「ねぇ、。どうしてもダメかしら?」
「ダメです」
「なかなかいい話だと思うんじゃがな」
「お断りします」
「...なかなか」
「何が『なかなか』なんですか?シルバさん?」
にっこりと笑って話すは、この話が出てからは1mmも動かさずに笑みをキープし続けている。
柔らかな日差しが降り注ぐゾルディック家のテラスで、1流の執事たちが入れたお茶を飲みながらかれこれ1時間ほどこの話題が続いている。
席についているのは現当主夫妻と先代当主、そして...
ガチャ
「ただいま...何してんの、?」
「おや、おかえりなさい。イル君、キル君、カル君」
「ただいま......って、その格好何!?」
「ただいま、。そのドレスとっても似合うよ!」
「...ありがとう、カル君」
お礼を言うまでに少し間が空いたのはしょうがない。
自分が好んでこの『真っ赤なウェディングドレス』を着たわけではないのだからと、言い訳のように考えた。
仕事を終えて帰ってきた3人のうち2人はそれを理解したらしい。
さすがに1番年下のカルトにはそこまでは分らないのだろう...多分。
着物を着たこの子がわざと気づいていない振りをしているとはあまり思いたくないので、そう判断しておく。
たとえ8歳の時、長男も次男も三男も四男も着せ替え人形にさせられるの様態を理解していたのだとしても。
「あら!3人ともいい時に来たわね!」
「お前たちのほうが説得に有利かもしれんな」
「ふむ。確かに」
「「「何の説得?」」」
子供たちがそろって首を傾げるのを横目に、はそんなことを言い出した大人たちを嫌そうに見やる。
「あら、そんなの決まってるじゃない!」
「この服を着せられてるんだ、想像くらいはつくだろう?」
「この服って...」
「ウェディングドレスだよな?真赤だけど」
「、お嫁に行っちゃうの?」
「あはは、まさか!行きませんし、来ませんよ」
「......来ないってことは、そういう話だったんだ」
「まあ、そういうことじゃな。というわけで、頑張って落とせ」
「ゼノさん、それが可愛い孫たちに言う言葉ですか!?」
「可愛い孫だから言うにきまっとるじゃろ」
あっさりと言い切って湯のみに手を伸ばすゼノに、は頭が痛くなった。
「孫が可愛いなら、その孫の意見も聞かないでそんなこと言い出したりしないでしょう?」
「俺は別にいいけど」
「...え?」
「僕もだったらいいよ」
「...は?」
「俺はパス!そうゆーのは兄貴に任せる」
「いや、パスするのは大歓迎なんですけど、任せるって...」
「年を考えたらやっぱりイルミがいいかしら?」
「婚約という形をとればカルトでもいいんじゃないか?」
「ミルキは生モノにはあまり興味がないからのう」
「生モノって...いや、確かにあの子はゲームが好きですけど」
「、ブタ君はただのオタクだろ」
「え、いや、でも、あの子がゲームをするようになったのは私があげたのが始まりですし」
「俺もゲームもらったけど、あそこまではまんなかったじゃん」
キルアの言葉は的を付いている。
確かには全員におみやげとしてゲームをプレゼントしたことはあるが、あそこまではまったのはミルキだけだ。
「ミルキ兄さんのことなんか、今はどうでもいいよ。それよりが僕とイルミ兄さんのどっちと結婚するかでしょ?」
「私はどちらとも...」
「カルト、結婚する順番は年齢からいったら俺だろ」
「あの...」
「イルミ兄さん、ずるいよ!僕だってと結婚したい!」
「えーと...」
「ここは年上に譲るべきだろ?カルトはまだ8歳だし」
「そんなの関係ないよ!僕だってすぐに大きくなるんだから!」
「でもだって年が近いほうがいいよね?」
「は僕みたいに若くてこれからが楽しみなこの方がいいよね!?」
「カルト、これからが楽しみって自分で言うのは図々しくない?」
「ホントのことだもん。僕イルミ兄さんみたいに成長止まってないし」
「でも、俺くらい成長するとも限らないよね」
片方は無表情で、片方は表情豊かに繰り広げられる口喧嘩に、もはやが口を挟む隙がない。
やや疲労の見える顔で、は傍観を決め込んでいる大人3人と子供1人へと視線を移す。
「...あの子たちの口喧嘩止めてくれませんか?」
「どっちと婚約するか決めたのか?」
「誰とも婚約しませんって言ってるでしょう」
「「えー」」
不満そうな声が片方棒読みだったのは目をつぶっておこう。
「自分で言うのもなんだけど、俺結婚相手としてはかなりいい条件そろってると思うけどな」
「そんなの兄さんだけじゃなくて僕もだよ!ねえ、僕じゃダメなの?」
2人して首を傾げる姿は非常に可愛らしい。
三男には長男のその姿は不気味に映ったようだが。
「何度言われても、ダメなものはダメです。最初からそう言ってるでしょう」
後半の言葉は最初からその場にいた大人たちへ向けたものだ。
「そう言われてものう」
「だって、が私の娘になるってとっても素敵なことじゃない?」
「家に嫁に来るなら、やはりくらいの実力があるのはかなり望ましいしな」
「それ以前の問題だと気付いてください!お忘れのようなら、私の年齢とか性別とかその他いろいろもう一度お話しましょうか?」
「「「それくらいのこと、が(お)嫁に来るなら問題ない(ぞ)(わ!)」」」
「そのくらいのことで片付けないでください!」
「って女じゃないけど男ってわけでもないんだろ?それなら、俺気にしないけど」
「「そうなの(か)?」」
「そうらしいよ。まあ、年齢が気になるのはしょうがないけど、それが気にならないくらいアプローチしてけばいいだけだし」
「イルミ兄さんずるいよ!、僕もいっぱいが大好きだっていうからね!」
「いや、だからね...」
じっと見つめながら近づいてくる2人から離れるように後ろへ下がると、ポンと肩を叩かれた。
「...キル君?」
「2人ともしつこいだろうから諦めたほうがいいんじゃねえ?おれもが兄弟になるなら嬉しいし」
「なっ!?」
「キルア、よく分かってるね」
「家族みんな賛成みたいだし、後はが頷いてくれるだけだよ」
じりじりと近づいてくる2人に、もじりじりと下がる。
しばらくそんなやり取りが続いていたが、焦れたように2人が左右の腕をガシッとつかんだ。
「2人とも!?」
「ねえ、もちろん俺だよね?」
「、僕だよね!?」
「あの、だからね」
「2人とも、そのままを飛行船まで連れてってちょうだい」
「お母様、どうして!?」
「帰すの?」
「イルミ様、カルト様、式場の準備が整いました。お相手はそこに着くまでに飛行船内でお決めになってはいかがでしょうか?」
「......あの...式場って...まさか...」
冷や汗を流しながら否定の答えを期待して発せられた問いは、無情にも予想通りの答えを返された。
「もちろん。結婚式場でございます」
「っっっっっっっっっっっっっ!?!!!!!!!?!!!??!!!!!?!!?」
言葉にならない叫び声がの口から発せられた。
そして、結婚式はというと...仕事を放り出して駆けつけた母によってぎりぎりで阻止され、は安堵の息をつき、イルミとカルトはそれぞれ舌打ちをすることになった。
たびたびゾルディック家とアサヒの間で、『を嫁にくれ』『誰がやるか!』というやり取りが行われるようになったのは、イレブンの身内でかなり有名な話となった。
あとがき
サクヤ様、54300HITありがとうございました!
大変お待たせしてしまって申し訳ありません(汗)
一応これが管理人が考える『ゾルディック家の家族と主人公がのほほ〜んと会話している所』だったのですが...
『のほほ〜ん』と言えるかどうかちょっと(かなり?)微妙かもしれませんが、このあたりで勘弁してください。
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