよ」

「おーい!ダメだー!!暑くて城には入れねぇよーっ!」

「バッ、バカ!!」

が言った直後に、悟空が叫びながら戻ってくる。

「おかえりなさい、暑かったでしょう?」

「ただいま!すんげー暑かった!...あら!?誰だ?おっちゃん」

「バ、バカッ!!く、口を慎みなさい!!牛魔王さまよ!!」

「も、もうダメだ!殺される      っ!!」

騒ぎ出す2人をよそに、牛魔王は悟空が乗っている筋斗雲を凝視している。

「こ、小僧っ!!それはひょっどすて、筋斗雲ではねえだべかっ!?言えっ!!誰にもらっただっ!?」

「え?亀仙人のじいちゃんにもらった。だよな?」

「ええ、アロハシャツを着てサングラスをかけ、亀の甲羅を背負った亀仙人と名乗るご老人に頂きましたよ。それはさておくとして、悟空、この方が牛魔王さんです」

「へぇ〜、そうか。おっちゃんが牛魔王か〜。ホントに強そうだな〜」

2人の言葉に、打ち震えていた牛魔王がずいっと顔を近づけて叫んだ。

「亀仙人っ!?む、武天老師様だっ!!おめえ、武天老師様の住んでるとご知ってるだかっ!?」

「?」

「「え!?」」

「亀仙人さんって、武天老師様だったんですか...(そう言えば、容姿について悟飯さんから全く聞きませんでしたねぇ)」

牛魔王の言葉に、悟空が首を傾げ、ブルマとウーロンがぽかんと口を開けて驚き、は新事実発見という感じで少し目を見開くという、何ともチグハグな反応になってしまった。









あとがき

ドラゴンボール第十三話終了です。

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