いつものごとく迷子中のは、偶然見つけた求人広告の為フラン○フルトのデーデマン家につとめている。

「ヘイヂさん、朝食のお時間です」

屋敷の廊下を歩いている途中で足を止めたが、軽く壁をノックして言うと、べりっと音を立てて壁紙がはがれた。

壁にぽっかりと空いた穴から顔を出したのは、一応外見は少女の謎の生物ヘイヂだ。

か』

「おはようございます、ヘイヂさん。ツネッテさんが探していましたよ」

『おう!今行くぜ』

はそんなやり取りをした後、屋敷で唯一のメイドであるツネッテにヘイヂを見つけたことを伝えるために階段を下りて行った。

そんなやり取りを見ていたのは、たまたま通りかかった使用人A...これは少年Aというような使い方ではなく、名前がAという使用人だ。

そのことをがいない休憩中にAが話すのを聞いているのは、使用人のB(これも名前)とツネッテ、シェフのデイビットの3人。

「ヘイヂって、さんの言うことだけはちゃんと聞くのよね。なんでかしら?」

「さあな。あの人がいるところでだけは、ヘイヂが大人しいのは確かだが」

「気に入られたんじゃないか」

「でも、ヘイヂって気に入ったからって大人しくするようには思えないんですけど」

「確かにそうよね」

『そんなに気になるなら教えてやろう!』

「「ヘイヂ!?」」

「いつの間に...」

「また壺の中に入ってたのか」

そんな4人の声を無視して、ヘイヂは語り出す。

『初めてあいつに会ったとき、俺は皮たちと巣穴を掘っていた。その時少し目測を誤り、俺は廊下に転げ落ちてしまった。

 そして、に屋敷を案内していたセバスチャンに見つかってしまったんだ!

 セバスチャンはいつものように俺を斬った。その時俺は肉片になったが、いつものようにすぐ元に戻った。

 そしてふと目が合ったはこう呟いたんだ。

 「私と似た性質の方を見るのは久しぶりですね

 ...とな』

「「「......           っ!!!?」」」

「へぇ、そんなことがあったのか」

言葉もなく驚愕とショックで青ざめる3人と、いつもと変わらぬ様子で相槌を打つデイビット。

「いや〜っ!!!うそよーっ!セバスチャン以外でヘイヂのことで頼れる唯一の人なのにーっ!!!」

「いや確かに、倒れてきた柱を片手で止めたりしてたけど!?一瞬でお屋敷を直したりしてたけど!?あの『いい人』を絵に描いたような人が!!!」

「ヨハンさん同様の良心が...デイビットさん同様の癒しが...!!」

『何だよその反応は...』

「でもヘイヂのどの辺りのことを言ったんだろうな?」

「「何がだ(ですか)?」」

聞こえてきた2人の声に、騒いでいた面々はぴたりと動きを止める。

騒いでいた3人はギギギ...と音が出ているのではないかと思うほど、恐る恐る入口に目を振り返った。

「セ、セバスチャン...」

「...と、...さん」

「どうかしましたか?」

「今ヘイヂがと初めて会った時の話をしててな。が『ヘイヂと似ってる』って言っていたって聞いたんだけど、どの辺りが似てるんだろうなって話してたんだ」

(((デイビットさん!!!?)))

あっさりと暴露したデイビットに、聞いていた3人は青ざめる。

だが、はそれを気にする様子もなく「ああ、あの時の」と頷いている。

「へぇ、ホントにが言ったのか」

『お前信じてなかったのか?』

「いや〜、悪い悪い。てっきり冗談だと思ってな。で、どの辺りが似てるんだ?」

さわやかな笑顔で悪びれもなく言うデイビットに、は苦笑しながら言った。

「いろいろありますけど...そうですね。さすがにバラバラにされたら無理ですけど、普通の人が重症の傷でも割と早く治りますよ。運動(?)だったら、壁走りや天井に張り付いたりも出来ますね...あとヘイヂさんの分裂とはちょっと違いますけど、忍者がやる分身の術もできますよ」

「最後のは便利だな。今度ヘイヂを捕まえるときにそれを使って手伝ってもらおう」

「ああ、皮が散乱するもんなー」

普通どおりに会話する3人に、Aは拍子抜けしたような顔をする。

「えーと、壁に穴掘ったりとかは?」

「やろうと思えばできるでしょうけど、お屋敷を壊すのは気が引けます」

「旦那さまと一緒に悪戯してみたいとか?」

「お仕事が優先ですから。お仕事が終わっているんだったら、周りに被害がない程度ならお付き合いするかもしれませんが」

「セバスチャンと戦ってみたいとか?」

「ヘイヂさんのようにですか?特に戦う必要性を感じませんが...早朝に個人的に運動していますし」

「「「......よかった〜!!」」」

の言葉に使用人’s3人そろって安堵した。

「うぅ...よかった!やっぱりさんはさんだった!」

「そうよね〜v」

「一安心だな」

使用人’sは気付いていないが、残りの3人(セバスチャン、デイビット、ヘイヂ)は気付いていた。

はヘイヂと似ていることを否定したのではなく、肯定しているということに。

それでもセバスチャンもデイビットも危機感を感じていないのは、の性格故なのか...

『ふっ、俺は諦めないぜ。いつか共に大巣穴帝国を...ひゅ〜〜〜〜〜〜...ぐしゃ

「ん?今何か聞こえませんでしたか?」

「気のせいだろう」

「ハニー、この落とし穴はどうすればいい?」

「そこの壁にスイッチがある」

デーデマン家の割と日常的なヒトコマです。











あとがき

リハビリ作品です。

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