D.Gray−man 序章




は目の前に広がる光景に、またかと天を仰いだ。

これで何度目になるのかと、数十年に1度の見知らぬ世界への移動には、毎回ため息をつきたくなる。

いくら時間を気にすることなく移動できるとは言え、の中では着実に時間を積み重ねているのである。

いつまでも現実逃避をしていても仕方ないと、は辺りに眼を向けた。

周りには人の気配はまったくない。

おそらく人里から離れているために、訪れる人もいなくなったのだろう。

そこは朽ち果てた、小さな教会であった。

崩れた壁の一角が瓦礫となって積みあがり、その隙間から外が森になっていることが分かる。

が立っているところは礼拝堂として使われていたらしく、もとは長椅子だったと思われるものがいくつか置いてあった。

祭壇はかろうじてその形を保っている程度で、十字架がかかっていなければ教会とは判断できなかっただろう。

はふと祭壇の隅におかしなものが置いてあるのに気づいた。

見た目は何の変哲もないランプなのだが、その中に淡い光が瞬いているのである。

興味をひかれて近づき、ひょいと持ち上げると、ランプの中の光はまるで水のように揺らいでいる。

それを確かめるように2、3度軽く揺すると、ふわふわと周りに光りを振りまきながら同じように揺れる。

これがこの世界の技術なんだろうかと思ったとき、その光りがランプのガラスをすり抜けてきた。

それに驚く暇もなく、光りはの胸の前でふっと消えた。

がそのことにいったい何だったんだと首をひねっていると、教会に急速に近づいてくる気配があった。

だが、その気配はまるで点滅でもするかのようについたり消えたりを繰り返している。

その気配が迫ってくる方向に首を向け、しばらくすると、轟音と共に壁が1面吹き飛んだ。

土煙の中から現れたのは、楕円形のような体の中央に面のような顔を持ち、その体を10近くの砲台が覆っている物体だった。

中央の顔はを敵意に満ちた目で睥睨(へいげい)してくる。

「...一番最初に会ったのが、敵意剥きだしの人(?)って、結構へこみますね」

がそういった瞬間、砲台から無数の弾丸が飛び出した。

それを難なく避けると、手を上げて、ため息をつきながら気弾を打ち込んだ。

その物体は気弾を防ぐこともなく、砕け散った。

砕け散る際に、中から金属製の頭蓋骨のようなものがこぼれ落ち、砕け散ったが、それに眼を向けることなく、新しくやってきた気配と向き合った。

「あんた、誰さ?」

「お主、何者じゃ?」

「どちらさまでしょうか?」

3人の質問が同時に発せられ、お互いに顔を見合わせることになった。



これが『』と、『黒の教団』との初接触であった。











ありがとうございました!

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