日が昇ったばかりの砂漠地帯の真ん中で停車しているハウスワゴンの運転席には、銃を持ったまま徹夜で過ごしたウーロンが座っていた。
「ふわあ...」
「おはようございます、悟空」
「おはよっす!」
普段は夜明け前から起きているは珍しく惰眠をむさぼり、悟空とともに起床した。
「やっと起きたか...」
「おはよっす!」
「おはよう、ウーロン君」
「何がおはようだ!俺は全然寝られなかったぜ!」
「何で?」
(自業自得でしょう...朝食は何にしましょうか?)
「昨日の夜またヤムチャたちが襲ってきたんだ!!」
「ヤムチャ...って、昨日のあいつか?」
「ああ。おかげで俺は怖くて寝ずの見張りさ」
「そうかー。オラ全然気がつかなかったな」
「......(くそ〜、睡眠薬なんか飲ませなきゃよかった...)」
「は気がついたか?」
「私がお風呂に入っている時に来ましたよ。そのあとは半径1km以内に近づいてないみたいでしたけど」
の言葉にウーロンがギョッと目をむく。
「なっ!?気づいてたのかよ!!?」
「気づいてましたよ。普通は誰かが敵意をもって近づいてきたら、自然と目が覚めるでしょう?」
「はすげえな。オラ、分かんなかったぞ」
「あらあら、要修行ですね」
「近づいてくる奴が分かるんなら先に言っとけよ!!俺が徹夜した意味ねえじゃねえか!!」
「でも、良い授業代にはなったでしょう?むやみに一服盛ってはいけませんっていう」
「っ!!!!?」
「?」
何で知っているんだと声には出さないが、体全体でそれを表しているウーロンには喰えない笑みを向けた。
ウーロンがそれにさらに動揺した時、体にシーツを巻いたブルマが下りてきた。
「おはようございます、ブルマさん」
「おはよう.........う〜ん...なんか頭がガンガンするわね...」
それが薬のせいだと知っているはかすかに苦笑した。
「ねえウーロン、私の服洗濯しといてくれた?」
「それどころじゃなかったぜ...」
歯を磨きながら答えたウーロンを、ブルマは怒鳴りつけた。
「何がそれどころじゃなかったのよ!?私の着る服がないじゃない!!!1日中こうしてろって言うの!?」
「ウーロンは一晩中見張りをしてたんだぞ!」
「まあ、徒労でしたけどね」
「見張り?こんなところで何が襲ってくるっていうのよ?しかも徒労じゃ意味がないじゃない」
「まあ、そうなんですけどね」
『徒労』という言葉が分からなかった悟空は、苦笑で返したの後に言った。
「お前も見ただろ!昨日の、あの奴らだ!」
「あら っ!!あの素敵な男の人!?何いってんのよ!彼なら大歓迎じゃない!!」
「まあ、なかなか愉快な青年ではありましたけどね」
「.........お前らは幸せもんじゃ...」
暢気な2人の言葉に顔を洗いながらウーロンが呟く。
「お前が着れそうな服なら1着だけ2階のタンスにはいっとる」
「あんたそれを早く言いなさいよ!!」
「簡単な裁縫くらいはできますから、服が大きかったら言ってくださいね」
「その時はよろしく!(って家事なら何でもできるのかしら?)」
どたどたと音を立てながら2階に上っていくブルマに声をかけると、機嫌の良さそうな声で返事が返ってくる。
「俺は憎たらしさには自信があったが、ブルマにだけは勝てん...」
「そうですか?あれくらいなら可愛いものでしょう」
「......あの性格を可愛いと言えるお前の気が知れん(しかも得体が知れねえし...)」
「なあ、オラ腹減った」
「お前はそのセリフばっかりだな...」
「悟空は育ち盛りですからね。さて、ウーロン君」
「何だ?」
「一服盛ったことを不問にする代わりに冷蔵庫の中身自由に使ってもいいですよね」
「うっ......分かったよ」
疑問でさえなかったの言葉と迫力に、ウーロンは後ずさりながら頷いた。
第十一話 出発
テーブルの上には大量の料理が並び、さらに空になった皿の代わりに次々に新しい料理が置かれていく。
もちろんその料理のほとんどを平らげているのは悟空だ。
「い、1か月分の食料が...」
「冷蔵庫の中身を自由に使ってもいいという約束だったでしょう?」
「そうだけどよ...」
ウーロンがもごもごと口を濁していると、大きな足音を立てながらブルマが下りてきた。
「ウーロン!!!!何よこの服っ!!!!」
「......まあ、一応服ではありますね」
「服は服でもこんな恰好で外をうろうろしてたらまるっきりバカじゃないの!!!」
「しょうがないだろ。それしかないんだから...文句言う割にはきっちり着とるくせに...」
バニーガールの姿をしたブルマが不機嫌そうに腕を組んでウーロンを見下ろす。
「まったく...どんな育ち方をしたらこんなスケベな中年みたいなが気になるのかしら!」
「幼少期の人格形成時にそう言う教育をしたらじゃないですか?...悟空、もういいんですか?」
「おう!ふーっ、食った、食った。ごちそうさまっす!」
「はい、お粗末さまでした。食べ終わったお皿を運んできてくださいね」
「分かった」
「ブルマさんの分は今運びますから、そこに座っていてください」
「ありがと。さあ、フライパン山へ出発よ。ウーロン、運転して!」
「え?俺が!?」
「あったりまえでしょ!!女の朝は肌の手入れとかお化粧で忙しいのよ!!」
「俺寝不足なんだけどな...運転ならだっていいだろ?」
「は私の朝食の準備とか、片付けとかあるでしょ」
当然というように胸を張って言ったブルマに苦笑しながらは口をはさんだ。
「あいにく、車の免許は持っていないんですよ」
「へ?何でだ?バイクは乗れてただろ?」
「バイクの免許を取ったのは悟空を育てる前なんですよ。悟空が来てからは長い間家を空けることもありませんでしたしね...無免許でいいなら運転しますけど?」
「......いい...俺がやる」
「それじゃあお願いしますね」
「文句ばっかり言ってないでさっさと出発しなさいよ」
「うう〜...ブタ使いの荒い奴め...」
ブルマの言葉に文句を言いつつも運転席についたウーロンは、車を走らせ始めた。
小1時間ほど車を走らせ、朝食の後片付けも終わったころ、ブルマは鼻歌を歌いながら化粧をしていた。
「ふんふんふふーん♪あの人また来ないかしらね〜♪」
「けっ!!何がまた来ないかしらね〜だ!!来たらやばいっつ の!」
「でもすぐそこまで来てますよ」
「おい、あれなんだ?」
の声と悟空の声が被った。
その両方の意味を理解し、窓の外に目を向けたウーロンが青ざめながら叫ぶ。
「うわわっ!!あ、あいつだ!!あいつが来たぞっ!!」
たちの乗るハウスワゴンに並走する小型のジープのような車には、昨日見た2人(1人と1匹)が乗っている。
プーアルが車を運転し、助手席に乗ったヤムチャは首から自動小銃を下げ、パンツァー・ファストという小型のランチャーを構えている。
(あの銃火器ならオイルタンクに直撃しない限りこの車が大破することはないかな?)
「えっ!?あの人!?あの人がいらっしゃったのっ!?きゃ っどこ!?どこ!?どこ!?どこにいらっしゃるのっ!?」
はミーハーなブルマの反応に苦笑する。
だが、その間にヤムチャはこちらへ向けてパンツァー・ファストを発射していた。
ブルマが窓にかじりついてヤムチャたちを探しはじめた時、運転席側のタイヤに着弾した。
どっか ん!!!
「ぎゃーっ!!!」
「...危ないですねぇ」
着弾した衝撃で体勢を崩した悟空をかばいながら、はため息とともに呟いた。
あいにくが庇ったのは悟空だけであったため、ブルマはテーブルに頭をぶつけて気絶した。
ブルマさんの頭にコブができたかなと暢気に考えながら、は土煙がはれるのを待っていた。
あとがき
ドラゴンボール第11話終了です。
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