はマリアとヨハンと共に、薬草学の授業を受けるために温室へと移動していた。

今日の授業の内容や新しく入った本の話、今度開かれる『の日本語講座(別名との集い)』の話をしながら、温室へと歩いていた。

しかし暴れ柳を過ぎたあたりで、生徒達が温室の前に集まっているのが目に入った。

達は生徒達が温室の中に入っていないことを不思議に思いながら、近づいていった。

「どうしたの?もうすぐ授業が始まるんじゃないの?」

「マリア...今回も無理そうなのよ」

「はあ!?またぁ!!」

「今度はいったい何なんだい?」

「温室にあった植物がごっそり取られたらしくてさ、しかもそれが湖のそばに放り出されてたんだと」

「えっ!まさか寒さに弱い物なんかもですか?」

「いろいろごちゃ混ぜにして捨てられていたらしい」

が驚いたように尋ねた質問に、達に気付いたセブルスがそれに答えた。

「あ、セブルス。おはようございます」

「...ああ」

「あんた相変わらず愛想無いわね」

「まあ、セブルスだからしょうがないんじゃない?」

「ふん、何とでも言え」

呆れたように言うマリアとフォローにならないフォローをするヨハンに、セブルスは相変わらずの不機嫌顔で答えた。

「でも、今回で授業つぶれたの何回目だっけ?」

「レイブンクローの授業では呪文学が1回、魔法薬学が2回、薬草学が今回で4回で、魔法生物飼育学が2回で、変身術と数占い学が1回ですね」

「...スリザリンも似たようなものだ」

「ここまで授業がつぶれるのは、いただけないね」

「いったい誰がこんなことやってるのかしら?」

「どうせあいつらの仕業だろう」

「...あー、やっぱりそうなるか」

「まぁ、決め付ける前に聞いてみないとダメですけどね」

「聞くって本人達に?」

不思議そうな顔で聞いてくるウィニアには笑顔で違いますよと言った。

「ホグワーツで誰にも見られずに行動するって、なかなか難しいことなんですよ」







温室の植物達がいたずらされた翌日、セブルスは魔法薬学の授業を終えて1人で中庭を歩いていた。

するとセブルスとは反対側から、グリフィンドールの4人組が歩いてきた。

お互いに気づいたセブルスとその4人組は思いっきり顔をゆがめる。

「なんでお前がここ歩いてるんだよッ!」

「それはこっちのセリフだ。貴様らなどに会いたくなど無かったわッ」

「おや?それは随分とつれないじゃないか、スニベリー」

「ふん、貴様らの名前を聞いただけでも反吐が出る。いっそのこと寮に篭っていたらどうだ?そうすれば、お前らのくだらない悪戯の後始末をさせられている、先生方の苦労も減るだろうからな」

「...言うじゃねぇか、スニベルスの分際で...」

「ブラック家の面汚しに言われるとは、光栄とでも言っておこうか?」

「っテメエ!!言わせておけば『バサッ』...なっ!

殴りかかろうとしたシリウスと他の3人を包み込むほど巨大な網が出現し、4人の上に覆いかぶさる。

「うわっ!」

「コレは一体...」

「?、眠気が...」

網に捕まった4人が強烈な眠気に襲われて、地面に倒れこむ。

「.........」

「すいません、セブルス。大丈夫でしたか?」

「ああ」

「本当にすいません。オトリなんか頼んでしまって...」

「気にするな。こいつらに会わなければならないのは不愉快だったが、お前の頼みを引き受けたのは私の意思だ」

「...ありがとうございます」

セブルスの言葉に、沈んでいたの顔にふわりとした笑みが広がる。

「それで?こいつらをどうするんだ」

「ああ、そうでした...見ていかれますか?」

「...そうさせてもらおう」

「はい」

はにっこりと頷くと、ポケットからあるものを取り出して4人に近づいていった。







が4人を罠にはめてから数時間経ったころ、はマリアたちと共にいつものように昼食をとっていた。

が和やかに談笑していると、大広間の扉が大きな音を響かせながら勢いよく開かれた。

「「「「「「「「「「...あははははははははははは...!!!」」」」」」」」」」

昼食をとっていた生徒達が扉の方を向き、入ってきた人達を確認した途端、大広間は笑い声に包まれた。

4人の目の周りにはメガネをかけているような丸が書かれ(ジェームズは2つメガネをかけているように見える)、まぶたには昔の少女漫画のようなキラキラした目が描かれ(4人がまばたきをするたびに笑い声が大きくなる)、それぞれ異なるヒゲ(ジェームズはカイゼルひげ、シリウスはハグリッドのようなモジャモジャしたひげ、リーマスは中華風のナマズひげ、ピーターがチョビひげ)も描かれている。

そして4人のおでこや頬には目立つ字で『反省中』と書かれていた。

広間にいる人全員(意外)に爆笑され、少し顔を赤くしながら4人はドシドシとのところへ歩いてくる。

は近づいてくる4人に、にっこりと笑いかける。

「すぐにいらっしゃると思ったんですけど、遅かったですね」

「テメエッ!!何が遅かっただっ!」

「?、ちゃんと手紙を残しておいたでしょう?読んだらすぐ来ると思ったんですけど、自分達で落とそうとしたんですか?」

「当たり前だろうがっ!!」

「でも、『顔を洗っても、魔法を使っても落ちません』って書いてたでしょう?」

「だからってムガッ「シリウス、ちょっと黙っててね」...!!」

怒鳴っているシリウスの口をジェームズが後ろからふさぎ、リーマスがシリウスの前に出る。

「えーと、僕たち、君としゃべったこと無いよね?」

「ありませんでしたよ」

「...じゃあ、僕たち君に何かしちゃったってこと無いよね?」

「直接的には」

「てめえ!だったらガッ!!

ジェームズの手を振り解いたシリウスが怒鳴ろうとするのを、今度はジェームズとリーマスの2人がかりで取り押さえる。

「はいはい、シリウスはちょっと黙っててねー。で?直接的にはってことは、間接的に悪戯の被害にあったってことで良いのかな?」

「8割は正解です」

「え?あ、あの、えーと、残り2割は?」

「...昨日、温室の植物が大寮に盗まれて捨てられていたのは知ってますか?」

「う、ううん」

ピーターの答えに、それまで笑っていたマリアとヨハンが訝しげな顔をする。

「知らないって、あなた達がやったんじゃないの?」

「僕もそう思ってたんだけど...」

「いや、僕たちは昨日は悪戯の計画を話し合ってはいたけど、悪戯はしてないよ」

「はぁ?本当かよ?」

リーマスの言葉を聞いたレイブンクロー生たちが、疑わしそうに4人を見る。

ピーターはその視線にオドオドし、ジェームズとリーマスは顔を見合わせ、シリウスは不機嫌な顔になる。

「Mr.ルーピンの言ったことは本当ですよ。温室の件は別の方です」

「つうか、それが俺らに何の関係があるんだよッ!」

「まぁ要するに、あなた方のマネをして授業を中止させてる方がいらっしゃったんですよ」

「マネって...僕たちには関係ないんじゃ...?」

「Mr.ペティグリュー、あなた方が濡れ衣を着せられていたのにですか?」

「...あっ!そっか...でも、濡れ衣って言っても僕らが否定すれば...」

「先ほどの皆さんの視線を思い出してください。同じことが言えますか?」

「あ...ううん」

の言葉で先ほどのことを思い出したピーターは首を横に振った。

「まあ、ピーターは無理だろうね」

「Mr.ポッター、あなたが同じこと言って何人の方が信じてくれるのですか?」

「昨日僕たちと一緒にいたグリフィンドール生なら、確実に信じてくれるよ」

「薬草が盗まれたのがおとといの夜だとしてもですか?」

「......それは、さすがに無理だね」

「あれ?じゃあ君は何で僕たちじゃないって断言できたの?」

「ああ、簡単なことですよ。ホグワーツで暮らしているのは人だけではありませんから。幽霊や絵画の紳士淑女の皆様や屋敷下僕妖精の皆さんにお聞きしたら、すぐに分かりましたから」

「授業が中止になるのがイヤなら、直接そいつに言えば良いだろうが!」

ジェームズとリーマスがの話に集中して手が緩んだ隙に、シリウスがに怒鳴りつける。

「Mr.ブラック、先ほども言ったでしょう?マネをされた悪戯は2割だと...8割はあなた方の悪戯での中止です」

「うっ!」

「それに授業が中止になれば、当然授業内容も遅れますから、先生方の間では放課後や休日に補習授業の実施をするべきか話し合っているんですよ」

「ええっ!!」

「先生方も悪戯の全てがあなた方のものだと思っていたせいで、必要以上にグリフィンドールの点数が引かれていたことを知ってましたか?」

「ゲッ!!マジかよ...」

「まあ、そのことは先生方にきちんとお話して、その2割の悪戯をした方にも『もうやらない』と誓約書を先生方の前で書かせましたけど」

「へぇー...」

「あなた方が寮の点数が減っても全然気にしないから、マクゴナガル先生と相談の上、あなた方本人に反省してもらおうと...」

「...ちょっと待って」

「何ですか?Mr.ルーピン」

話を遮ったリーマスにが首を傾げる。

「えーと、ファーストネームで呼んでもらえるかな?」

「分かりました、では私もと呼んで下さい。質問はそれだけですか?」

「...マクゴナガル先生が君にコレを頼んだの?」

自分たちの顔に描かれた悪戯書きを指しながらいうリーマスに、は方法は私に任されましたと答える。

「じゃあ、何では任されたの?」

「私が証人(?)達のリストを製作して、先生達に渡したからですよ。マクゴナガル先生にどうしたら良いか聞かれたから、『本人達に悪戯にかかってもらったらどうですか』と言ったんです」

「それをマクゴナガル先生が許可したのかい?」

「いいえ、許可したのはダンブルドア校長先生ですよ」

「「「「...はあ?」」」」

「たまたま話をしたときにいらした校長先生が、笑いながら許可を下さいました」

の言葉に4人だけでなく周りにいた生徒達も、その様子を容易に想像できて微妙な顔になった。

「まあ、そういう訳で被害があなた達だけで、授業も中止にならない悪戯を選んだ結果、それになったんです」

、でもコレを見た先生たちのほうが授業に身が入らないんじゃない?」

「ちゃんと授業を受けてるときは消えるようになってますよ。ただ悪戯の計画を話し合ったりすると、その内容が顔に書かれますけど」

「へぇ、それも日本の魔法?」

「ええ」

「ってか、そこ和むなッ!!」

話題が日本の魔法に移ってしまったレイブンクロー組に、シリウスが声を荒げた。

「?、どうかしましたかMr.ブラック?」

「...何でファミリネームで呼ぶ」

「ファーストネームで呼んでも良いと言われてませんし」

「そう言えば日本ではファミリーネームで呼ぶのが普通だったわよね?」

「ええ」

「...ファーストネームで良いっつうの...って、話がずれた!」

「おや、違ったんですか?」

「あはは、まあシリウスだからね。あ、僕もジェームズで良いよ」

「ぼ、僕も」

「そうですか。では、私もと呼んでください」

「お前ら、わざと話をずらしてるだろ?」

「やだなぁ、親友を疑うのかい?」

「...その顔で言っても説得力ねーよ」

「それは僕たち4人全員に言えるんじゃ...」

「ピーター、ダメだよ。ここでそれを言っちゃあ」

「あ、ごめん」

は4人の様子を笑顔で見つめ、の周りにいた生徒達は4人の会話で悪戯書きされた顔を間近に見てしまい、必死で笑を押さえている。

「...ってまた話がずれた!おい!俺らに直接話せば、こんなことする必要なかったんじゃねぇのか?」

「直接話したら、私の言う内容に耳を貸してましたか?」

「...............」

「あはは、無理だねぇ」

「まあ、そうだよね」

「えーと...」

の言葉に目をそらしたり、黙り込んだりする4人には先ほどよりにっこりと笑う。

「それに、私はあなた達のした悪戯に怒って無いなんて、ひと言も言ってませんよ?」

「「「「.........」」」」

「まあ、いくつかの条件に従っていただければ、ここまでのことはしませんよ」

「...条件...って?」

「1.授業が中止するような内容の悪戯はしない。2.図書館での悪戯はしない。3.私以外のホグワーツ生が怪我をしそうな危ないことはしない。この3つですね」

「「「「「「「「「「......え?」」」」」」」」」」

の言葉を聞いた4人とレイブンクロー生たちが疑問の声をあげる。

「どうしました?」

「悪戯をやめされるんじゃなかったの?」

「全部やめさせたら、かえってストレスが溜まってあとで一気に爆発してしまうでしょう?あなた方の悪戯が、ホグワーツの生徒達に娯楽として認識されてることもありますし」

「えーと、じゃあ3つ目のは?」

「?、何か問題ありますか?」

「あたしが危ない目にあうなんてイヤよ」

「僕だってイヤだからね」

「マリアもヨハンも心配性ですねぇ」

「「そんなこと無い(わ)よ!」」

「俺もそう思うぜ。こいつらの悪戯で保健室に行くことになったヤツ結構いるしな」

「あたしもジェイクに賛成ぇ」

「お2人もですか?」

はジェイクとウィニアを見て、やれやれと首を振り困ったような顔になる。

「...何でそんな条件にしたか聞いても良いかな?」

「最近、鍛錬不足なんですよ」

「......は?」

「許可をもらって、森の中の生き物や植物を見に行ったり」

「...え?」

「目をつむったまま暴れ柳の枝をよけたり」

「...おい」

「ホグワーツの隠し通路を50個ばかり見つけたり」

「50!!」

「朝早く起きて1人で体を動かしたりしてるんですけど」

「...だから、朝いなかったのか」

「もともとやってたのに比べたら全然足りなくて...」

はぁと深くため息をつくに、周りの生徒達が沈黙する。

「だから悪戯を仕掛けられたら、ちょっとは鍛錬になるかなぁと思ったんですけど」

「...ちょっとかよ」

「?、聞いた限りでは『ちょっと』だと思いますけど?」

「......ふっふふふふふふふふ...」

「...ジェームズ?」

、その挑戦確かに受け取ったよ!!」

「はい?」

「おい、ジェームズ!」

「パットフット、これは僕たちに対するからの挑戦だよ!ぜひともに悪戯でアッと言わせてやろうじゃないか!!」

「...なるほど」

「え?納得するの?」

「ピーター、乗り気になった2人を止めるのは無理だよ」

「さあ!そうと決まったら早速作戦会議だ!!」

「おうッ!」

「ね?」

「...うん」

「2人とも早く行かなくちゃ!ここにいたら考えた悪戯がばれるんだから!」

「あ、まってよ!」

「...やれやれ、それじゃあまたね

「ええ」

走って行くジェームズとシリウスを、慌ててピーターが追いかけ、リーマスはにひと言いってから3人を追いかけて行った。

「...なし崩し的に3つ目が実行されてない?」

「「「あっ!!」」」

「おや?そう言えば、条件をのむのか確認するのを忘れましたね」

「「「「...」」」」

「ん?どうしたんですか?そんな疲れた顔をして」

「「「「「「「「「...はぁ」」」」」」」」」

「?」

不思議そうな顔をするに、レイブンクローの生徒達はそろってため息をついた。







なお夏休み直前まで行われた『 vs 悪戯仕掛け人』の戦いは、247戦247勝0敗での勝ちだった。










あとがき

祈月さま、25300hitありがとうございました!
拍手で書いている『迷子の旅 in ハリーポッター』で悪戯仕掛人との話でした。
気に入っていただけましたか?

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