「今日もいい天気ですねぇ」
のほほんとした声で、晴れ渡った空を見上げながら言う。
現在は、いつものように迷子中である。
そんなわけで、ちょっとした資金稼ぎに、今回は喫茶店を経営している。
この世界では特別な知り合いもいないし、ごく普通の世界のようなので、滞在予定は半年だ。
もっとも、今まで予定通りに帰れたことはごくわずかだが。
実際に、朝早くから店の前で箒を手にしているを、こっそりと観察している大小合わせて4つの影が...
もちろん、は見られていることに気づいているが、害はなさそうなので気にしない。
「ちょっとリボーン!何でこんな朝早くから、覗き見なんてしなきゃならないのさ!」
「決まってるだろ。ファミリー候補を見定めるためだぞ」
「んなっ!?ファミリーってあの人も巻き込む気!?」
「へぇ〜、あの人も一緒にマフィアごっこするのか」
「リボーンさん、あんなひょろいのを入れるんですかっ?」
黒いスーツを身にまとい、ボルサリーノを被った赤ん坊の言葉に、3人の少年たちがそれぞれ言葉を漏らす。
「相手に聞こえるぞ」
「うっ」
「わりー、わりー」
「すいません!」
慌てて口を押さえた少年を沢田綱吉、笑顔で謝っている少年を山本武、赤ん坊に勢いよく頭を下げている少年を獄寺隼人という。
「って、そうじゃなくて!何で普通の人を、しかも俺達より年上の人を巻き込もうとするんだよ!」
「あいつがさっき出てきたとこが何やってか知ってるか?」
「へ?何って」
「喫茶店じゃねーのか?」
「はっ!もしかして、表向きは喫茶店で、裏ではマフィアと関係してるんですか!?」
「裏はねぇ。ただの喫茶店だぞ」
「じゃあなんであの人を巻き込もうとしてんだよ!?」
綱吉の言葉に、リボーンはにやりと口元を歪めた。
「あいつの入れたエスプレッソはうまいんだぞ」
「まさかそれだけの理由!!?」
「イタリア菓子も」
「だからそれだけの理由で...」
「どうかしましたか?」
「え?」
「ありゃ」
「なっ!?」
綱吉の後ろから顔を出したに、少年たちが驚く。
リボーンは声をかけるまでほとんど気配のなかったを見て、面白そうな顔をした。
「何だ、気づいてたのか?」
「そりゃあ、あれだけじろじろと見られてたうえに、大声で話されてたら誰でも気づきますよ」
「あ!ええと!うるさくしてすいません!」
「いえいえ。ところで、開店にはまだ早いですけど、お店に来られたんですか?」
「えーと...」
「てめえ、10代目になれなれしいぞ!」
「10代目?」
「ちょっ、獄寺くん!!」
慌てて止める綱吉の横で、山本がにこにことに話しかけてきた。
「俺たちマフィアごっこしてるんだ。よかったら一緒にやりません?」
「マフィアごっこですか?」
首を傾げるの横で、まさか山本が誘いの言葉を口にするとは思わなかった綱吉が、ギョッとした顔をした。
「うーん...仕事中は付き合えませんが、休みの時や仕事をしていないときは構いませんよ」
「そんでもいいかなツナ?」
「え、うん...じゃなくてっ!」
「それじゃあ、これからよろしく!」
「はい。あ、開店前ですけど、コーヒー飲んでいきますか?」
「え、いいんすか?あ、でも俺あんまし金持ってねーっす」
「ここは中学生は半額ですよ。もっとも、初めて来たお客様はサービスで無料ですから、お金の心配はいりません」
「え、マジすか?ラッキー!あ、俺、山本武って言います」
「です。あと、無理に敬語を使わなくてもいいですよ」
(この人、山本と同じ天然だーっ!!)
にこにこと互いに話を進める2人に、綱吉はそう確信した。
あとがき
ちょっとネタに詰まって他のジャンルを書いてみたり...
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