「「、今日はいつも以上に気をつけてね」」

早朝、部屋を出るなり現れた双子が真剣な顔で言う言葉に、は首を傾げた。

「なぜですか?というか、何にですか?」

「今日はハロウィンだから!」

「あの4人はいつも以上に悪戯を仕掛けてくるに違いないわ!」

「ああ、なるほど」

あまり馴染みはないが意味は知っている『ハロウィン』という単語を聞くと、は納得したように頷いた。

「なるほどって、そんな余裕かましてて平気なのかよ?」

「「あ、おはようジェイク」」

「おはよ。で、どうなんだ?」

「あたしもそれは気になるなー」

「おはようございます、ウィニア。どうと言われても、いつも通りに何かされたら対処するくらいしか考えてませんよ。ハロウィンだと思いだしたのは、マリアとヨハンに言われてからですし」

「そうなの?」(ウィニア以下ウィ)

「ええ、日本ではほとんどの家庭はハロウィンをしませんし」

「え?ホント?」(マリア以下マ)

「クリスマスはやるみたいだから、てっきり日本でもハロウィンをやるんだと思ってた」(ヨハン以下ヨ)

非常に意外だという顔で驚く4人に、は苦笑した。

「クリスマスと言ってもこちらのものとはだいぶ違うと思いますよ。日本ではこちらのようにと宗教的な意味合いはほとんどありませんし、せいぜい賑やかなイベントとして取り入れたという程度のものですから」

「あ、そういえば、宗教が違ったか」(ジェイク以下ジェ)

「え〜?じゃあ、なんでクリスマスをイベントにしてるの?」(ウィ)

「日本語もそうですが、日本はいろいろな文化を取り入れやすい下地がありますからね。それにお祭り好きな民族だとも言われるんですよ...まあ、何でも取り入れるせいで無宗教のようにも見られますが」

「ん〜と、要するにこっちの風習を取り入れて、自分たちが騒ぐために使ったってことか?」(ジェ)

「そんな感じですね」

4人がの話に納得したと頷いた時、ウィリアがあれ?と首を傾げた。

「もともとが気をつけなよって話じゃなかった?」(ウィ)

「「「あっ!」」」

「おや、思い出しちゃいましたか?」

「「、もしかしてワザと?」」

「半分くらいは」

にっこりと笑って言うに、双子は顔を見合わせて困ったような顔をした。

ウィニアとジェイクは悪びれた様子のないの態度に呆れている。

「話を続けるのもいいですけど、そろそろ朝食の時間ですよ」

「「あ、ホントだ」」

「そういえば、お腹空いたかも」(ウィ)

「そろそろ行くか。でも、は本当に気をつけろよ」(ジェ)

「そうですね...それでは楽しみにしながら、気をつけますね」

「「「「楽しみにしながらって...」」」」

謀らずしも声の揃ってしまった4人は、呆れながらもだからしょうがないとでも言うかのように顔を見合わせて肩をすくめた。

5人が寮を出て広間へと向けっている途中、は足を止め、両隣を歩いていた4人を手で制した。

その様子が何を示すのかを今までのことで理解していた4人は、眉をひそめたり、不愉快そうな顔をしたりして廊下の先に目を向けた。

が数本のナイフをローブの下から取り出すと、天井や壁、または廊下へと無造作に投げつる。

カツンと硬い音を立ててナイフが刺ささったのを確認すると、傍にいたマリアたちに笑いかけながら言う。

「お待たせしました。行きましょう」

「お待たせって言われるほど待たされてないけどね」(ヨ)

「どんなトラップだったのかしら?」(マ)

「う〜ん...さんざんにダメ出しされてるせいか、最近の悪戯って見つけづらくなったのよね」(ウィ)

「多分、魔法で目眩(めくら)ましもされてんじゃねーか?」(ジェ)

「トラップもそうですけど、本人達も一応目眩ましを使ってますね。20m位かな?」



    パアァァアン!!



「「「「うわあぁっ!!?」」」」

ほとんど呼び動作なしで投げられたナイフが、悪戯仕掛け人たちの待っていたクソ爆弾を破裂させた。

至近距離で破裂したクソ爆弾のために、仕掛け人たちは頭から爪先(つまさき)まで見事に汚れている。

もっとも、今は汚れよりも破裂音による被害の方が大きく、4人とも耳を押さえて(もだ)えている。

「君たちも懲りないね」(ヨ)

「いくらハロウィンだからって、朝から悪戯?もうちょっと別のことに努力すればいいのに」(マ)

「そうだよね〜...って、汚れたところは通りたくないなぁ」(ウィ)

「って、なんで俺を見る?」(ジェ)

「だって僕たちの中だとジェイクが一番得意でしょ?制御の細かい魔法は。を除いてだけど」(ヨ)

「この4人がこれだけで諦めるとは思えないし、朝からを疲れさせる訳にいかないでしょ」(マ)

「別にこれ位で疲れたりしませんよ」

「いいのよ。休める時にちゃんと休んでもらわないと!と言う訳で、よろしく」(ウィ)

「ヘいへい...スコージファイ 清めよ!」(ジェ)

きっちり廊下の汚れのみ(つまり4人についた汚れ以外)をキレイに取り除くあたり、制御の細かい魔法が得意というだけのことはある。

「まあ、こんなもんだろ」(ジェ)

「相変わらず、こういうの得意だね」(ヨ)

「お前らと違って魔力がそんなに多くないからな。こういうことで工夫するしかないし」(ジェ)

「そうはいうけど、あたし達は魔力は多いけどコントロールがちょっとねぇ」(マ)

「ねえ!立ち話してないで、朝食食べに行こうよ!時間なくなっちゃうよ」(ウィ)

「でも、4人をこのままにしてると通行の邪魔になりませんか?」

「「「「大丈夫なんじゃない(か)(かな)?」」」」

耳を押さえて悶えているが鼓膜は破れてないと見てとったは、4人の心配ではなく後でここを通ることになる人達の心配をする。

マリアたちもを薄情と責めることもなく、あっさりと4人を見捨てた。

「これ位ならもう少しすれば自分で清め呪文も治癒呪文も使えるだろ」(ジェ)

「一人回復したら、あとは全員治るのもすぐでしょ?」(ウィ)

「それにいくらハロウィンだからって、朝か悪戯を仕掛けてきたわけだし」(ヨ)

「いつも通りの自業自得だし、このままでいいんじゃない?」(マ)

そう続けざまに言うマリアたちの言葉を聞いてちょっと考え込んだ後、太陽の位置を見て今の時間を確認する。

「まあ、ほとんどの生徒が朝食に向かうまでにはまだ時間がありますし...それまでには回復してますよね?」

「そうそう!だからあたしたちはご飯食べに行こ〜よ〜!」(ウィ)

そわそわとしながら言うウィニアに苦笑しながら、うめいている悪戯仕掛け人を置き去りにして達は大広間へと向かった。











あとがき

SAIさま、88888hitありがとうございました!
『ハリポタ(親世代)』で主人公がジェームズたちとの戦い(その1早朝の攻防編)でした。
悪戯と言えばやっぱりハロウィンかなと思い、季節外れですがこんな話にしました。
気に入っていただけましたか?
「これで終わりですか?」と言う夢主はおそらく夜の攻防編になるかと思います。
追記
誰がどのセリフを言ったか分からない場合は、セリフの後ろを反転してください。

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